正常な体温でも、1日のうちで体温に差があるのはなぜ?

 

『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は体温の日内変動に関するQ&Aです。

 

江口正信
公立福生病院診療部部長

 

正常な体温でも、1日のうちで体温に差があるのはなぜ?

 

基礎代謝以外に、運動、食事、精神活動などの影響や外界の気温の変化による影響を受けるためです。

 

〈目次〉

 

体温に影響を与える因子は

睡眠時は、体温に影響を与える運動や精神活動などの因子が最も低下している状態であり、基礎代謝による体熱の産生のみが体温を決めます。

 

一方、生活習慣上、筋肉活動による体熱の産生、交感神経興奮による体熱の産生などが午後にピークとなり、産生された体熱の保持により、午後3~8時ごろの体温が最も高い値をとるようになります。

 

また、外界の気温も一般的に明け方が最も低く、日中から午後2時前後に最も高い値を示すので、この気温の変動も体温の日内変動に影響を与えます。

 

体熱の産生には、次の5つの要素が関与しています。

 

  1. 基礎代謝
  2. 筋肉運動
  3. ホルモンによる調節(甲状腺ホルモンなど)
  4. アドレナリンの作用あるいは交感神経系の興奮
  5. 体温そのものの作用

 

基礎代謝とは

基礎代謝とは、空腹状態(おおよそ食後12~14時間)で、精神的興奮も筋肉運動、消化機能もほとんど働いていない、心身ともに絶対安静状態での新陳代謝に相当するものです。

 

これは生命維持に必要な最小限度の動作である心拍動、呼吸運動および体温保持用エネルギーに要する代謝といえます。また、これは甲状腺機能と密接な関係があり、甲状腺ホルモン(トリヨードサイロニン:T3、サイロキシン:T4)の分泌が高まると基礎代謝が亢進すると考えられています。

 

体温に変動があるのは

体温は1日中、常に一定の値を示すものではありません。就眠時が最も基礎代謝状態に近いわけですから、体温も1日のうち(とくに午前2〜6時)で最も低い値をとります。

 

反対に基礎代謝に加えて、運動代謝や精神的興奮あるいは消化吸収機能が働いている午後3~8時ごろは、最も高い値をとると考えられています(図1)。

 

図11日の体温変動

1日の体温変動

 

しかし、体温の日内変動が1℃あるいはそれ以上あるときは、体温自体が低い状態でも病的状態であると考えなければなりません。

 

⇒この〔連載記事一覧〕を見る

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版

SNSシェア

看護知識トップへ