せん妄患者が、脳室ドレーンを自己抜去した!

『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、せん妄の患者さんが、脳室ドレーンを自己抜去してしまった場合について解説します。

門脇 芳美

東大和病院看護部
脳卒中看護認定看護師

 

 

せん妄の患者さんが、脳室ドレーンを自己抜去してしまい焦っている看護師のイラスト

 

ピンチを切り抜ける鉄則

脳室ドレーンの安全な管理には、術後せん妄の発症に対する早期対応がカギとなります。
光や音などの環境調整や睡眠と覚醒リズムへの対応、ルート類は最小限にすることなどが重要です。
また、患者さんの痛みや便秘など苦痛となる症状も取り除く必要があります。

 

せん妄評価ツールを用いて、発症リスクをアセスメントし、発症時に早期対応できるように医師と連携し準備をしておきましょう。

 

POINT
  • 脳室ドレーン挿入の目的は、脳室に貯留した髄液を外部に排出し、脳室の拡大を防ぎ頭蓋内圧亢進を予防することです。
    脳室ドレナージ管理は、生命の維持には大変重要です。
    術後はせん妄によるドレーンやルート類の自己抜去などが起こりやすくなるため、せん妄のリスクをアセスメントする必要があります。

 

 

起こった状況

症例

70歳代、女性、Aさん。くも膜下出血術後にて脳室ドレーンが挿入されICUに入室しています。

術後2日目、鎮静薬を中止し気管挿管チューブは抜去されました。

 

脳室ドレーンの他、さまざまなチューブ類が挿入されています。

 

意識レベルはGCS:E3V3M5となり、声かけにはつじつまが合わず、頭を持ち上げる動作も増えていました。

 

準夜勤務に入って間もなく、Aさんはベッド上で座位になり、脳室ドレーンを抜いてしまいました。

 

 

どうしてそうなった?

半覚醒したAさんにはたくさんのチューブが挿入されており、環境の把握もできない状況であると考えられました。

覚醒リズムの障害や注意障害によるせん妄が起こるリスクが高い状態です。

 

ベッド上の活動が徐々に増えてきた時点で、ルート類の自己抜去につながらないような対策はとられていませんでした。

 

 

どう切り抜ける?

1 患者さんの安全を確保する

環境の把握ができない患者さんは、予期せぬ行動を起こすことがあります。

 

転倒・転落やその他のルート類の抜去、損傷などの危険があり、看護師はその場を離れず人員を確保する必要があります。

 

同時にベッド周囲の環境整備を行い、患者さんの安全を確保します(図1)。

 

図1落ち着いた態度と声かけを行い患者さんの安全を確保する

落ち着いた態度と声かけを行い患者さんの安全を確保する様子を表した図

 

看護師の行動が逆に患者さんの興奮を招いてしまう恐れもあるため、対応は落ち着いた態度と声かけを行い、即座に医師に報告し対応を依頼します。

 

2 ドレーン挿入部への対応と抜去されたドレーンの観察

ドレーンが抜去された創部は、外部と脳室が交通されています。

 

即座に消毒し滅菌ガーゼで覆い、さらにフィルム材で覆い、創部と内の感染を予防します。

 

医師が到着したら創部を縫合します。

抜去されたドレーンのカテ先や破損の有無を確認し(図2)、脳内からすべて抜去されているかの確認をします。

 

もしも、カテ先が脳内に残ってしまった状態となれば、再開頭術が必要となってしまいます。

 

図2ドレーンチューブのカテ先の確認

ドレーンチューブのカテ先の確認を表した図

 

3 ベッドを水平にし、安静を保つ

ベッドを水平にし、頭蓋内圧を高めに維持し、逆行性感染を予防します。

 

頭を持ち上げず、安静が保てるように整え、バイタルサイン、神経所見の観察をします。

 

4 頭蓋内圧亢進の観察

脳室ドレーン抜去後は、頭蓋内圧亢進症状の出現が予測されます。

 

自覚症状としては激しい頭痛や悪心・嘔吐、他覚症状としては意識レベル低下や、クッシング現象(血圧上昇・徐脈)(図3)、瞳孔異常、痙攣などに注意が必要です。

 

図3クッシング現象

クッシング現象を表した図

 

頭蓋内圧亢進は、脳ヘルニアを起こし重篤な意識障害や命の危機に陥ります。

 

状況によっては、再度ドレナージが必要となり、脳室ドレーンの再挿入、またはスパイナルドレナージでの管理を行うこともあります。

 

 

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参考文献 閉じる

1) 小川朝生:自信が持てる!せん妄診療はじめの一歩 誰も教えてくれなかった対応と処方のコツ.羊土社,東京,2020:38-47.

2) 日本脳神経看護研究学会:マンガで学ぶ脳神経疾患患者の急変対応33場面.ブレインナーシング.メディカ出版,大阪,2022:191-194.

 


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社

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