単純X線検査(乳房撮影を含む)|画像検査

『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、単純X線検査について解説します。

 

高木 康
昭和大学医学部教授

 

〈目次〉

単純X線検査とはどんな検査か

単純X線検査とは外部から人体にX線を照射し、X線の蛍光作用、写真作用を利用し透過したX線をフィルム(デジタル撮影ではイメージングプレートやフラットパネル)に感光させ画像化したものである。X線発生装置とフィルムの間に人体を置き、通過するX線の吸収の差を濃淡として画像化する。X線写真では空気、脂肪、水、カルシウム(骨)の4段階に濃度が表現できる。X線の吸収が高い骨はX線の透過が少なく真っ白になり、ついで吸収の高い水がやや白く、透過の良好な脂肪がやや黒く、ほとんど吸収しない空気が黒くなる。したがって胸部X線では、空気がほとんどである肺野は黒く、水である心臓、大血管がやや白く、肋骨や脊椎骨が白くなる。

 

胸部では肋骨や縦隔に重なった肺病変を見逃さないよう100〜150kVの高圧で撮影する。腹部では軟部組織のコントラストもつくように70〜80kV程度、骨はコントラストをよくするため45〜70kV(脊椎は80kV)程度の電圧で撮影される。乳房撮影(マンモグラフィ)も単純X線検査である。脂肪と乳腺からなる乳房はコントラストが悪いので、乳房を圧迫し25〜30kV程度の低い電圧で撮影し腫瘍や石灰化の描出能を高めている。

 

単純X線検査の目的

単純X線検査は放射線被曝がある、濃度分解能が十分ではない、二次元画像で臓器が重なって写るなどの欠点はあるが、侵襲性も低く、装置も高価ではなく、多くの施設に設置されており、簡便に人体内部の構造や異常を観察することができるので画像診断の基本となっている。具体的には肺炎(図1)、肺腫瘍、胸水、心拡大などの胸部疾患、イレウス(図2)、尿路結石、消化管破裂などの腹部疾患、骨折(図3)、脱臼、骨腫瘍などの骨疾患、乳癌の診断など広い適応をもつ。

 

図1胸部単純正面像

胸部単純正面像

 

左上肺野に肺炎による浸潤性(矢印)が広がっている。

 

図2腹部単純臥位像

腹部単純臥位像

 

小腸が空気で拡張(矢印)しておりイレウスと診断できる。

 

図3左手首正面像

左手首正面像

 

橈骨および尺骨の遠位、尺骨の茎状突起に骨折(矢印)を認める。

 

単純X線検査の実際

患者の姓名を確認し、撮影部位にボタンや金属などのない服に着替えてもらう。放射線技師が撮影部位に適合する装置で、撮影部位の適切なポジショニングをとり、照射野を決め最適の撮影条件で撮影する。

 

単純X線検査前後の看護の手順

看護師の役割は技師がよりよい画像を得ることができるよう、患者の不安を取り除く、患者の状態や点滴ルート酸素チューブなどに注意し技師が適切なポジショニングが取れるようにし、安全に検査ができるよう介助することである。そのためにはある程度の撮影の目的、手順などの理解が必要である。

 

単純X線検査において注意すべきこと

撮影部位に金属やX線透過性の悪いものがあると、診断の妨げになるので、撮影時の患者の服装に注意が必要である。患者の状態によっては患者の体位を保つために介助が必要なこともあるが、その場合には放射線防護のためのエプロンを着用し、できる限り被曝しないよう注意が必要である。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版

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