AI時代を生きる看護師のみなさんに贈る言葉

ロボットによる看護のイメージ画像

患者さんA「今度入ったロボット、すごいなあ」

 

患者さんB「そうそう、人間みたいに二足歩行できるんでしょ。技術の進歩ですな」

 

A「歩けるだけじゃないんですよ。患者さんを1人で抱えてストレッチャーや車椅子にも移動できるし、清拭や歯磨きみたいな細かい作業もできる。採血や点滴もできるんですって」

 

B「へえー。それじゃ、看護師さんは患者の話を聞くだけか」

 

A「それがですねえ、Bさん。最近はそのロボットが対話型AIを使って我々の話を聞いてくれるんですよ。機械は疲れないし、イライラもしないし、お腹もすかないから、いつまでも何度でも私のつたない話を聞いてくれる。いつでも共感的にうなずいてくれる。正直、本当の医者や看護師さんに相談するよりもホッとしますよ」

 

B「若者の間でも、生身の人間よりもAIを恋人にしたいって人が増えてるそうですね」

 

―とまあ、近未来の医療現場をちょっと想像して書いてみました。しかし、ロボットやAIの技術は非常に進歩しています。

 

このような医療現場の到来は、あながち夢物語ではないと僕は思います

 

多くの仕事が機械・AIに取って代わられる時代

機械が医療現場の大多数の仕事を担う時代のイメージ画像

看護の世界だけではありません。手術もロボットがやる時代になっていますし、画像の読影や投薬の確認もAIのほうが人間よりも正確に行うことができる可能性が高いです。

 

医療現場の大多数の仕事は、人間ではなく、機械に任せたほうが高い質を担保できるのです。そして、おそらく患者さんの満足度も高い

 

医療の世界だけではありません。多くの「ホワイトカラー」の仕事がAIに取って代わられる時代です。

 

業績が良いにも関わらず、多くの大企業が被雇用者を解雇しています。AIが代わりにやってくれるからです。

 

そうして失業したホワイトカラーの多くは、「ブルーカラー」に転職して、新しい生き方を模索しているそうです。

 

成功したブルーカラーは「ブルーカラー・ビリオネア」とか呼ばれてるんだそうです。その代表例がタクシー運転手とか警備員とかだそうですが、海外ではすでに自動運転も実用化されています。

 

正直、多くのブルーワーカーの仕事も機械に取って代わられるような気がします

 

看護師の仕事はロボットに奪われるのか

看護師の仕事をAIが代わりにやってくれる時代のイメージ画像

もはや、ナースは腰を痛めて重たい患者さんを運んだり、清拭をしたり、ラインをとったり、患者さんの話を聞かなくてもよい時代が来るかもしれません

 

そういうのはロボットが代わりにやってくれる。では、師長クラスの管理職だけが生き延びる道でしょうか。

 

いえいえ、実は管理職こそが絶滅危惧種です。だって、機械は昼夜関係なく、疲れずに働いてくれますから、シフトを組む必要もない。病気や子育てや介護への配慮も必要ありません。ベッドコントロールや他部署との調整も行ってくれるでしょう。

 

うわあ。ディストピア小説っぽいですね。では、もはやナースに生きる道は残されていないのでしょうか

 

僕はそうは思いません。まずは、問題点の発見や発掘です。

 

ロボットは既存の問題に対する「正しい対応」を学習し、そつなくそれを遂行してくれるでしょう。疲れることなく、飽きることもなく。

 

しかし、現在見つかっていない、しかし潜在している問題点を見出したり、掘り下げたりすることはできないように思います。

 

機械は「学習」はしてくれますが、「考えたり、悩んだり」はできないんです。たぶん。

 

人にできて、AIにできないこと

機械にできないことを担う医療従事者たちのイメージ画像

例えば、夜間に転倒した患者さんがいたとしましょう。ロボットはすぐに患者さんを抱きかかえ、ベッドに戻してくれるでしょう。

 

ドクターコールをして、指示された検査を遂行し、適切に事後対応もしてくれると思います。

 

しかし、そもそもこの患者さん、なぜ転んだのでしょうか

 

転んだ患者さんをみたら、必ずその「原因」を考えろ。僕が先輩医師から教わった箴言(しんげん)です。転んだことに事後的に対応し、脚のレントゲンや頭のCTを撮るだけではだめなのです。

 

人はいろいろな理由で転びます。あ、メタファーで言ってるのではありませんよ。恋愛でしくじったり、ギャンブルで大損したり、とかそういう話ではなく。

 

よくあるパターンは、ものにつまずいて転ぶ場合です。あ、これもメタファーじゃないですよ。ハニートラップにひっかかったりとか。嫌に生々しい描写が続きますが、僕の私生活とは何の関係もありません!(きっぱり)

 

でも、仮にものにつまずいたとしても、そこにはさらに理由があるはずなのです。

 

例えば、眼鏡が合っていなくて地面がよく見えなかった。診断のついていない関節炎やサルコペニアが隠れていた。スリッパの裏側が滑りやすくなっていて買い替えが必要などなど。

 

つまずいてもいないのに転んでしまった場合はさらにやっかいです。ひょっとしたら、患者さんは気を失って倒れてしまったのかもしれない。

 

では、なぜ気を失ったのか?意識消失の原因は頭の中にあるのか?例えばけいれん発作を起こしたとか。では、なぜ患者さんはけいれんしたのか?

 

例えば服用している薬の副作用?あるいは隠れていた基礎疾患?それとも不整脈による血流の低下?では、なぜ不整脈?例えば服用している薬の副作用―?以下同文。

 

ほら、転倒ひとつとっても、考えることは山ほどありますねAIさんは「対応」はしてくれますが、ここまで考えてはくれませんよ。こちらから聞かない限り。

 

患者ケアで必要なことは「追究」

患者ケアで必要なことは、納得いかないことはどこまでも追究することです。

 

それは医学に関わることだけではありません。家族との不和。金銭問題。なんでも構いません。

 

でも、「納得いくまで掘り下げる」行為は、その道のプロが気合い入れてやらないとできないことなんです。

 

看護師のみなさん、ぜひ追究する力で、AI時代を生き残っていきましょう。

 

僕の連載は今回で最後となりますが、これを僕の贈る言葉にいたします

 

ご愛読いただきましてどうもありがとうございました。

 

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執筆

神戸大学医学部附属病院感染症内科 教授岩田健太郎

1997年 島根医科大学(現・島根大学)卒、1997年 沖縄県立中部病院(研修医)、1998年 コロンビア大学セントクルース・ルーズベルト病院内科(研修医)、2001年 アルバートアインシュタイン大学 ベスイスラエル・メディカルセンター(感染症フェロー)、2003年 北京インターナショナルSOSクリニック(家庭医、内科医、感染症科医)、2004年 亀田総合病院(感染内科部長、同総合診療・感染症科部長歴任)、2008年神戸大学大学院医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野教授 神戸大学都市安全研究センター感染症リスク・コミュニケーション研究分野 教授 神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長・国際診療部長(現職)

 

編集:北井寛人(看護roo!編集部)

 

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