心室頻拍と心室細動|幅広QRS波の心電図(2)

看護師のための心電図の解説書『モニター心電図なんて恐くない』より。

 

[前回の内容]

心室性期外収縮|幅広QRS波の心電図(1)

 

今回は、心室頻拍と心室細動について解説します。

 

田中喜美夫
田中循環器内科クリニック院長

 

〈目次〉

 

心室頻拍とは

図1の心電図はいかがでしょうか。

 

図1心室頻拍の心電図

心室頻拍の心電図

 

1拍目、2拍目のQRS波は幅が広くなっていて、先行する心房興奮、すなわちP波がありませんので心室性期外収縮です。さらに、2つは形が違いますので、多源性の心室性期外収縮です。その後も心室性期外収縮が頻発して、ついには幅広QRS波のオンパレードになってしまいます。よ~く目に焼き付けておきましょう。

 

これが心室頻拍(ventricular tachycardia:VT)です。“頻拍”の“頻”は心電図の世界では、心拍数100回/分以上をさします。ですから、100回/分以上の心拍数で3発以上続く心室起源の不整脈を心室頻拍といいます。この心拍数を見ますと、200回/分以上になっています。

 

この不整脈が危ない理由は、次の2点です。

 

  1. 心拍数が速くなりすぎて、心臓の収縮・拡張がついていけないために血液が送り出せなくなります。すると、血圧が下がり、にも血液が供給されなくなり、失神(意識消失)してしまいます。また、心臓の筋肉にも酸素が供給されなくなるので、さらに心臓が疲れるという悪循環に陥ります。
  2. ①とも関係しますが、心室細動という、さらに恐ろしい不整脈に移行しやすいのです。

 

心室頻拍の原因

心室性期外収縮と同じですが、恐ろしいことになんの基礎心疾患もないのに、この不整脈を起こすことがあります(特発性心室性頻拍)。

 

心室頻拍の対処

もちろん、ベッドサイドへダッシュしますが、医師にすぐ連絡をとることを忘れないでください。できれば数人でベッドサイドに行きましょう。

 

意識がない場合は、いわゆる無脈性VTで心肺停止状態ですから、応援・救急カート・除細動器の三種の神器を要請して(「心肺停止の患者さんを発見したときの対応」参照)、ABCD(A気道確保、B呼吸の確認・人工呼吸、C循環のサインの確認・心臓マッサージ、D除細動)の順に心肺蘇生です。速やかにDを行うために素早くABCしましょう。

 

もし、意識がしっかりしていれば、落ち着いて以下の処置を行います。

 

  • 応援・救急カート・除細動器の三種の神器を要請
  • バイタルサインのチェック:心室頻拍でも心拍数や心機能によっては血圧が保たれていて、場合によっては症状がない場合もあります。
  • 心電図モニター:ベッドサイドの処置になりますので必須です。
  • 点滴ラインの確保:薬剤投与の必須ルート。太い留置針で、末梢静脈が基本です。
  • 酸素の投与:呼吸器疾患がなければ、経鼻カニューレで4L/分
  • 意識があっても、心臓が不安定な患者さんは、バイタルチェック後、O2・ライン・モニターが必須です。声に出して覚えましょう。「オーツー・ライン・モニター、オーツー・ライン・モニター、オーツー・ライン・モニター……」よ~し。OK
  • 可能なら標準12誘導心電図を記録
  • 気道確保の準備

このあたりで医師が登場するはずですので、指示をもらいましょう。基本的には除細動をすると思います。医師がすぐに処置ができるよう、手際よく準備しておきます。

 

もし処置中に意識をなくした場合は、その時点でABCDですよ!とくに除細動が最優先なので、ABCは素早く行い、Dの除細動を急ぎましょう。

 

心室細動とは

図2は、基線がギザギザしているだけでP波もQRS波もなんだかよくわかりません。

 

図2心室細動の心電図

心室細動の心電図

 

これは、心室細動(ventricular fibrillation:Vf)といって、読んで字のごとく心室が細かく痙攣しているだけの状態です。「心肺停止(CPA)の心電図波形」で勉強しましたね。

 

まさにこれは心肺停止です。この心室細動が起こると、数秒で意識がなくなり、心拍が戻らなければそのまま死に至ります。究極の致死性不整脈です。

 

とにかくベッドサイドへ猛ダッシュです。

 

ごくまれに自然に心拍が復帰することがありますが、例外中の例外で、除細動しないと心静止に移行して、時間とともに救命のチャンスが減っていきます。逆にいえば、除細動が早くできれば助かる可能性が高いのです。急げ~。

 

  • 意識はありません。もしあれば、心室細動が自然停止したか、前述の歯磨きVf(アーチファクト)ですので、一安心です。落ち着きましょう。
  • 三種の神器を要請
  • 素早くABCを行い、できるかぎり速やかにD:除細動ですよ。

 

コラム頻拍と頻脈の違い

“頻拍”と“頻脈”はどう区別するのでしょうか。“頻脈”は、心電図の世界では“洞(性)頻脈”にしか使いません。洞調律以外の100回/分以上の心拍数の場合は“頻拍”といいます。

 

たとえば、頻拍の代表選手は、心室頻拍や発作性上室性頻拍などです。頻拍も頻脈もどちらも英語にすると、“tachycardia”となります。

 

[次回]

ペースメーカーの種類と適応

 

⇒〔モニター心電図なんて恐くない〕記事一覧を見る

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 モニター心電図なんて恐くない』 (著者)田中喜美夫/2014年3月刊行/ サイオ出版

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