医療者こそ英語を学ぼう!デマや嘘に騙されないために

ぼくが一緒に働いている感染管理認定看護師さんは、いつもぼくに「英語を勉強しろ」と言われ続けて迷惑そうにしています。

 

学校でもろくに英語なんて勉強しなかったのに、社会人になってそんな面倒くさいことできるかよって感じです。

 

でも、本当に大事なんです。医療/医学の重要な文献はほとんど英語で書かれているからです。

 

重要な文献・論文ほど英語で書かれてている

英語の医学論文のイメージ画像

知らなかったですか?でも、実はそうなんです。

 

日本には1億人以上の人が住んでいます。だから、「日本語」という言葉だけでマーケットができます。

 

新聞社もテレビ局も出版社も日本語だけを使い、日本語話者だけを相手にしていて商売ができるわけです。

 

医療や看護のテキストも日本語だけでかなり勉強することができます。みなさんも、学生時代に読んだ教科書は全部日本語だったでしょう?

 

しかし、日本語のテキストには書いていないことが、英語のテキストにはたくさん書いてあります

 

特に論文においてはそれは顕著でして、質の高い論文、重要な論文はほとんど英語で書かれているのです。

 

え?「日本人が書いた論文は日本語でしょう」って?

 

確かに、日本人の学者はしばしば日本語で論文を書きます。

 

しかし、医療・医学において質が高くて重要な論文を日本人の学者が書くときは、必ず英語で書きます

 

理由は簡単で、圧倒的に読者が多いからです。自分が書いたものは他人に読んでもらいたい。できれば世界中の同業者に読んでほしい。

 

そう考えると、日本語ではなく英語で論文を書くのが自然です。だから、日本人が書いた重要な医学・医療論文もほとんど英語で書かれています。

 

なにより、英語の論文や教科書を読めるようになると、日本語の教科書や論文の読み方が変わります。

 

自分たちが「当然」と思っていたことが、世界レベルで考えると案外「当然」ではないことが分かります。

 

英語は世界を、そして自分の考え方の枠組みを大きく広げてくれるのです。

 

質の高い情報を見るためにも

論文を検索するイメージ画像

重要な教科書は誰かが翻訳してくれるから、英語は必要ない。そういう意見もあるでしょう。

 

そもそも今はウェブのブラウザについている翻訳ツールも進歩しています。英語の論文も
Google Chromeなんかの翻訳機能を使えば一瞬で日本語にしてくれます。

 

しかしですね。テクノロジーが進歩して、そういう便利な機能がついていても、英語をちゃんと勉強しない人は結局そういう論文を読めないんですよ。なぜなら、その英語論文にそもそもたどり着けないから

 

論文の検索も、英語で直接やればすぐに見つけられますが、
機械に日本語検索用語を英語に直してもらい、それで文献を探し、その文献を日本語に翻訳し、その論文が役に立つかどうかを吟味して―

 

なんてまどろっこしいことやっていたら、だんだん人はめんどくさくなって、論文を探さなくなります。

 

ぼくが教鞭を取っている神戸大の医学生が典型で、彼らはこちらが黙っていると、ウェブ上で必ず日本語の文献だけを探そうとします。

 

それも、Googleとかで手軽に探そうとするので、質の低いブログの記事とかを根拠にレポートを書いたりします。

 

ネット上にはデマや嘘、悪質な陰謀論とかもたくさんありますから、そういうのにひっかかって騙されてしまう学生も多いです。

 

普段から英語の論文をPubMedなどで検索する習慣を持っていれば、質の高い論文を見つけるのも上手になります。

 

誤情報を見抜くリテラシーを身につける

情報が正しいかを見極める看護師のイメージ画像

質の高い論文を読む習慣をつけると、質の高い議論やデータの解釈法も分かってきます。これをリテラシー(Literacy)といいます。

 

リテラシーがつくと、デマや嘘や陰謀論に騙されにくくなります

 

前回も書きましたが、残念なことに世の中にはひどい嘘つきがたくさんいます。悲しいことに、看護師や医師にも嘘つきがいます。

 

また、自分は嘘をついていないつもりでも、デマや陰謀論に騙され、そういう間違った情報を信じ込んでしまい、それを患者さんや他の人に言ってしまう人も多いです。

 

結果としてそういう人たちは(意図してはいないのですが)「嘘つき」になってしまうのです。

 

資格を持った看護師や医師が、非科学的な反ワクチンとかを信じてしまう実例をぼくはたくさん知っています。

 

現在、アメリカでは麻疹(はしか)が流行しています。かつてアメリカはワクチンで麻疹を制圧し、ぼくがニューヨークで研修医をしていたときは、同僚の誰もが「麻疹?見たことない」という状態でした。

 

それが、間違った反ワクチン、陰謀論のためにワクチン接種率が低下し、再度流行するという憂き目にあっているのです…

 

もちろん、英語の情報にも嘘やデマや陰謀論はあります。「この方法なら嘘やデマや陰謀論は存在しない」なんてものはないのです。

 

YouTubeのような動画はもちろん、SNSにも、テレビや新聞、雑誌にも、間違いやデマ、嘘、陰謀論は散見されます。

 

そんな誤情報に騙されにくくするためにも、普段から質の高い情報に触れる習慣が必要です。

 

その道具として、英語は非常によくできているのです。

 

簡単な工夫で英語力アップを

最初は簡単なところからでかまいません

 

例えば、推しのアニメやドラマを英語吹き替えで観るとか。英語のセリフを日本語の字幕で観るだけでも、英語力アップに繋がります。

 

ぼくは好きなサッカー中継を英語で聞いたり、英字新聞のサッカー記事を読むことで、若い頃に英語を勉強しました。

 

世界の見方が確実に変わります。ぜひ挑戦してみてください。

 

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執筆

神戸大学医学部附属病院感染症内科 教授岩田健太郎

1997年 島根医科大学(現・島根大学)卒、1997年 沖縄県立中部病院(研修医)、1998年 コロンビア大学セントクルース・ルーズベルト病院内科(研修医)、2001年 アルバートアインシュタイン大学 ベスイスラエル・メディカルセンター(感染症フェロー)、2003年 北京インターナショナルSOSクリニック(家庭医、内科医、感染症科医)、2004年 亀田総合病院(感染内科部長、同総合診療・感染症科部長歴任)、2008年神戸大学大学院医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野教授 神戸大学都市安全研究センター感染症リスク・コミュニケーション研究分野 教授 神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長・国際診療部長(現職)

 

編集:北井寛人(看護roo!編集部)

 

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