【新型コロナウイルス】看護師のためのQ&A~予防・検査・患者さんへの対応は?

 

看護師にとってひとごとではない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。どのような予防対策が必要なのでしょうか。感染症専門医が解説します。

※2020年5月11日時点の情報に基づいています。

 

 

 

浜松医療センター 
院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長
矢野邦夫

 

 

どんな感染予防対策が効果的ですか? 

 

最も大切な対策は「手指衛生」です。

 

新型コロナウイルスには、標準予防策(スタンダードプリコーションに加えて、飛沫予防策接触予防策を併用することが推奨されています。たとえ手指にウイルスが付着したとしても、手指衛生をしっかりすれば、感染を防ぐことができます。

 

患者さんや、患者さんの周囲環境、手指の高頻度接触表面(ドアノブなど)に直接触れた後は、必ず手指衛生を徹底しましょう

 

患者さんを直接ケアするときには、サージカルマスクを着用します。突然のなどに備えて、アイシールドやゴーグルを利用することも重要です。

 

また、装着中のマスクに触れると、その手指がウイルスで汚染する可能性があるので注意してください。

 

 

 

事前連絡なしで疑いのある患者さんが来ちゃったら、どうしたらいいですか?隔離したほうがいい?

 

疑いがあるだけでは、最初から隔離はできません。まずは患者さんに咳エチケットを行ってもらい、医療従事者は標準予防策で対応します。

 

「事前の連絡なしに疑いのある患者さんが来た」といっても、その患者さんが新型コロナウイルスの感染者だと確定しているわけではありません。まったく別の感染症の場合もあります。そういった患者さんを最初から隔離することはできません

 

この場合、患者さんには咳エチケット、つまり「サージカルマスクを着用して、咳をするときには口と鼻を押さえる」を行ってもらいましょう。さらに「手指衛生」も行ってもらいます。

 

医療従事者はサージカルマスクを着用し、やはり手指衛生を行います。

 

そのうえで、病状や現病歴、感染者との曝露歴などから、新型コロナウイルスに感染している可能性が強く疑われるときは、隔離して検査する必要があります。

 

また、新型コロナウイルスの感染者が、ほかの呼吸器疾患を合併することもあります。その場合、咳などの症状が強くなり、周囲にウイルスを拡散しやすいので、特に注意が必要です。

 

 

 

外来を受診した患者さんが後日、新型コロナウイルスに感染していたことがわかりました。勤務していた看護師は、どこまでが「濃厚接触者」になる?

 

適切な個人防護具を着用せずに対応していれば濃厚接触者となります。

 

国立感染症研究所では濃厚接触者について下記のように定義しています。

 

「患者(確定例)」の感染可能期間※1に接触した者のうち、次の範囲に該当する者

 

  • 患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者
  • 適切な感染防護なしに患者(確定例)を診察、看護もしくは介護していた者
  • 患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者
  • その他: 手で触れることのできる距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と15分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する)


※1 感染可能期間:発熱および咳・呼吸困難などの急性の呼吸器症状を含めた新型コロナウイルス感染症を疑う症状を呈した2日前から隔離開始までの間
 

 

外来受診した患者さんが、後日、新型コロナウイルスに感染していたことがわかった場合、そのときに診察や看護にあたった医療者が適切な個人防護具を着用していなければ濃厚接触となります。

 

例えば、患者さんの採血時に手袋をしていなければ濃厚接触者になります。一方、ウイルス検査のために患者さんの咽頭から検体採取していてもマスクやゴーグルを着用していれば、濃厚接触者になりません

 

なお、案内しただけで、患者さんに触れていなければ、個人防護具を着用している・いないに関わらず、濃厚接触にはあたりません。

 

濃厚接触者になった場合は、発熱や風邪症状に注意を払いましょう。

 

発熱や風邪症状が発生した場合は、上司に報告し、院内の専門医に相談します。もし、倦怠感や呼吸困難感があらわれたら、上司・院内の専門医に報告の上、帰国者・接触者相談センターに連絡します。その後、必要に応じて、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2※2)の検査をすることになります。

 

症状が出ていない場合は通常勤務が可能ですが、潜伏期間の最大日数である14日間は症状の有無に気をつけておく必要があります。
そして、症状が出てきた場合には上司に報告し、院内の専門医に相談するか、専門医が院内にいない場合は「帰国者・接触者相談センター」に連絡しましょう。


※2 新型コロナウイルス感染症は、病名の正式名称を「COVID-19」、原因ウイルスを「SARS-CoV-2」といいます。

 

 

 

特に注意が必要な患者さんは?

 

呼吸器や循環器などの基礎疾患がある患者さん、高齢者、人工呼吸器などで呼吸管理中の患者さんには特に注意が必要です。

 

特に注意が必要な患者さんは、「重症化しやすい患者さん」「ウイルスを周辺に拡散する患者さん」です。

 

重症化しやすいのは、呼吸器系や循環器系などの基礎疾患のある患者さんや高齢者です。このような人々は感染すると重症化して死亡するリスクが高いです。

 

 

ウイルスを周辺に拡散する患者さんは、挿管して人工呼吸器を着用される患者さんやネブライザーを使用している患者さんなどです。このような患者さんがいる病室では新型コロナウイルスを含んだエアロゾル※3が空気中に浮遊するからです。そういった病室に立ち入ると病原体を吸い込んでしまうので、空気予防策4が必要となります。

 

また、抵抗力が低下している患者さん(透析患者さんなど)が感染すると、体内で病原体が著しく増加して、周囲に感染させやすくなる可能性があります。

 

※3 エアロゾル:気体中に浮遊している微小な液体または固体の粒子。

※4 空気予防策:十分な換気と陰圧を保てる個室で飛沫核を室外に出さないよう管理し、医療従事者は標準予防策およびN95マスクを着用します。室内の患者さんには、可能であればサージカルマスクを着用してもらいます。

 

 

 

新型コロナウイルスってどうやって診断するんですか?

 

患者さんの鼻咽頭スワブを使って検査して診断します。なお、3月6日から公的保険が適用され、検査体制が拡大されました。

 

患者さんの 鼻咽頭のスワブを検査材料にして、核酸増幅法(PCR法など)を用いて新型コロナウイルスの感染を診断します。

 

また、インフルエンザや市中肺炎のような他の疾患を鑑別したり、感染症の状況を把握するために、胸部X線検査やCT検査なども必要となります。

 

なお、PCR検査は3月6日より公的医療保険が適用になりました。
これにより、医師が「検査が必要」と判断した場合、民間の検査会社や特定の医療機関で直接検査できるようになります。
これまでPCR検査は保健所を介して、地方衛生研究所や国立感染症研究所に依頼されていましたが、より多くの検査依頼に対応できる体制に変わります。

 

なお、誰でも検査を受けられるわけではありません。厚労省の「受診の目安」(※)を満たし、「帰国者・接触者相談センター」に電話した上で専門外来を受診した人に対して、医師が検査の必要性を判断します(なお、この「受診の目安」は5月8日より変更となりました)。

 

 

厚生労働省が定める受診の目安(2020年5月8日より)

・息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状のいずれかがある場合
・重症化しやすい方で、発熱や咳などの比較的軽い風邪の症状がある場合
・上記以外の方で発熱や咳など比較的軽い風邪の症状が続く場合
(症状が4日以上続く場合・強い症状と思う場合は必ず相談する。解熱剤などを飲み続けなければならない方も同様)

 

※高齢者、糖尿病、心不全、呼吸器疾患(COPD 等)等の基礎疾患がある方や透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている方

 

患者さん本人の希望で検査ができないという点は、以前と変わりません。検査は専門外来やPCRセンターなどで実施されています。

 

 

 

有効な治療法はありますか?

 

現時点(4/24現在)では対症療法しかありません。

 

現在、レムデシビル(ベクルリー®点滴静注液)が治療薬として承認されたほか、ファビピラビル(アビガン®)の内服薬やシクレソニド(オルベスコ®)の吸入薬などが治療に有効かどうかの研究が行われていますが、現時点では対症療法が基本となっています。
肺炎が悪化し、呼吸状態が悪くなれば酸素投与が必要となります。
さらに、重症となれば挿管して人工呼吸器も実施することになります。また、電解質異常がみられれば、それを補正する必要があります。

 

患者さんの苦痛を取り除くことと、生命を維持することによって、回復を待つことになります。

 

 

 

 

SNSなどでもいろいろな情報が出ていますが、どういうサイトをチェックしておけばいいですか?

 

国内のサイトなら、(1)厚生労働省、(2)国立感染症研究所、(3)日本医師会、(4)東京都感染症情報センターがおすすめです。

 

SNSやネットでは、新型コロナウイルスに関するさまざまな情報を見ることができますが、誤った情報や煽るような情報を参考にするのは適切ではありません。医療従事者として適切な判断をするために、正しい情報を確認しましょう

 

国内であれば、次のようなサイトが正しい情報がまとまっていて、おすすめです。

 

 

海外のサイトは(5)WHOと(6)CDCが良いでしょう。

 

 

 


著者紹介

矢野邦夫(やのくにお)
浜松医療センター 院長補佐兼感染症内科部長兼衛生管理室長
医学博士。インフェクションコントロールドクター。感染症専門医・指導医。抗菌化学療法指導医・認定医。日本エイズ学会指導医・認定医。血液専門医。日本輸血・細胞治療学会専門医。日本内科学会指導医・認定医。日本感染症学会・日本環境感染学会評議員。日本医師会認定産業医

 

 

看護roo!編集部 林 美紀/烏美紀子(@karasumikiko

 

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