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2015年07月01日

生命誕生の起源|解剖生理をおもしろく学ぶ

解剖生理は苦手・・・という人多いですよね?そんなナースのための新連載。
今までになかった、楽しく読める解剖生理学の解説書『解剖生理をおもしろく学ぶ』より。

〈前回の内容〉

いざ、からだを探る旅へ
解剖生理の勉強に行き詰まり、看護師になる自信をなくした看護学生・ナスカさん。解剖生理学の面白さを知るため、先生とネコの小太郎と一緒に身体を探る旅に出ることに・・・

 

増田敦子
了徳寺大学医学教育センター教授

 

旅に出るにはまず、行き先のことをよく調べてから行くわよね。だから、身体を探る旅も、ちょっと準備をしてから出かけましょうね

準備って?

心配いらないわ。ほんのちょっと、頭をやわらかくするだけ。ところで、ナスカさんは地球上に生命が誕生したのはいつ頃か、知っているかしら?

たしか、35~45億年前くらいって聞いた気がします

ずいぶん昔よね。その頃の地球って、どんな感じだったのかしら?

あちこちで火山が噴火したり、いろいろなガスが渦巻いたり、すごい世界だったって聞きました

そんな地球のどこから、生命が生まれたと思う?

それなら知っています。たしか、海から生まれたんですよね

じゃあ、生命はどうして、海から生まれたんだろう?

うーん、そういわれると、どうしてでしょうね

 

生命は海から生まれた

宇宙の始まりは、約140億年前に起こった大爆発(ビッグバン)だといわれています。そのビッグバンから100億年後、銀河系の片隅でガスとちりが星雲を作り、それが収縮を始めることで、原始太陽系が誕生しました。
収縮しながら自転運動を始めた星雲は、ちぎれ、飛び散って、惑星を形成し、惑星どうしが衝突を繰り返しながら太陽系が完成していきます。こうしてできた惑星の1つが、地球でした。
生まれたばかりの地球は、現在とは比べ物にならないくらい、荒々しい場所だったと想像されています。地中からガスが盛んに噴き出し、火山活動も激しく、水素や窒素、アンモニア、メタンなどのガスが渦巻いていました。
そんな荒々しい場所だった地球に豊富な生命が誕生したのは、そこに水があったからだ、といわれています。惑星どうしが衝突する際、惑星に含まれていた水と二酸化炭素は、蒸発して大気になりました。このままですと、大気は放出してしまうのですが、地球の場合は幸運にも惑星の衝突が減って地表の温度が下がったので、水蒸気が冷えて豪雨になって地表に降り注ぎました。雨はやがて海をつくり、そのなかから次々と、生命が誕生していったのです。

図1生まれたばかりの地球

生まれたばかりの地球

 

原始大気に似た環境を人工的につくり、ガスの混合物に雷のような放電を起すと、簡単なアミノ酸といった有機物をつくることができるそうです。原始地球では、こうしてできた有機物が水中でさまざまに反応して、生物がつくられていったと考えられています。水は多くの物質を溶かす溶媒ですから、物質どうしがくっついたり、離れたりするのに都合がよかったのでしょうね。

 

そうか、水は化学反応をしやすくするんだ

大きな分子を小さく分解したかったら、加水分解といって水の分子を加えればいいし、小さな分子を固めて大きな分子を作りたかったら、脱水縮合といって、水の分子を抜いてあげればいいの(図2)。水が命の源といわれる理由も、なんとなくわかるわね

図2水分子

水分子

コラムユーリー-ミラーの実験

生命誕生の起源を探る研究では、アメリカのシカゴ大学でノーベル化学賞を受賞したハロルド・ユーリー(HaroldUrey)の研究室に在籍していた大学院生スタンリー・ミラー(StanleyMiller)が1953年に行った実験が有名です(ユーリー-ミラーの実験)。ミラーは、原始地球の大気の成分と考えられる水素、アンモニア、メタンを図3のような実験装置に入れ、放電すると、有機物が合成されることを発見しました。

図3ユーリー-ミラーの実験

ユーリー- ミラーの実験

 

有機物は生命の材料になる物質ですが、生体の体内以外では作られません。ですから、原始地球に存在するはずのない物質なのですが、この実験により、落雷などでも合成される可能性があることがわかったのです。

私たちのからだも60%は水でできているっていうのも、何か関係があるんでしょうか

そうね。水分が多いのは、なにも人間にかぎったことではないの。トマトの90%は水分だし、リンゴは85%、魚は75%、クラゲにいたっては、なんと96%までが水分なんですって

96%も!

 

地球上に最初に誕生した生命は、おそらく、酸素が嫌いな嫌気(けんき)性細菌だったと考えられます。その頃、大気中に酸素はなく、オゾン層もありません。有害な紫外線が直接降り注ぐ地上は、生物にとって、とても危険な場所でした。ところがある日、どういうわけか、太陽光のエネルギーを利用し、水と二酸化炭素を使って酸素と糖質などの有機物を作り出す(光合成)生物が登場しました。後にシアノバクテリアとよばれるようになる藻類(そうるい)です(図4)。

図4シアノバクテリア

シアノバクテリア

シアノバクテリアは藍藻ともよばれる。水中に広く分布し、夏場に発生するアオコのなかにはシアノバクテリアが大量に発生した結果、引き起こされるものもある。現在、見つかっている最古の化石がシアノバクテリアの形に似ていることから、最古の光合成生物と考えられている。20~25億年前に大量発生し、大気に大量の酸素をもたらした

 

藻類が増えていくと、それに伴って地球環境は少しずつ、変化していきます。藻類が作り出した酸素が海水中にたまり、それが大気中にたまると、やがて紫外線をさえぎるオゾン層が形成されていきます。こうして生命を脅かす危険がなくなると、陸上でも少しずつ生命が誕生するようになりました(図5)。

図5生物の進化

生物の進化

シアノバクテリアが大量発生した先カンブリア時代を経て、カンブリア紀(5億4000万年前~4億8800万年前)には、動物門のほとんどすべてが出現し、動物の多様化した(カンブリア爆発)。やがて、古生代デボン紀(4億1600万年前~3億5900万年前)になると、多様な魚類が生まれる。そして、3億6000万年前に両生類が海から陸へ進出をはじめ、そして哺乳類へと進化してきた

 

陸に上がった生物たちは、乾燥から身を守るために、丈夫な皮膚をもつようになります。エラは不要になり、代わりに、肺を使って大気中から酸素を取り込み、二酸化炭素を吐き出すようになりました。そうして、たくさんのエネルギーを取り出すようになった生物たちは、エサを求めて自由に歩きまわり、いつしか丈夫な骨格と筋肉をもつようになりました。
厳しい環境変化のなかで、あるものは死に絶え、環境に適応した一部の生物が生き残り、私たちの祖先となりました。

 

本当に長い時間を経て、人間ができてきたんですね

そうよ。この身体の中には宇宙もあれば、海もある。そう考えると、なんだかワクワクしてこない?

します、します

 

〈次回〉

細胞ってなんだ(1)生物はすべて細胞からできている


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『解剖生理をおもしろく学ぶ 』 (編著)増田敦子/2015年1月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

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