最終更新日 2018/01/09

肺癌

肺癌とは・・・

肺癌(はいがん、lung cancer)とは、肺の上皮組織から発生する悪性腫瘍である。

組織型により大きく腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌、小細胞癌に分けられる。これら4つの組織型以外の肺癌はまれである。また、臨床経過、抗悪性腫瘍薬の効果の違いから、小細胞肺癌と非小細胞肺癌の二つに分けられる。

【症状】
症状は腫瘍が存在する部位によって異なり、中枢の気管支からの発生や近傍に存在する場合は血痰、喀血、咳嗽をもたらす。胸壁に浸潤したり、骨に転移したりしている場合は疼痛を自覚する。胸腔内に癌細胞が進展した場合は胸水が貯留し、増加すると呼吸困難を訴える。胸腔内にはさまざまな神経が走行しており、浸潤するとその神経の麻痺症状や刺激症状が現れる。上大静脈が腫瘍により閉塞すると顔面と上肢がうっ血する、上大静脈症候群を呈する。大血管に浸潤した場合、そこから大量出血を引き起こし、突然死を来しうる。さらに、肺癌はさまざまなホルモン物質を産生することがあり、ホルモン分泌過剰による症状を呈することがある。

【検査】
肺癌の進展を把握し病期を知る検査として、胸部X線検査、胸部CT、FDG-PET、頭部MRI、骨シンチグラムなどの画像検査を行う。抗悪性腫瘍薬による治療方法が肺癌の組織型、遺伝子変異、癌細胞の表面受容体により異なるため、腫瘍の組織を得ることが必要であり、気管支鏡検査を行うことが通例である。
その他に、喀痰細胞診断、CTガイド下針生検、手術による腫瘍部位の部分切除がある。腫瘍マーカーと呼ばれる血液中に含まれる癌から産生される物質を調べることで、診断や進行度の参考にすることがある。

【治療】
適応があれば、現時点では最も根治が望める治療は手術であるが、癌の病期や耐術能により適応を検討する。標準術式は癌の存在する肺葉切除と縦隔リンパ節郭清術である。胸腔鏡を用いて小さい創で行うことで、以前よりも低侵襲で手術が可能となった。それでも、耐術能が低い場合は肺葉切除を区域切除や部分切除に縮小したり、縦隔リンパ節郭清を省略したりすることがある。

抗悪性腫瘍薬投与や放射線照射は手術の適応がなかった場合や手術を希望されなかった場合に行われる。根治よりも病勢の減弱、症状の緩和が目標となる。分子標的治療薬と言われる、癌のみをターゲットにする抗悪性腫瘍薬や免疫応答を高める免疫チェックポイント阻害薬が使われ始めている。放射線も正常組織への影響を考慮した定位放射線照射、重粒子線治療、陽子線治療が行われている。また、より根治性を上げるために、進行した病期では手術に抗悪性腫瘍薬投与や放射線療法の追加が検討される。

【予防】
肺癌の予防で最も効果があるのは禁煙と受動喫煙防止である。世界の肺癌による死亡者数は全癌死で最も多く、全世界でさまざまな規制、対策がなされている。

SNSシェア

この単語に関連する記事

用語辞典トップへ