HBV、HCVなどの感染症がある場合は特別な注意が必要?

『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』より転載。

 

今回は「HBV、HCVなどの感染症がある場合」に関するQ&Aです。

 

今﨑美香
大阪市立総合医療センター医療安全管理部
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長

 

HBV、HCVなどの感染症がある場合は特別な注意が必要?

 

基本的にはすべての患者に対して標準予防策(SP)を遵守することが重要であり、感染症の有無で特別な注意は不要です。

 

〈目次〉

 

標準予防策とは?

感染症の有無にかかわらず、すべての患者の血液、体液、分泌物、排泄物、創のある皮膚、粘膜は感染性があるものとして扱う感染予防策です。つまり、すべての患者の術後処置やケア時を含め、感染予防策は変わらないのです。

 

標準予防策は、手指衛生をはじめ、適切な防護用具の使用など(表1)の項目から成り立っています。

 

表1標準予防策の実際

1.手指衛生
2.個人防護具(personal protective equipment:PPE)
3.呼吸器衛生/エチケット
4.患者の収容
5.器具/器材
6.環境
7.リネン
8.安全な注射手技
9.腰椎穿刺時のサージカルマスク着用
10.労働者の安全

 

隔離予防策のためのCDC ガイドライン2007. より一部改変して抜粋

 

針刺しや眼などへの血液・体液曝露などのリスクを回避する対策も標準予防策に含まれます。

 

質問にあるようにHBV(B型肝炎ウイルス)、HCV(C型肝炎ウイルス)など、いわゆる血液媒介感染症の結果を手術前に確認すると思いますが、ウィンドウピリオド(window period)期といって、感染していても検査で陽性と判定できない空白期間があります。つまり、ウィンドウピリオド期も標準予防策として感染予防策を行う理由の根拠になります。

 

手指衛生5つのタイミング

標準予防策のなかでも最も重要な手指衛生は、そのタイミングおよび方法に留意が必要です。

 

2009年に世界保健機関(WHO)が医療現場における手指衛生に関するガイドラインを発表しています。このなかで、手指衛生5つのタイミング(Five Moments for hand hygiene、表2)を推奨しています。

 

医療関連感染を減らすための最低限の手指衛生のタイミングとして、医療現場での実践が求められています。

 

表2手指衛星の5つのタイミング

1.患者に触れる前

・医療環境の病原体から患者を守るため

 

2.清潔・無菌操作の前(直前)

・患者の粘膜や無菌域への病原体の侵入を防ぐため

 

3.体液に曝露された可能性のある場合

・病原体による医療従事者の保菌や感染を防ぐため
・病原体による医療環境の汚染や二次感染の拡大を防ぐため

 

4.患者に触れた後

・患者由来の病原体から医療従事者と医療環境を守るため

 

5.患者周辺の環境や物品に触った後

・患者由来の病原体から医療従事者と医療環境を守るため

 

WHO:WHO Guidelines on Hand Hygiene in Health Care 2009 より日本語訳を一部改変して引用

 

コラム感染対策とは

手術部位感染(surgical site infection:SSI)とは手術後に発生する感染症で、手術切開部位と深部、臓器・体腔を含む手術操作を加えた部位の感染のことをいいます。

 

SSI の発生率は、手術部位や術式、リスクインデックス(患者の身体状態と創の汚染状態、手術時間により層別化される)により異なります。SSI は外科手術後における重要な合併症であり、その発生により入院期間の延長や医療コストの増大につながり、病院の損失は大きく、何よりも患者の医療に対する信頼および満足度を著しく損なうことにもなりかねません。

 

SSI の予防は術前、術中、術後に至るまで必要です。特に術後は血糖コントロールや創部管理に加え、標準予防策(standardprecautions:SP)1 の徹底が最も重要な感染対策です。

 


[文献]

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典]『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(編著)西口幸雄/2014年5月刊行

術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100

 

SNSシェア

看護知識トップへ