消費税10%で危うし病院経営!? 賞与カットやモチベ下がる経費削減ある?|看護roo!ニュース

 

2019年10月から消費税が10%に引き上げられる予定です。

 

「コンビニのお弁当、イートインで食べると高くなるらしいよ」

「大きい買い物は増税前にしとかないと」

同僚や患者さんとこんな会話をした看護師さんもいるかもしれませんね。

 

でも、消費税の引き上げが病院経営に大打撃を与えるかもしれないということはご存知でしょうか。

 

最悪の場合、ボーナスがカットされたり、ストレスフルな経費削減令が出されたりなんてことも…?

 

今回は、ぜひ知っておいてほしい医療と消費税の話題です。

 

 

医療と消費税、どんな仕組み?

消費税は、サービスを受ける消費者が負担する税金です。医療サービスで言えば、最終的な消費者は患者さんということになりますね。

 

しかし、医療サービスに消費税を課すのはなじまないとして「保険診療は非課税」と決まっています。つまり、医療機関の収入である診療報酬には消費税がかかっておらず、当然、患者さんが窓口で支払う医療費にも消費税は含まれていません。

 

ところが、医療サービスに必要な物品や医療機器を医療機関が購入するのには、消費税がかかります。

 

 

飲食店でいえば、「食材の仕入れに消費税がかかるので、その分を価格に反映させて、お客さんに負担してもらう」といったやり方が、医療ではできないのです。

 

これでは、さすがに医療機関の体力がもちません。

 

そのため「消費税で増える負担分は、診療報酬を上乗せすることで補填(ほてん)する」という方法で対応することになりました(これによって、厳密には患者も消費税の一部を負担することになります)。

 

この補填は、2年ごとの診療報酬改定とは別に、消費税の導入時(1989年)や過去の税率引き上げ(1997年、2014年)のタイミングで行われています。

 

これで万事解決、医療機関は損しない…はずでした

 

 

上乗せ補填、全然足りてなかった!!!

ところが、その上乗せ補填では、全然足りていなかったことがわかったのです。

 

今回の10%への引き上げに当たって厚生労働省が行った現状調査の課程で、計算方法に誤りがあったことが判明。

 

「ほぼ100%」とされていた補填率(消費税による負担がどのくらい補填されたか)ですが、実際はかなり下回っていたことが明らかになりました。

 

出典:厚生労働省「控除対象外消費税の診療報酬による補てん状況把握<平成28年度>

 

病院全体で見ると、平均で1施設当たり年間300万円分の負担増になっています。

 

これは、看護助手1人分の人件費に相当するコストが消費税の引き上げで消えたということ。現場への影響が小さくないことがわかるでしょう。

 

大学病院などの特定機能病院の場合は、さらに深刻です。

 

診療報酬の点数が上乗せされるのは初診料・再診料、入院基本料が中心。手術などによる収入の割合が高い大学病院にとっては不利な設定です。結果、診療報酬の上乗せによる補填率はたったの61.7%に過ぎず、年間9200万円超もの負担増になってしまっています。

 

同じように高度な機能を持つこども病院も、消費税による負担増が病院経営を直撃しています。

 

 

7対1や10対1の病院も消費税で損している

病棟の種類によってもバラツキがあります。

 

出典:厚生労働省「控除対象外消費税の診療報酬による補てん状況把握<平成28年度>

 

療養病棟は補填率が100%を上回っており、ここは「消費税で増えたコストが診療報酬の上乗せでカバーされている」と言えそうです。

 

一方、一般病棟を見ると、7対1や10対1の看護配置基準の高い病院では、補填率80%を下回りました

 

7対1~10対1(現・急性期一般入院料)を届け出る病院は、日本の病院の多数を占めます。その補填率がこの状況ですから、2014年の消費税引き上げ(5%→8%)の影響がどれだけ大きかったかがうかがえます。

 

 

病院の経営が苦しくなった前回の消費税引き上げ

実際、「消費税の引き上げで、病院経営が苦しくなった」という指摘は以前からあり、病院団体なども独自調査で「この補填では足りない」と主張してきました。

 

「必要な設備投資ができない」

「古くなった器具も買い替えられない」

「消耗品をもっと節約して使うように、ルールが厳しくなった」

 

こんな声を聞いたことのある人も少なくないのではないでしょうか。みなさんの中にも、賞与が減額になった人がいるかもしれません。

 

 

消費税10%になったら、どうなるの…?

2019年10月に10%への引き上げが行われたら、いったいどうなるのでしょうか?

 

これまでは「診療報酬の上乗せで対応済みです」で通してきた厚労省ですが、不足があったことを認め、上乗せ方法を見直すことにしています。新しい方法では、病院の種別や届け出ている入院料の違いも考慮するなど、現行よりも細かく上乗せ点数が調整される見通しです。

 

この方法で行われたシミュレーションでは、補填の過不足が是正され、補填率100%に近くなると厚労省は見込んでいます。

 

ただし、これはあくまでも「平均の補填率」。

 

初診料・再診料、入院基本料による収入の占める割合や、設備投資・医療材料の購入状況などの違いで補填率は変わるため、医療機関によっては「消費税が10%になって苦しい…!」ということは起こり得ます。

 

そうなれば、さらなる経費削減や人件費の抑制など、看護師にとってストレスフルな労働環境になる恐れも…。

 

消費税の引き上げで、医療機関が不当な負担をかぶるのは本来おかしな話。現場の労働環境に直結する問題として、看護師も注意しておきたい話題です。

 

看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko

 

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(参考)

中央社会保険医療協議会 診療報酬調査専門組織 医療機関等における消費税負担に関する分科会 第16回資料「控除対象外消費税の診療報酬による補てん状況把握<平成28年度>」(厚生労働省)

同分科会 第19回資料「配点方法見直しのシミュレーションについて」(厚生労働省)

同分科会 第20回資料「財源配分等に係る論点について」(厚生労働省)

消費税にあえぐ大病院 診療費は非課税(日本経済新聞朝刊2015年11月29日付)

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