訪問看護ステーションだって新卒・若手を育てたい|新卒からの訪問看護(3)

 

在宅ケアに当たる若手の訪問看護師の写真

 

2025年に向かって今後、確実にニーズが伸びていく訪問看護

 

ですが、その担い手となる訪問看護師は、まだまだ足りていません。

 

「数年の病棟経験が必要だ」と言われてきた訪問看護の世界にも、若手ナースを育てようという気運が生まれています。

 

 

「自分には訪問看護が合ってるかも

佐藤さんの写真

新卒の訪問看護師の教育・育成を支援している聖路加国際大の佐藤直子助教

 

看護師にも一人ひとり個性がある。病院での看護が合わないという人だって当然いますよね」

 

新卒の訪問看護師の育成支援に携わる佐藤直子さん(聖路加国際大助教・在宅看護専門看護師)はこう話します。

 

「実際、急性期の大きな病院に就職したけれど、『自分には、訪問看護の方が合っているのかも』と半年、1年で訪問看護に転身する人もいます」

 

在宅看護論が看護基礎教育のカリキュラムに加わったのは約20年前の1997年度。在宅実習を通じて、訪問看護の世界に興味を持つ看護学生は少なくないと佐藤さんは指摘します。

 

けれども、多くの新卒ナースたちが最初のキャリアとして選ぶのは「病棟勤務」です。

 

病院と訪問看護ステーションそれぞれのスタッフの年齢を比較したグラフ

各年代の看護師がバランスよくいる病院に比べて、訪問看護ステーションは20代が圧倒的に少ない

 

 

「新卒は採用できない」ステーションの事情

背景にあるのは、「それぞれの訪問看護ステーションに人材を育てる体力がない」という現状。

 

下のグラフは、新卒訪問看護師の育成に取り組む「きらきら訪問ナース研究会」が、全国の訪問看護ステーションを対象に新卒採用の意向について尋ねたアンケート調査(2014年)の結果です。

 

訪問看護ステーションの新卒採用意向についての円グラフ

 

「採用しない」「採用を検討していない」とした回答が過半数を占めるものの、約40%は「積極的に採用しようとしている」「採用を検討している」「採用したいが採用できない」と答えていることに、佐藤さんは注目します。

 

「新卒を採用したいと考えている事業所は、案外あるんです。でも、新卒を指導・育成するための人手も、時間も、経営的な余裕もないから採用できない

 

最初に就職する場所といえば、社会人としての礎となる大切な場所。新卒さんも送り出す教員も、就職をためらって当然です」

 

 

力を入れるべきは教育・育成・人材定着

訪問看護ステーション施設数の推移を示したグラフ

 

訪問看護ステーションの数は年々増え、2017年現在、全国で約1万か所に上っています。団塊の世代が後期高齢者となる2025年に向けて、国は「病院から在宅へ」の誘導をさらに強力に推し進めています。

 

2018年4月の診療報酬改定でも、7対1の急性期病院に対する締め付けがますます厳しくなったのに対して、訪問看護ステーションなどの在宅分野には手厚い評価が行われました。看取りや医療依存度の高い患者の支援など、24時間365日、質の高い在宅サービスを安定して提供できるよう、ステーションの大規模化も促しています。

 

急性期の病床削減が続く中で、看護師の採用ニーズは今後、訪問看護に傾いていく可能性が指摘されています。

 

しかし、現状、訪問看護ステーションの看護職員数は平均4~5人。10人以上のスタッフがいるステーションは、まだ2割ほどにとどまっています。

 

佐藤さんの写真

「単なる人材不足で新卒採用を考えてほしくない」と佐藤さん

 

「単に”不足する人材の補填”として新卒看護師の採用を考えてしまうと、定着にはつながりません」と、佐藤さんは指摘します。

 

「これまで訪問看護の業界が力を入れてきたのは募集と採用。でも、その後の育成体制が弱かったために、新卒も既卒も、離職率が高い状況が続いてきました。これから力を入れるべきは定着。そのための教育・育成の充実だと思います」

 

 

小規模ステーションでも育成できるか

しかし、先ほどのアンケート結果でもわかるように、小規模のステーションが新卒・若手を育成するのは、なかなかハードルの高い課題。

 

そこで、佐藤さんも参加する「きらきら訪問ナース研究会」では、こうした課題に対する取り組みを進めています。

 

たとえば、新卒採用を検討している事業所が集まっての「新卒訪問看護師育成者養成講座」の開催。「新卒を育てる人」を育てる講座です。

 

講座では、まず自分たちのステーションの現状を分析。このステーションで新卒を採用することの意味は何か、採用の障害となるものは何か、それをどう解決するかなど、実践につながる具体的なアクションプランに落とし込むところまでサポートしています。

 

新卒訪問看護師の育成ガイドの写真

全国訪問看護事業協会の事業として、きらきら訪問ナース研究会が作成した新卒訪問看護師の育成ガイド

 

「小さなステーションが単独でできることには、どうしたって限界があります」と佐藤さん。「だったら――」

 

地域の病院や大学で手技を学ばせてもらう。

夜間の病棟を知るため、夜勤を経験させてもらう。

地域の介護施設が開くヘルパーさん向けマナー研修を一緒に受けさせてもらう。

 

こんなふうに地域の資源を活用して、みんなで訪問看護師を育てようという連携をつくれたらいい。それって実は、訪問看護ステーションが日ごろから得意とすることなんですよね」

 

きらきら研究会の講座やセミナーを受け、実際に新卒の採用・育成を始めた小規模ステーションも出ています。

 

「2019年度には、新卒を採用する訪問看護ステーションが備えておきたい要件をまとめたいと考えています。どこから取り組んだらいいか困っているステーションにも、どんなステーションを選べばいいのかわからない若手ナースにも参考にしてもらえたらと思います」

 

 

訪問看護ステーションにもいろんな看護、働き方がある

自転車に乗る訪問看護師の写真

 

「訪問看護に挑む新卒や若手ナースは、まだまだフロンティア」という佐藤さん。増えているとはいえ、病院で働くことと比べれば、相応の覚悟は必要だと指摘します。

 

「だからこそ、まずは職場見学・職場体験です。

病院にもいろいろあるように、訪問看護ステーションにもいろんな看護、いろんな働き方があります。病院が合わないからと、訪問看護に理想や夢ばかり見てもうまくいかない。

 

そこのステーションが本当に自分のやりたい看護、自分の望む働き方に合っているのか、しっかり自分で確かめることが大切です」

 

看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko

 

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(参考)

第142回社会保障審議会 介護給付費分科会 訪問看護(参考資料)・PDF(厚生労働省)

介護サービス施設・事業所調査(厚生労働省)

訪問看護アクションプラン2025日本看護協会ほか)

新卒看護師のための訪問看護事業所就業促進プログラム開発に関する調査研究事業報告書(全国訪問看護事業協会)

地域で育てる新卒訪問看護師のための包括的人財育成ガイド(全国訪問看護事業協会)

きらきら訪問ナース研究会

 

 

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