ベテラン看護師の態度にモヤモヤ
「とあるベテラン看護師と険悪ムードでつらい…」というお悩み。あなたならどうする? [ 記事を読む ]
2019年11月28日
文:ヤンデル(病理医)
Twitterフォロワー数10万人超の医師・ヤンデル先生が『看護roo!』に開店したヒミツの本屋さん「ヤンデル書房」。本の虫のヤンデル店主が、看護師のみんなにおすすめの本を紹介してくれます。
いらっしゃいませ。お会計失礼します。
カバーお付けしますか? はい、承知しました。
商品こちらです。どうもありがとうございました。よろしければ、しおりを一つ選んでお持ち帰りください。
あ、こちらの本、気になります? そうですね、今朝ここに立てかけたばかりです。「今月のおすすめ」です。どうぞ、めくっていってください。
今月のおすすめがあるなんて、なんだかカフェみたい?
ええ、カフェっていうか、近くの居酒屋をヒントにしたんですけれどね。メニューとは別に、小さな黒板に「おすすめ」が書いてあるやつ、あるじゃないですか。あれを自分の本屋でもやりたいなと思って、はじめてみました。
今月のおすすめはこちらです。
『よくわかるがんの話② がんの治療と生活は?』(保育社)
この本ねえ、値段が高いんですよ。1冊3000円もする。だから、若い方にはおすすめしにくいんですけれど……あ、どうぞ、立ち読みしていただいていいですよ。
イラストが多くて、読みやすいでしょう? 小学生や中学生が読めるように書かれているんです。でも、大人が読んでも納得のクオリティです。ちょっと読んでみてください。
たとえば「緩和ケア」のところ。
「体の苦しみ、精神的な苦しみ、社会的な苦しみに加えて『霊的(哲学的)な苦しみ』にもケアが要る」ってことを、サラッと書いてある。
がんの痛みに悩まされている人がいるだろうことは、子どもでもなんとなく気がつきますし、それに対する本も多く出ています。
しかし、がんと診断されたこと自体に精神的にショックを受ける人がいることや、がんの医療費について悩んでいる人がいること、さらには「なぜ自分ががんにならなければいけなかったのか、自分の人生はいったいなんだったのか?」と悩む患者さんもいるのだということにまで踏み込んでくれる本はなかなかないです。
この本は子どもだましじゃないんです。かなり実践的で、具体的です。
ところどころに載っているコラムやがん患者さんへのインタビューに至っては、医療の専門家が読んでも、ほう……って感心するでしょう。
……ああ、なかなかいい表情をなさいますね、あなたは見たところお若いですが、
(私は小学生じゃないけど、この本、知らないことがけっこう載ってる……)
という顔をなさっています。
そうなんです。
私もね、こう見えて今までだいぶ医学書の類いを読んできましてね、今さらこんな子ども向けの本なんて並べなくてもいいかなあ、と思ってたんですけど、このシリーズはかなり勉強になります。
すごーくラクに読めるのに内容がかなり深い。
いい本です。だから、「今月のおすすめ」。
そうですね……この本は、がんに関して言えば、その辺で売ってる看護学生向けの教科書と比べても遜色ないです。たとえば看護学生とか若い看護師さんにとっては、教科書とか副読本にできるシリーズなんじゃないかな。そう考えると3000円は妥当ですね、安くはないですけど。
何より、こういう本を1冊持っていると、ご自身ががん患者さんを担当されたとき、その患者さんの気持ちになったり、何かを説明するために要点をわかりやすく勉強し直したりするのに便利です。
たとえば、「がんの先端医療はどうなっている?」の項目には、免疫チェックポイント阻害剤であるオプジーボのことがイラスト入りでわかりやすく解説されていますから、新しい治療を患者さんと一緒に理解する手助けになります。
また、若くしてがんにかかったある患者さんのインタビュー記事「がん患者さんのリアル」では、がんという大きな病気に直面した患者さんの気持ちが時系列に沿って、とても具体的に書かれていて、大変参考になりますよ。
質問ですか、はい、喜んで。
「なぜ、シリーズの②をおすすめしているのか?」
ああそうですね、やっぱり気づきますよね。おっしゃるとおりで、このシリーズは①と③もあるんです。でも、あえて②をおすすめしています。
このシリーズは看護師さんが読むなら、それも、どれか1冊買って読むなら②じゃないかな、と私が勝手に考えているんです。
①は「がんってどんな病気?」というタイトルで、いわゆるがんの総論とか、国立がん研究センターがホームページに載せているような情報が満載。
③は「がんは体のどこにできるの?」というタイトルでして、臓器ごとにがんの説明をしています。
この中から、看護師さんにまず1冊おすすめするなら、断然、②「がんの治療と生活は?」です。①③はどちらかというと医学的な知識が多く扱われているのですが、②は看護師さんが具体的に患者さんに寄り添うために必要な、ケアやサポートの部分が丁寧に書かれていますからね。
……ずいぶん、看護師の話ばかりしますね、って?
ここだけの話ですが、不思議なことがあるんです。
この店をかまえてしばらく経つんですけれども、なぜか、若い看護師さんばっかりやってくるんですよ。本当に不思議だなあ。北にA大学病院の看護寮、東にA総合病院の契約マンション、西にC看護学校の宿舎がありますけど、それと関係あるんですかねえ……まったく不思議だ。
あ、おすすめ本はときどき入れ替えますから。教科書ばっかり並べるつもりはないですよ。ときにちょっと驚く、ときに読んでおいてよかった、そういう本を、なるべく選んでおきますので。
お気軽にどうぞ。またお越しください。
1978年生まれ。2003年北海道大学医学部卒、国立がんセンター中央病院(現国立がん研究センター中央病院)、札幌厚生病院病理診断科。現在、同科医長。医学博士。病理専門医。著書に『症状を知り、病気を探る』(照林社)、『いち病理医の「リアル」』(丸善出版)、『病理医ヤンデルのおおまじめなひとりごと』(大和書房)など。Twitter、ブログ、noteなどで発信中。良い本を人におすすめするのが大好き。
■著者:林 和彦
■発行:保育社(2019/09/27)
■判型:A5判、79ページ
■定価:3,300円(本体3,000円+税)
■ISBN-10: 4586086106
■ISBN-13: 978-4586086108
編集/烏美紀子(看護roo!編集部)
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2ぷちひろ2019年11月28日 10時04分
専門書ってベストセラーとかオススメってあまり世に広がってない気がするのでこのコラムめっちゃよかったです!次も楽しみです!
そして若い看護師が多いのは絶対立地のせいだよね(笑)
1名無し2019年11月28日 09時25分
更新楽しみです!
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