乾皮症、乾燥性皮膚炎|湿疹、皮膚炎⑥

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は乾皮症、乾燥性皮膚炎について解説します。

 

白濱茂穂
聖隷三方原病院皮膚科部長

 

 

Minimum Essentials

1皮膚の水分量が低下し、乾燥した状態が乾皮症である。かゆみなど炎症が加わった状態を乾燥性皮膚炎とよぶ。

2皮膚は潤いを失い、粉をふいたような状態になる。さらに搔破により湿疹病変が形成される。

3乾燥には保湿薬、搔破による湿疹病変には適切なステロイド外用剤を塗布する。抗ヒスタミン薬抗アレルギー薬の内服も必要な場合がある。

4年齢的な変化が大きいので、通年にわたり注意が必要である。入浴・シャワー中の洗い過ぎをやめることで、症状が軽快する場合がある。

 

乾皮症、乾燥性皮膚炎とは

定義・概念

皮膚の水分量が低下し、皮膚が乾燥した状態が乾皮症である。乾燥肌は過敏な状態になっているのでかゆみが生じやすく、それを搔破することにより乾燥性皮膚炎が生じる。

 

原因・病態

中高齢者では、年齢的に皮膚の脂が少なくなりカサカサの肌になる。冬季は季節的に皮膚の乾燥が強くなり、さらに暖房がそれに拍車をかける。洗い過ぎなどの入浴習慣も皮膚を乾燥させる。

 

 

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診断へのアプローチ

臨床症状・臨床所見

皮膚は乾燥し、粉をふいたような状態(落屑[らくせつ])が目立つ。搔破行為により、傷ついた部位に湿疹病変が生じる。下腿伸側や背中にしばしばみられる(図1図2)。

 

図1 乾燥性皮膚炎(下腿部)

乾燥性皮膚炎(下腿部)

 

図2 乾燥性皮膚炎(背部)

乾燥性皮膚炎(背部)

 

冬になると増悪しやすい。体がほてるような状況(過度の暖房、長湯など)ではかゆみがさらに増強する。

 

検査

全身疾患に伴ってかゆみを生じる場合もあるため、それらを除外するための検査は必要である。

 

 

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治療ならびに看護の役割

治療

おもな治療法

かゆみや炎症を伴う乾燥性皮膚炎では、乾燥に対しては保湿薬、皮膚炎の病変部には適切なステロイド外用剤を塗布する。かゆみの強い場合には抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬の内服も併用する。乾燥を助長する生活環境の是正、生活習慣の検証が必要となる。また、入浴後には保湿薬を外用する。

 

合併症とその治療法

加齢、搔破、ステロイド外用剤などの影響で皮膚が脆弱となる。老人性紫斑、些細な外傷による皮膚剝脱が生じた場合は皮膚の保護を行う必要がある。

 

治療経過・期間の見通しと予後

加齢によるものでは、年齢とともに症状が強くなる。そのため、通年性にスキンケアが必要となる。

 

看護の役割

治療における看護

・ 年齢的な変化、生活習慣、季節的な影響が主たる原因であるため、よく理解できるまで説明する。
・ 冬は乾燥するため、加湿器を使って室内の湿度を保つ。ぬるめのお湯に適度につかり、刺激の少ない石鹸でやさしく洗う。ナイロンたわしやブラシは使わない。硫黄の入った入浴剤は乾燥を悪化させるので使用しない。
・ 高齢になればなるほど、合併症のためさまざまな内服薬を飲んでいる場合がある。皮膚のかゆみを内臓的な疾患や内服薬のせいだと思い込んでいることがあるので、それらの因果関係を医師とよく相談し、患者に説明する。場合によっては、家族の理解や協力も必要となる。

 

 

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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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