小児の抜管時に用意するものは?

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。

 

今回は「抜管時に用意するもの」に関するQ&Aです。

 

三浦規雅
東京都立小児総合医療センターPICU主任

 

抜管時に用意するものは?

 

抜管時には、再挿管に要する物品(気道確保補助物品、酸素投与物品、換気補助物品など)を準備します。「SOAP」で確認するとよいでしょう。

 

〈目次〉

 

小児における抜管の準備

抜管後は、さまざまな原因により再挿管が必要となる可能性がある。

 

特に、上気道の問題により再挿管を要する場合には、迅速な判断と対応が求められる。蘇生事象に至る可能性も考慮し、救急カートを準備しておくことが望ましい。

 

抜管時に準備しておく物品は、気道確保補助物品・酸素投与物品・換気補助物品すなわち再挿管に要する物品である。

 

準備する物品は、「SOAP」で確認するとよい。「SOAP」とは、Suction(吸引)、Oxygen(酸素)、Apparatus(器具)、Pharmacy(薬剤)の頭文字をとったものである(表1

 

表1SOAPの内容

 

S 気管吸引カテーテル口腔吸引カテーテル、吸引装置
O 酸素供給源(手動式換気用、人工呼吸器用)
A 気管チューブ(適合サイズと0.5mm細いサイズ)、喉頭鏡、スタイレット、マギール鉗子(経挿管時)、リドカインスプレー、ゼリー(経鼻挿管時)、バイトブロック、チューブ固定テープ、経口エアウェイ、手動式換気バッグ、マスク、人工呼吸器
P 鎮静薬、鎮痛薬、筋弛緩薬

谷昌憲他:小児呼吸不全患者の管理.急性・重症患者ケア2012;1:214.より一部改変のうえ転載

 

気道確保補助物品(図1

図1気道確保補助物品

 

 

経口エアウェイ、経鼻エアウェイが用いられる。

 

不適切なサイズのエアウェイを選択してしまうと気道閉塞を招くため、あらかじめサイズを確認しておく。

 

酸素投与物品(図2

図2酸素投与物品

 

 

 

乳児ではヘッドボックス、幼児以降は単純フェイスマスクが用いられる。鼻カニューラは、乳幼児ともに用いられる。

 

2歳以下の小児に対する経鼻酸素流量と吸入気酸素濃度を表2に示す。

 

表22歳以下の小児に対する経鼻酸素流量と吸入気酸素濃度

 

志馬信朗,橋本悟,問田千晶:小児ICUマニュアル 改訂第6版.永井書店,大阪,2012:79.より引用

 

換気補助物品(図3

図3換気補助物品

 

手動式換気バッグとマスクが用いられる。

 

手動式換気バッグには、自己膨張式バッグ(バッグバルブマスク)と流量膨張式バッグ(ジャクソンリース回路)がある。

 

流量膨張式バッグは、使用に習熟する必要があり、酸素源がなければ使用できないが、以下のような利点があることから、重症の乳幼児ではより有用である。

 

  1. 確実に100%酸素投与できること
  2. 自発呼吸回数が多い小児に対して十分な流速で酸素投与しやすいこと
  3. PEEP(呼気終末陽圧)をかけながらの呼吸補助ができること
  4. 高い吸気圧で加圧できること
  5. 肺のコンプライアンスが推測できること

 


[文献]

  • (1)日本集中治療医学会ICU機能評価委員会:人工呼吸関連肺炎予防バンドル2010改訂版.http://www.jsicm.org/pdf/2010VAP.pdf(2014年11月18日閲覧)
  • (2)中川聡:小児の人工呼吸からのウィーニング.ICUとCCU2005;30:11-15
  • (3)谷昌憲他:小児呼吸不全患者の管理.急性・重症患者ケア2012;1:214.
  • (4)宮坂勝之訳編:日本版PALSスタディガイド.エルゼビア・ジャパン,東京,2008:120-121.
  • (5)志馬信朗,橋本悟,問田千晶:小児ICUマニュアル改訂第6版.永井書店,大阪,2012:79.
  • (6)木原秀樹:呼吸理学療法.救急・集中治療2010;22:339.
  • (7)久保実:低血糖小児科臨床2000;53:2217-2223.
  • (8)Lucas da Silva PS, de Carvalho WB. Unplanned extubation in pediatric critically ill patients: a systematic review and best practice recommendations. Pediatr Crit Care Med 2010; 11: 287-294.
  • (9)六車崇:人工呼吸器からのウィーニング.救急・集中治療2010;22:411-416.
  • (10)植田育也編:小児の呼吸管理Q&A.救急・集中治療2010;22:297-305.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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