最終更新日 2018/05/07

急性中耳炎

急性中耳炎とは・・・

急性中炎(きゅうせいちゅうじえん)とは、主に細菌による中耳の急性感染症である。中耳は鼓膜の奥に見える鼓室、鼓室と上咽頭をつなぐ耳管、鼓室の後方に連続する乳突蜂巣からなる。

急性中耳炎は上咽頭の炎症が耳管を逆行して起きるものであり、多くは細菌による感染症である。肺炎球菌インフルエンザ桿菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリスが三大起因菌である。多くは上咽頭や副鼻腔の感染に引き続き起こるため、感冒罹患の多い冬によくみられる。また、小児は耳管機能が未完成であることから、小児によくみられる。

【病態と所見】
初期には鼓膜の発赤、血管の怒張が見られる。進行すると鼓室内に浸出液が貯留し、さらに感染が進行すると膿性の貯留液となる。鼓室内に分泌物が溜まると鼓膜の著しい膨隆が見られるようになり、時に鼓膜が破れて膿が流出する。治癒の過程では、穿孔の有無にかかわらず、しばらく鼓室内に貯留液が溜まる状態となり、やがて吸収されていく。ただし、感染が治まらないと乳様突起炎や内耳障害(めまい、感音難聴、顔面神経麻痺)を発症することがある。
鼓室内の貯留液が吸収されずに難聴が持続したり(滲出性中耳炎)、鼓膜穿孔が治癒せずに慢性穿孔性中耳炎に移行したりすることがある。

【症状】
主として耳痛、発熱がある。学童以降では難聴、耳閉塞感を訴える。鼓膜穿孔が生じると耳漏がみられる。

【診断】
鼓膜所見で診断する。携帯耳鏡を用いると鼓膜の観察は容易である。

【治療】
疼痛に対しては鎮痛薬(非ステロイド性消炎鎮痛薬:NSAIDs)を投与する。初期の中耳炎は様子をみることもあるが、発赤が強く、浸出液が見られるときは抗菌薬を用いることが一般的である。鼓室内に膿が溜まっている場合は鼓膜切開を行い、排膿を図り、あわせて細菌検査を行う。
診療指針として、日本耳科学会等4学会共同編集で『小児急性中耳炎診療ガイドライン』が発表されている。鼓膜所見と全身所見からスコアリングを行い、重症度に応じた治療アルゴリズムを紹介している。

執筆: 中島早百合

順天堂大学医学部附属浦安病院 耳鼻咽喉科助手

執筆: 角田篤信

順天堂大学医学部附属練馬病院  耳鼻咽喉・頭頸科先任准教授

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