肥大型心筋症(HCM)

『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』より転載。
今回は肥大型心筋症(HCM)について解説します。

小野木晃
新東京病院看護部

 

〈目次〉

 

肥大型心筋症(HCM)はどんな疾患?

肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy;HCM)とは、高血圧や大動脈弁狭窄症といった原因がなく、心筋に異常な肥大をきたす疾患です。

原因は、常染色体優性遺伝形式をとる家族内発症が約半数にみられます。

肥大型心筋症は通常、心室中隔の非対称性肥大ASH)であることが多く、それによって二次的にもたらされた循環動態の異常が基本的な病態となります(図1)。

図1肥大型心筋症の病態

肥大型心筋症の病態

 

どうやって分類するの?

肥大型心筋症は、
閉塞性肥大型心筋症
(hypertrophic obstructive cardiomyopathy;HOCM
非閉塞性肥大型心筋症
(hypertrophic nonobstructive cardiomyopathy;HNCM
心尖部肥大型心筋症
(apical hypertrophic cardiomyopathy;APH
拡張相肥大型心筋症
(dilated phase hypertrophic cardiomyopathy;D-HCM
に分類されます(図2)。

閉塞性肥大型心筋症(HOCM)は、肥大型心筋症全体の約25%とされています。

図2肥大型心筋症の分類(心室の形による)

大型心筋症の分類(心室の形による)

 

患者さんはどんな状態?

非閉塞性肥大型心筋症や心尖部肥大型心筋症では自覚症状を伴わないことが多く、閉塞性肥大型心筋症、拡張相肥大型心筋症では胸部症状・症状を自覚することがあります(表1)。

表1肥大型心筋症のおもな症状

肥大型心筋症のおもな症状

 

どんな検査をして診断する?

最も有用な検査は、①心エコーなどの画像診断による所見です(表2)。①の検査結果に加え、②高血圧性心疾患などとの鑑別診断を行うことが必須です。また、③心筋生検による所見、④家族性発生の確認、⑤遺伝子診断が確定診断に有用です。

表2肥大型心筋症に特徴的な検査所見

肥大型心筋症に特徴的な検査所見

★1 心胸比(CTR)
★2  左室造影検査(LVG)
★3  冠動脈造影検査(CAG)
★4  肺動脈楔入圧(PAWP)の異常
※1 錯綜配列

 

どんな治療を行う?

薬物療法の目的は、
生命予後の改善
症状の軽減
合併症の予防
となります。症状の有無やその程度、左室流出路狭窄の有無によって適切な治療法の選択が必要となります(図3表3)。

図3肥大型心筋症の治療フローチャート

肥大型心筋症の治療フローチャート

日本循環器学会:肥大型心筋症の診療に関するガイドライン(2012年改訂版).(2018年12月閲覧)より転載

 

表3肥大型心筋症のおもな治療

肥大型心筋症のおもな治療

★1 僧帽弁置換術
★2 ICD
★3 CRT、CRT-D
★4 経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)

 

閉塞性肥大型心筋症(HOCM)の非薬物療法には、
外科治療
DDDペースメーカ
経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)
があります。


[memo]
  • ※1 錯綜配列(上へ戻る
    心筋細胞の配列が、通常とは異なり乱れていること。

文献


本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社

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