SNSが加速させる人の嘘

 

現代社会に増える嘘つき

国内外で、平気で嘘をつく人が増えました。

 

嘘をつくことに何の良心の呵責も感じない。

バレなければよいと思っている。

 

いや、バレても「そんなことは言っていない」とか「そんなつもりはなかった」としゃあしゃあと言ってのける。

こういう人が相当な地位にあったりするわけで、さらに始末が悪い。

どこぞの国の大統領とか、どこぞの自治体の知事とか。

 

真性の嘘つきは、「自分がそもそも嘘をついているという自覚すらない」わけで。

 

外来にも、ときどきこういう「虚言癖」の方はおいでになります。

彼・彼女は自分が嘘をついているという自覚すら希薄でして、こういう方と真偽を問答しても時間の無駄。

ひたすら「私は正しい、あなたが間違っている」と文句を言われ続けるだけです。

 

患者さんの個人情報なので具体的にどういう嘘をついたか、とかはここでは申し上げられませんが、とにかく外来で「今日はXXXがあって外来を遅刻した」とか「XX科でこんなことがあって、もうあの先生にはかかわりたくない」とかおっしゃいます。

裏を取ると、そんな事実がないことはすぐに分かるのですが。


このくらいはまだ可愛い方で、さらにレベルの高い嘘つき、「嘘つきの横綱」みたいな人もいて、こういう人は喋り方が上手、見た目も好感度が高くて、いかにも信頼できそう

そして、ソフトな口調で、親切な語り口で、平気で嘘をつくのです。

 

多くの人は信じ込みますから、「あの人は嘘つきだ」と言おうものなら、「何言ってんだ、こいつ」と逆に怒られる始末です。

詐欺師の達人あたりは、こういう境地に達した人なのでしょう。

 

SNS時代の勝者は、嘘つき?

こういうソフトでナイスな嘘つきが、Facebookなどのソーシャルメディア(SNS)でいい感じの虚言を振りまくと、タニマチとか信者とかが群がってグループを形成します。

 

このへんが反科学とか反ワクチンにも関わる陰謀論を持ち上げれば、新宗教よろしく、一気に同じ思想を持つ強固な集団が誕生します。

オウム真理教の諸々の事件前後でソーシャルメディアがなかったのは不幸中の幸いでした。

当時そんなものがあったら、おそらく「地下鉄サリン事件」などはもっと大規模な、全国レベルの同時多発テロになっていたのではないでしょうか。

 

SNSの時代には、とにかく嘘はつき続けた人の勝ち。

 

一定数の人を信じ込ませてしまえば、その嘘はどんどん拡散していき、選挙にだって勝てるというわけです。

2024年11月の兵庫県の県知事選挙では、「パワハラなどなかった」「知事は可哀想だ」というソーシャルメディア上の「デマ」を信じ込んだ人が前知事に多数投票し、見事に再選を果たしました。

 

近年は民主主義の持つ弱点が露骨に、その弱点を突きまくられているように思います、国内でも、国外でも。

 

まあ、かといって民主主義以外のシステムを使うと、ますます全体主義に拍車がかかってしまうわけで、ウインストン・チャーチルの言うように「民主主義は最悪な政治システムだが、それでも他のどの選択肢よりもましなシステム」なのです。

つらいですね。

 

SNSのアルゴリズムが嘘を拡散する

巨大なSNSというプラットフォームを牛耳る大富豪たちは、新しいアメリカ大統領におもねって、ファクトチェックを怠り、陰謀論が流布しやすい環境を促進させています。

Twitter然り(ぼくはXとは呼びたくありません)、Facebook然り、YouTube然りです。

 

こうしたSNSはアルゴリズムを使い、一回、陰謀論に触れた人には、次々と類似の陰謀論が目に入ってくるような仕組みになっています。

 

そうやって「洗脳」が繰り返され、確信してしまった人はもう戻ってこれません。

陰謀論のガチの信者になってしまい、「そんなのは陰謀論だよ」とか言おうものなら、完全に敵扱いされて、全否定です。

分断の時代というのはそういうものなのです。

 

看護師さんでも、そういう陰謀論にハマっている人はときどき見かけます。

HPVや新型コロナウイルスのワクチンに強固に反対したりするわけで、実に危うい。

 

皆さんは大丈夫ですか?

 

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執筆

神戸大学医学部附属病院感染症内科 教授岩田健太郎

1997年 島根医科大学(現・島根大学)卒、1997年 沖縄県立中部病院(研修医)、1998年 コロンビア大学セントクルース・ルーズベルト病院内科(研修医)、2001年 アルバートアインシュタイン大学 ベスイスラエル・メディカルセンター(感染症フェロー)、2003年 北京インターナショナルSOSクリニック(家庭医、内科医、感染症科医)、2004年 亀田総合病院(感染内科部長、同総合診療・感染症科部長歴任)、2008年神戸大学大学院医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野教授 神戸大学都市安全研究センター感染症リスク・コミュニケーション研究分野 教授 神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長・国際診療部長(現職)

 

編集:宮本諒介(看護roo!編集部)

 

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