タンザニアの妊産婦を救いたい!国際医療の現場に生きる助産師・マガフ範子さん【3】

前回まで

助産師として、アフリカ大陸の国、タンザニアの十分な医療が行き渡らない地域・タボラのイプリ保健センターに派遣されたマガフ範子(なおこ)さん。

「1,000人のうち5~6人の妊婦さんが亡くなる」タンザニアにおいて、妊産婦死亡を防ぐため、約3年間の任期の間、保健センターや集落で妊婦健診や産後ケアなどの母子保健活動を行いました。

 

保健センターでの妊婦健診や各施設を訪問しながら、タンザニアの妊婦さんの実際の生活に触れていくマガフさん。その中で、多くの妊婦さんが抱えている鉄分不足がとても深刻なことに気づきます。

【第2回】妊産婦死亡阻止ための2つの活動

 

第3回:野菜作りで妊婦さんの鉄分補給!?

 

鉄分を補う野菜づくり「キッチンガーデン」

マガフさんの宿舎の自家菜園

 

タンザニアの妊婦さんの鉄分不足は深刻で、日本の基準であれば、すぐに鉄剤を内服してもらわなければならない程の貧血症状でした。

 

「タンザニア政府が鉄剤を無料配布していたのですが、タボラまでは届いていない状況で。でも、嘆いても政府から物資がまわってくるわけではなくて・・・ならば今、現状でもできること、つまり、村にある物での栄養改善・貧血改善が必要だと感じました」

 

そこで行ったのが、「キッチンガーデン」と呼ばれる活動。一体、どういったものなのでしょうか。

 

「妊婦健診に来てくれた妊婦さんに、『ムチチャ』と呼ばれる、鉄分を多く含んだ野菜の種を渡したんです。各家庭で育てて、そして食べてもらうことを目指しました」

 

「ムチチャ」は、土に埋めてから2週間で実をつける野菜。ムチチャを選んだ理由は、その育てやすさにありました。

 

「鉄剤が政府から配布されてない以上、継続的に野菜で鉄分を補う必要があったのですが、野菜を育てることが負担になると、結局育ててもらえません。だから、畑も、家の庭に作ってもらって、水も、貴重な雨季に貯めたものではなく、生活排水でも十分に育つことを伝えました。その上で、野菜作りを楽しんでもらえるように、訪問の度にしっかりと話を聞いて、モチベーションを保ってもらえるようにしました」

 

また、タボラには元々、野菜を食べる習慣がありませんでした。どうやったら食べてもらえるか・・・よりよい方法を探すために、実際に妊婦さんの自宅に伺い、話を聞いたり、キッチンを見せてもらうなど、何度もリサーチを重ねたマガフさん。その結果、育てた野菜は油炒めにして食べてもらうように提案することにしました。

 

「村の人々の食生活を変えることは難しいので、だんだんと野菜を食べてもらえるようになったり、『種をください!』と言ってくれる妊婦さんが増えてきたのは嬉しかったですね」

 

タンザニアの教会の神父やシスターの食事

 

他にも、こんな変化が。最初はマガフさんだけが教えていた野菜作りでしたが、時間が経つにつれ、村の人々の中にも野菜作りが得意な人が現れるようになり、自主的に野菜作りをほかの村の人々に伝えていく自然な流れができてきたそう。

 

「『これは将来の子どものためになる』と言って、野菜作りに取り組んでくれた人もいました。

もちろん、ここの野菜だけで不足している鉄分が補えるわけではありませんが、持続可能な活動が広がっていくことは嬉しかったです。私たちのような海外派遣ナースがその土地を去った後にも、野菜を食べる習慣が続いていくことが大切なので」

 

【第4回に続く】活動中の給料や休日、今後の目標

 

【看護roo!編集部】


【目次】

(1)妊産婦を救えない厳しい現実

(2)妊産婦死亡阻止ための2つの活動

(3)野菜作りで妊婦さんの鉄分補給!?

(4)活動中の給料や休日、今後の目標

 

【マガフ範子(なおこ)さん】

助産師。大学卒業後、3年半の病院での臨床経験、さらに大学院での2年間を経て、JOCS(日本キリスト教海外医療協力会)に入職。2007年9月から海外派遣ナースとして、アフリカ大陸にある、タンザニア・タボラ州にあるイプリ保健センターに赴任。妊産婦死亡率を下げるために、妊産婦への検診活動や産褥ケアなどの母子保健活動を行った。約3年間の任期を終え、2010年11月に帰国し、JOCSを退職。その後結婚をし、現在はボツアナ共和国在住で、2児の母。

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