患者転倒で450万円! 院内転倒ってなくせる? |おると先生の気になるニュース(1)

 

初めまして! X(旧Twitter)で医療啓発や医療ニュース解説をしている整形外科医のおるとと申します!

 

今回から看護roo!にて、看護師向けにトレンドの医療ニュースなどの考察・解説をさせていただくこととなりました。

 

今回は、こちらのニュースについて考察してみます。

 

 

まずはどのようなニュースだったかを詳しく見てみましょう。

 

報道によると、この患者は不安定狭心症の診断で入院していました。集中治療室から一般病棟に移ったある日、今回の事故が起こったのです。

 

患者は一般病棟に移った際、転倒・転落アセスメントで危険度II(転倒・転落を起こしやすい状態)と評価されたため、病院側は以下の対応をとっていました。

 

・移動時はナースコールを押してもらう
・病床に離床センサーを設置する
・移動時には看護師が付き添う

 

事故が起こった日、患者は睡眠導入剤を内服して入眠したものの、「トイレに行きたい」とナースコールがあり、トイレには看護師が患者の片腕を支えた状態で歩いて向かいました。しかし、途中で患者に膝折れが生じ、しりもちをつく形で看護師とともに転倒してしまいました。

 

その後、患者は右大腿骨頚部骨折と診断され、歩行不能な状態が続き、後遺症が残ることになりました。

 

調査の結果、病院側は、「睡眠導入剤の内服後の歩行時のふらつきは事前に確認されていて、トイレへの歩行時は車いすでの移動をしていれば、転倒を防ぐことができた可能性がある」と過失を認め、男性側に450万円を支払うことで和解が成立しました。

 

院内転倒はゼロにならない だからリスクは周知しておく

実臨床で働いてらっしゃる看護師の方々はよくご存知だと思いますが、院内転倒というものは非常によく起こります

 

病気で体力が落ちていたり、そもそも高齢者だったり、入院によって廃用が進んでいたり、内服薬の影響が出たり……などなど様々な要因で転倒しやすい患者が多いです。介助や対応に慣れた看護師の多い整形外科病棟などでも普通に起こります。

 

日本医療機能評価機構が公開している「医療事故情報収集等事業」では、2020年に上げられた事故報告中、転倒転落が実に20.5%も占めると報告されています1)

 

今回のように受傷し、手術や入院日数の延長が起きた場合インシデント影響度分類レベルは3bに分類され、このような事故も全体の10%弱程度あると言われています。

 

院内転倒を減らすという課題に対しては、僕も昔から意識はしてはいるのですがゼロにはなり得ないと思っています。

 

僕が師事していた教授も「絶対に院内転倒をゼロにするぞ!」と一時期躍起になって、転倒が起こったときのインシデントレポートから対策を考えていたのですが、数カ月すると急に「無理かァ……」と諦めていました。

 

ただ、できる限り院内転倒を減らすためにも、各患者の院内転倒のリスクについては病棟内で周知されておくべきであると思います。

 

院内転倒の要因は、年齢や機能障害・ADL・転倒リスクスコア、内服内容、患者の容態といった「患者側の要因」や、平均病床稼働率、勤務者数、時間帯といった「管理側の要因」も考えられます。

 

それらの要因をそれぞれしっかり評価した上で対策を練るのが良いと考えられます。

 

余談ではありますが、先日筆者もお酒を飲み過ぎて自宅内で転倒しました。
転倒は、身近に潜む事故だとしっかり再認識しておきましょうね(戒め

 

インシデント影響度分類

レベル0:患者には実施されなかった
レベル1:患者に実施されたが、影響はなかった
レベル2:一時的な観察や検査が必要となったが、処置や治療の必要はなかった
レベル3a:軽微な治療や処置が必要となった
レベル3b:予定外の処置や治療、入院、入院期間延長などが必要となった
レベル4a:永続的な障害や後遺症が残ったが、機能障害や美容上の問題はなかった
レベル4b:永続的な障害や後遺症が残ったり、機能障害や美容上の問題も伴った
レベル5:死亡(原疾患の自然経過によるものを除く)

 

参考文献

  • 1)射場靖弘ほか.ベッドサイドにおける転倒・転落インシデントレポートと転倒・転落予防策.理学療法ジャーナル.57(10),2023,1223-1226.

 

執筆

おると🦴整形外科医📚

日本整形外科学会専門医/ 認定医複数/ フリーランス/ 雑誌・W E B連載複数あり、正しくわかりやすく医療や医療系ニュースの解説をしています。Xブログ

 

編集:林 美紀(看護roo!編集部)

 

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