1. 看護roo!>
  2. ステキナース研究所>
  3. ホスピスで働く音楽療法士・佐藤由美子>
  4. 乳がんにも効果が? 注目される“音楽療法”とサウンドヒーリングの違い

2017年05月12日

乳がんにも効果が? 注目される“音楽療法”とサウンドヒーリングの違い

 

音楽のあるホスピスから

Vol.8 音楽療法の研究が進む

 

2017年3月半ば、乳がんで闘病中の小林麻央さんがブログを更新しました。その記事で紹介された「528Hzの音楽を流す」という治療法が話題になっています。

 

「今日はあたたかいので色々めくって笑 広範囲の肌から吸収!」と春到来を思わせる日差しを楽しんだ様子。「528Hzの音楽を流しながら 細胞を修復する周波数だそうです。いろいろなお力を借りて、今日も、幸せに」と音楽療法に取り組んでいた。

(サンスポ 3月12日)

 

この記事では、一定の周波数で音楽を流すことが音楽療法のように紹介されていますが、実はこれは「音楽療法」ではなく、「サウンドヒーリング(サウンドセラピー)」の領域です。

 

サウンドヒーリングと音楽療法は「音」や「音楽」を扱うという点で共通していますが、両者は全く異なるものです。その大きな違いは何でしょうか?

 

 

“信頼ありき”の音楽療法

サウンドセラピーは、音そのものが癒しをもたらすと考えるアプローチ。一方で音楽療法は、セラピストとクライアント(対象者)との治療関係の中で音楽を使う方法です。

 

多くのセラピーがそうであるように、音楽療法において最も大切なのは、セラピストとクライアントの信頼関係(Rapport)です。音楽が患者さんを直接「癒す」のではなく、むしろ音楽を用いることで、患者さんが回復に向かうような「環境」をつくります。

 

例えば、最近「◯◯を聴けば◯◯になる」というCDブックが数多く発売されていますが、これらは音楽療法ではなくサウンドヒーリングに近いアプローチと言えるでしょう。

 

どちらが良いということではなく、患者さんが自分に合ったものを選べるように、セラピーの違いや共通点を明確にすることがポイントだと思います。

 

 

日本で年々増加する音楽療法士

私は米国認定音楽療法士として、長年ホスピスや緩和ケアで活動してきました。今日は、私の専門分野である音楽療法の特徴をご紹介したいと思います。

 

まず初めに、音楽療法は第ニ次世界大戦中に欧米ではじまった学問です。

 

音楽療法はトレーニングを積んだ音楽療法士によって行われるもので、国内にも日本音楽療法学会認定音楽療法士が2,700人ほどいます。まだまだ認知度が高いとは言えませんが、医療・介護・福祉など、さまざまな現場で働く音楽療法士が年々増えてきています。

 

乳がんや早産児の成長に効果アリ

音楽療法はエビデンスに基づく臨床診療で、近年急激に研究が進んでいる分野です。世界各国でさまざまな研究結果が発表されていますので、そのいくつかをご紹介します。

 

【乳がん】

2012年から2014年にかけてアメリカのオハイオ州にある病院で行われた研究で、音楽療法が乳がんの女性の術前不安を軽減することがわかりました。これは207人の乳がん患者を対象としたランダム化比較試験で、術前の不安、麻酔要求量、回復時間、患者の満足度などを2年間にわたって調べたものです。

 

 

【慢性閉塞性肺疾患(COPD)】

2015年に、音楽療法がCOPDの治療に効果的であることがわかりました。これはニューヨーク市の病院で行われた研究で、COPDの患者さん98人を対象としたランダム化比較試験を行ったものです。6週間に渡る試験において、ランダムで選ばれたグループは週に1回、認定音楽療法士のもとで音楽療法のセッションを受けました。その結果、うつ状態と呼吸困難が改善したという結果が出ています。

 

【早産で生まれた新生児】

2016年、音楽療法には早産で生まれた新生児の呼吸数を安定させる効果があるという新たなレビュー結果が報告されました。これは1,000人ほどの早産児を対象とする14件の臨床試験の結果を調べたものです。それぞれ音楽療法の手法などは異なっていたものの、ほとんどの場合NICU(新生児特定集中治療室)で母親が新生児に歌を聞かせることが含まれており、すべてのケースにおいて認定音楽療法士が関わっていました。

 

 

これらの研究結果が示すように、音楽療法にはさまざまな利用法があり、その効果が期待されています。必ずしもすべての人に音楽療法が必要とは限りませんが、正しい知識が広まることで多くの人が音楽療法を受けられるようになることを願っています。


(参考):
Effects of Music Therapy on Anesthesia Requirements and Anxiety in Women Undergoing Ambulatory Breast Surgery for Cancer Diagnosis and Treatment: A Randomized Controlled Trial.(PubMed)

 

Music Therapy Helps Preemie Babies Thrive(Health Day)

 

AIR: Advances in Respiration - Music therapy in the treatment of chronic pulmonary disease.(PubMed)

 

【佐藤由美子】

ホスピス緩和ケアを専門とする米国認定音楽療法士。バージニア州立ラッドフォード大学大学院音楽科を卒業後、オハイオ州シンシナティのホスピスで10年間音楽療法を実践。2013年に帰国。帰国後は青森県在住。15年からは青森慈恵会病院の緩和ケア病棟で音楽療法士として働いている。著書に『ラスト・ソング』(ポプラ社)、『死に逝く人は何を想うのか』(ポプラ社)がある。ハフィントンポスト(日本版)でBlog「佐藤由美子の音楽療法日記」を掲載中。

この連載

  • Vol.8 乳がんにも効果が? 注目される“音楽療法”とサウンドヒーリングの違い [05/12up]

      音楽のあるホスピスから Vol.8 音楽療法の研究が進む   2017年3月半ば、乳がんで闘病中の小林麻央さんがブログを更新しました。その記事で紹介された「528Hzの音楽を流す」という治療法が話題になっ...

  • Vol.7 音楽回想法で安らかな最期を―死に逝く人に起こる「回想」とは? [02/07up]

    ホスピス緩和ケアを専門とする音楽療法士・佐藤由美子さんのコラム第7回。今回は、音楽を用いて回想をサポートする「音楽回想法」についてお届けします。   音楽のあるホスピスから Vol.7 死と向き合う患者を音楽でサポ... [ 記事を読む ]

  • Vol.6 医療スタッフにも音楽療法を―良いケアを実践するためのセルフケア [10/07up]

    音楽のあるホスピスから Vol.6 働く側をケアすることの大切さ 【佐藤由美子】 ホスピス緩和ケアを専門とする米国認定音楽療法士。15年からは青森慈恵会病院の緩和ケア病棟で音楽療法士として働いている。 ... [ 記事を読む ]

  • Vol.5 音楽療法は誰をサポートするものなのか [06/03up]

    音楽のあるホスピスから Vol.5 音楽療法の対象となるのは誰? 音楽療法というと、老人ホームやデイサービスで、高齢者を対象にしたものを思い浮かべる人が多いと思います。   しかし実際には、音楽療法はあらゆる... [ 記事を読む ]

  • Vol.4 ホスピスと緩和ケアの違いと共通点 [04/27up]

    音楽のあるホスピスから Vol.4 「ケア」の意味を考える 私は2002年からアメリカのホスピスで音楽療法士として活動し、2013年に帰国して以来、国内の緩和ケア病棟や在宅で患者さんを看ています。   講演な... [ 記事を読む ]

もっと見る

コメントを投稿する

コメント入力
(100文字以内)
ニックネーム
(12文字以内)

コメント一覧(0)

関連記事

いちおし記事

「ぼくねぇ、もうすぐ死ぬんだ…」にどう答える?

マンガ『おうちで死にたい~訪問看護の現場から~』の続編です。 [ 記事を読む ]

褥瘡の悪化を防ぐのに最適なポジショニングは?

褥瘡発生原因のアセスメントから「動きの過程」と「座位の保持」を評価した上でどのようなポジショニングがベストかを解説します。 [ 記事を読む ]

人気トピック

もっと見る

看護師みんなのアンケート

上司に怒りを感じるのはどんなとき?

投票数:
1484
実施期間:
2017年10月31日 2017年11月21日

なかなか寝られないとき、どうしてる?

投票数:
603
実施期間:
2017年11月03日 2017年11月24日

看護師国家試験、苦手科目は?

投票数:
765
実施期間:
2017年11月07日 2017年11月28日

一番好きな医療ドラマはどれ?

投票数:
525
実施期間:
2017年11月10日 2017年12月01日

J-アラート作動(弾道ミサイル発射)!どうする?

投票数:
387
実施期間:
2017年11月14日 2017年12月05日

「こんなドクターいたらいいな…」一緒に働いてみたい俳優は?

投票数:
193
実施期間:
2017年11月17日 2017年12月08日
もっと見る

今日の看護クイズ 挑戦者266

78歳女性、持続する発熱と下腹部から臀部回りの痛みを訴え、老健施設より救急搬送にて来院しました。肋骨脊柱角叩打痛もあり、尿路感染症の診断で入院となりました。尿の培養は104CFU/mLであり、検鏡にてブドウ球菌様のGPCが認められ、3日後にブドウ球菌と確定しました。当初から抗菌薬としてVCMが開始とされていました。1週間以上抗菌薬を投与してもなかなか発熱も痛みも治まらず、腹部CTを撮影したところ、腸腰筋膿瘍であることが判明し、血液培養からはMRSAが検出され、臓器移行性も考えて抗菌薬をLZDに変更されました。解熱と炎症所見の改善がありましたが、投与2週間目に白血球と血小板が減少、また貧血傾向になりました。次のうち最も考えられることと行うべきことはどれでしょうか?

  • 1.白血球や血小板減少は、抗菌薬による骨髄抑制が原因と考えられるため、再度、VCMに変更するなど、他剤へ変更することを検討する。
  • 2.貧血傾向は、抗菌薬投与による腎機能障害から来る、腎性貧血であるため、医師と相談し、腎性貧血の治療を実施してもらう。
  • 3.LZDは臓器移行性が最も良いため、白血球減少や血小板減少、貧血に対し治療を行いながら使い続ける。
  • 4.解熱と炎症所見も改善していることから、抗菌薬を中止とし経過を見る。
今日のクイズに挑戦!