なぜ、人工呼吸管理中に栄養管理を行うの?

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。

 

今回は「人工呼吸管理中の栄養管理」に関するQ&Aです。

 

清水孝宏
那覇市立病院看護部看護師長

 

なぜ、人工呼吸管理中に栄養管理を行うの?

 

生命を維持するためには、酸素や水、そして栄養の補給が必須です。これは、人工呼吸管理中でも同様です。

 

〈目次〉

 

人工呼吸中の栄養管理

人工呼吸器を装着している状況でも、ヒトは生命を維持するために酸素や水、そして栄養を必要とする。

 

生命維持に必要なエネルギー量

1健常者の場合

特に活動していない状態でも、呼吸・循環・体温維持や調節などで消費されるエネルギーが存在する。これをBMR(基礎代謝率)という。

 

健常者のBMRを推定式で算出する方法にHarris-Benedict(ハリスベネディクト)の式が用いられる(表1)。この式に則って、60歳男性、身長160㎝、体重60㎏を計算すると1285kcal/日の基礎エネルギー消費量が算出される。

 

表1Harris-Benedictの式

 

Harris-Benedictの式

BEE(基礎代謝量)(kcal/日)

 

  • 男性:66.47+[13.75×体重(kg)]+[5.0×身長(㎝)]−[6.76×年齢(年)]
  • 女性:655.1+[9.56×体重(kg)]+[1.85×身長(㎝)]−[4.68×年齢(年)]

 

1日の必要エネルギー量(kcal/日)

 

  • BEE×活動係数×傷害係数

 

活動因子 活動係数
寝たきり(意識低下状態) 1.0
寝たきり(覚醒状態) 1.1
ベッド上安静 1.2
ベッド外活動 1.3~1.4
一般職業従事者 1.5~1.7

 

傷害因子 傷害係数
飢餓状態 0.6~0.9
術後(合併症なし) 1.0
小手術 1.2
中等度手術 1.2~1.4
大手術 1.3~1.5
発熱(1℃ごと) +0.1

 

この基礎エネルギー消費量分のエネルギーを外から取り入れなければ、自身のからだをエネルギー素材として消費していくことになる。

 

外から栄養補給が行われなければ、24時間以内に肝臓で蓄えられていたグリコーゲンは枯渇し、次いで脂肪がエネルギーとして消費されていく。さらにエネルギーの供給がなければ骨格筋や内臓にあるタンパクが消費されていく。このような状態が進むと免疫力低下や創傷治癒遅延、臓器障害へと進行していく。

 

体内の脂肪を除いた体重をLBM(除脂肪体重)という。LBMが70%を下回ると窒素死(nitorogen death/ナイトロジェンデス)という状態になり、死に至るとされている(図1)。

 

図1LBMの減少と窒素死(nitorogen death)

 

2急性期患者の場合

Harris-Benedictの式で算出したBMRは健常者を対象としている。人工呼吸管理中の急性期の患者は、何かしらの侵襲により代謝はさらに亢進している。この代謝の亢進は体内の脂肪組織や骨格筋、内臓タンパクから作られたエネルギーが使われている。

 

そのため、侵襲によりダメージを受けた体が元の状態に向かうための準備として適切な栄養管理を行わなければならない。

 

略語

 

  • BMR(basal metabolic rate):基礎代謝率
  • LBM(lean body mass):除脂肪体重
  • BEE(basal energy expenditure):基礎代謝量

[文献]

  • (1)飯干泰彦,岡田正:腸粘膜萎縮の病態とその対策静脈栄養時にみられる腸粘膜の形態学的変化.JJPN1995;17:459-462.
  • (2)氏家良人,海塚安郎,佐藤格夫,他:急性呼吸不全による人工呼吸患者の栄養管理ガイドライン2011年版.人工呼吸 2012;29:75-120.
  • (3)McClave SA, Martindale RG, Vanek VW, et al. Guidelines for the Provision and Assessment of Nutrition Support Therapy in the Adult Critically Ill Patient: Society of Critical Care Medicine (SCCM)and AmericanSociety for Parenteral and Enteral Nutrition(ASPEN). JPEN 2009; 33: 277- 316.
  • (4)Clinical Evaluation Research Unit:Practice Guideline 2013, http://www.criticalcarenutrition.com(2014年11月18日閲覧).
  • (5)Singer P, Berger MM, van den Berghe G, et al. ESPEN Guidelines on Parenteral Nutrition: intensive care. Clin Nutr 2009:28:387-400.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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