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2016年01月19日

ペースメーカー装着患者の観察ポイント

心電図が苦手なナースのための解説書『アクティブ心電図』より。
今回は、ペースメーカ装着患者の観察ポイントについて解説します。

田中喜美夫
田中循環器内科クリニック院長

 

〈前回の内容〉

ペースメーカーの心電図

 

〈目次〉

 

ペースメーカー手術手技に関連する観察

ペースメーカー手術手技に関連する観察としては、手技に伴う合併症の発生に注意しましょう。

体外式にしても植込み型にしても、体外から侵襲的にリードを挿入して、植込み型ではさらに、ジェネレーターを皮下に埋め込みます。

穿刺部や縫合部の出血、内出血、感染はよく観察しましょう。またリードが血管内にあるので、リード感染による敗血症、発熱にも注意が必要です。

手技中に血管損傷や、心筋損傷を起こすと、縦隔内や心嚢内に出血し、胸背部痛、血圧低下をきたすことがありますので、バイタルサインにも気をつけましょう。穿刺によって、肺損傷があると気胸や血胸によって、胸背部痛や呼吸状態の悪化が出現します。酸素飽和度にも気をつかいましょう。

手技全体の1%程度ですが、病棟に帰室してから出現することがあり、注意してください。

 

まとめ

  • 穿刺部や縫合部の出血、内出血、感染、リード感染による発熱
  • 心血管損傷による、内出血:胸背部痛、血圧低下
  • 肺損傷による気胸、血胸:胸背部痛、呼吸状態悪化

 

ペースメーカー機能の観察

心臓のポンプ機能は心室が担当していますよね。ですからペースメーカーも心室でのペーシングが重要です。

DDDペースメーカーは主に植込み型で、調整が複雑なので、ここでは基本のVVIモードに絞って解説します。

VVIモードは心室でペーシング、心室での自己心拍を感知して、設定周期内はペーシングしない(抑制:I)というモードです。

観察は機能別に考えましょう。

①ペーシング:設定心拍どおりに刺激が出て心室を興奮させる機能です。

②感知〔センシング(と抑制)〕:心室の自己心拍を感知して、設定の反応“抑制”が行われますね。

しかし、抑制はジェネレーター内の仕事ですから、調整はできません。観察すべきは感知(センス、センシング)がキチンと行われているかという点です。なぜなら、感知が不良だと、抑制もできないからです。つまり、観察項目はペーシングとセンシングが適正に行われているかどうかです。

これは、モニター心電図または標準12誘導心電図で確認します。

 

ペーシングの観察

まず、設定心拍数(周期)を確認します。たとえば設定心拍数が60回/分であれば、自己心拍がなければ1分間に60回、1秒周期でペーシングをするという設定です。

まず、ジェネレーターからの電気刺激が設定どおり出ているか観察しましょう。電気刺激はスパイクとして心電図に現れます。スパイクが設定周期どおりに心電図に見られれば、ジェネレーターは問題ありません。

次にスパイクに引き続いてQRS波が見られるかをチェックします。設定周期どおりスパイク-QRS波が確認できれば心室ペーシングは問題ありません(図1)。

図1設定心拍数(周期)の心電図

設定心拍数(周期)の心電図

 

 

スパイクがみえない場合

刺激の強さや誘導によっては、スパイクが小さくて見えない場合があります。見えなくても設定心拍数どおりに、規則正しく幅広いQRS波が見られていれば、ペーシングは問題ありません。

図2の心電図を見てみましょう。

図2ペーシング不全の心電図

ペーシング不全の心電図

 

75回/分、0.8秒周期でスパイクが見られますが、QRS波がありませんね。ときどき見られる幅広QRS波は、スパイクと無関係で補充調律による自己心拍です。刺激はされていますが、心室が興奮していない状態でペーシング不全といいます。

スパイクすら見られない場合もありますが、いずれにしてもペーシングしているのに心室がペーシングされない状態がペーシング不全です。

・スパイクもQRS波も見られない場合:体外式の場合はリードとジェネレーターの接続をまず確認し、問題なければリード先端の位置を確認して、心室筋との接触が適正かどうかをチェックします。

・スパイクはあるが、QRS波が見られない場合:リードの接触を確認し、適正ならば、刺激の強さが足りないので、出力(アウトプット)を大きくして、強い刺激でペーシングします。

 

まとめ

  • 設定心拍数どおりにペーシングされない状態がペーシング不全
  • 接続・リードの位置を確認し、出力を上げる

 

感知:センシングの観察

自己心拍のQRS波を認識することが感知(センシング、S)ですね。正常にセンシングすれば、その時点でペースメーカーの周期がリセットされて、設定時間内はペーシングしないという機能が抑制(インヒビット、I)です。

図3の心電図を見てみましょう。

図3抑制(I)された心電図

抑制(I)された心電図

 

5~7拍目のQRS波は、スパイクに引き続いて幅広QRS波ですから、心室ペーシングです。スパイク~スパイク間隔は20コマ(0.8秒)ですから、75回/分に設定されています。

最初に戻ると、1拍目はペーシングですが、2拍目は幅が狭く、スパイクも先行していませんので、自己心拍のQRS波です。この自己QRS波からちょうど20コマ、0.8秒後にスパイクが出現してペーシングQRS波がありますね。

これは、ペーシング後、設定周期の0.8秒以内に自己心拍が出現したため、それを感知して、周期をリセットし、感知から0.8秒の間に自己心拍がなかったためペーシングされたのです。

これが抑制(I)です。

4拍目も自己心拍で、正常に感知され0.8秒後に心室ペーシングされています。

これに対して、図4の心電図では、自己心拍が出現しているにもかかわらず周期がリセットされず、スパイクが出現していますね。

図4アンダーセンシング状態の心電図

アンダーセンシング状態の心電図

 

これは自己QRS波を感知していないために起こる現象でアンダーセンシングという感知不全です。感度が鈍いためにQRS波を認識できない状態ですから、感度を上げて(鋭くして)、もう少し小さい電位を認識できるように調整します。

アンダーセンシングとは逆に、T波やノイズなど、QRS波以外の電位を感知してしまう場合をオーバーセンシングといいます。図5の心電図では、設定周期が1秒であるはずなのに、自己QRS波の後ペーシングスパイクが出現するまでに1秒以上かかっていますね。

図5オーバーセンシング状態の心電図

オーバーセンシング状態の心電図

 

これは、本来QRS波のみ感知するはずが、電位の低いT波までも感知してしまい、そのT波をQRS波と間違って認識して、その時点で周期をリセットしているために起こる現象です。アンダーセンシングとは逆に、感度を下げて(鈍くして)、より大きい電位のみを認識するように調整します。

 

まとめ

  • 自己QRS波を適正に認識できない状態がセンシング不全(感知不全)
  • QRS波の電位が認識できない:アンダーセンシング。対応:感度を上げる
  • QRS波以外のもの(T波、ノイズ)まで認識する:オーバーセンシング。対応:感度を下げる

VVIモードのペースメーカーをモニター心電図で観察すべき点をまとめると、以下のとおりです。

  1. 設定心拍数よりも自己心拍数が多ければ(設定周期より短い周期で自己心拍が出ていれば)、ペースメーカーは抑制されて作動しないので、心室ペーシングの波形が出ないはず。
  2. 設定心拍数を下まわっても(設定周期より長く)QRS波が出なければ、ペーシング不全。(リードの接続、位置を確認して出力を上げる)
  3. 自己QRS波を感知しないのがアンダーセンシング〔感度を上げる(小さい電位でも認識できるようにする)〕
  4. 自己QRS波以外のものまで感知するのがオーバーセンシング〔感度を下げる(小さい電位は感知しないようにする)〕

 

〈次回〉

ペースメーカ装着患者の日常生活指導

 

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『アクティブ心電図』 (著者)田中喜美夫/2014年3月刊行/ サイオ出版

著作権について

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