最終更新日 2018/03/06

知的障害

知的障害とは・・・

知的障害(ちてきしょうがい、intellectual disability〈ID〉)は精神遅滞とも表現され、知的発達の障害を指す。

知的障害は、医学用語である精神遅滞(mental retardation〈MR〉)と同義である。知的機能や障害機能に基づいて判断され、知能指数(IQ)によって障害の程度が分類される。
具体的には、知的機能が全般的にほかの同年齢の子どもよりも明らかに遅れているとともに、適応機能に明らかな制限が18歳未満に生じると定義されている。中枢神経系の機能に影響を与えるさまざまな病態で生じ得る疾患群の一つである。有病率は約1%前後で、男女比はおよそ1.5:1である。

【知的機能】
知的機能は知能検査によって測定され、IQが70以下の場合に知的機能が低下していると判断される。IQの値により、おおよそ下記のように分類される。
・軽度:IQ50~70
・中等度:IQ35~49
・重度:IQ20~35
・最重度:IQ20未満
重い運動障害を伴った重度知的障害は、重症心身障害ともいわれる。

【適応機能】
適応機能は日常生活で必要な要求をいかに効率よく適切に対処し、自立しているかを表す機能である。バインランド適応行動尺度などを用いて測定される。

【診断】
症状が重い場合は幼少期に診断されることが多いが、症状が軽い場合は当然診断も遅くなる。
診断は、症状の評価と同時に原因疾患の有無を検査する。原因疾患としては、染色体異常・神経皮膚症候群・先天代謝異常症・胎児期の感染症(先天性風疹症候群など)・中枢神経感染症(たとえば細菌性髄膜炎など)・奇形・てんかんなどが挙げられる。

【福祉サービス・療育環境】
知的障害は、医療だけでなく、福祉の側面からのサポートも重要である。昨今、知的障害や精神遅滞に対する福祉的な捉え方に変化が生じてきており、知的能力と日常生活における活動能力は必ずしも一致せず、人それぞれ必要な援助が異なることが指摘されている。サービスを受けるための制度として、療育手帳があるが、地域によってサービス内容に差異があることに留意が必要である。
知的障害や精神遅滞そのものを改善させることは難しい。しかし、適切な療育環境の下では適応機能などが向上する可能性が十分あるため、早期診断、早期治療が求められる。また、適切な療育環境が長期的予後を改善するといわれているため、家族への支援も不可欠である。

執筆: 神谷侑画

神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター副医長

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