あなたのレベルはどれくらい?新人看護師が1年間で習得すべき技術のガイドライン
「入職してからどれくらいで何ができるようになっていたら良いの?」
新人ナースとして仕事を始めると、覚えることや日々の業務に忙殺されて、自分のレベルがわからず不安に思うことがあるかもしれません。
同じことは、新人を指導する側にもいえること。新人の飲みこみがはやければ問題はありませんが、思うように指導が進まないと、「自分の教えかたが悪いのかも」と不安に感じる人もいると思います。
厚生労働省では、新人看護師に「1年間でここはおさえて欲しい」というポイントをまとめたガイドラインを示しているのは、みなさんご存じでしょうか。2010年4月から各病院は、「新人看護職員研修ガイドライン」にそった研修が努力義務として求められています。

褥瘡予防や感染予防は1年目に習得
では、新人看護師に1年間で習得してほしい技術とは、どのようなものでしょうか。ガイドラインから下記にいくつか抜粋してご紹介します。
- 「環境調整」:温度、湿度、換気などの療養生活環境調整
- 「食事援助」:嚥下障害のある患者の食事介助、経管栄養法
- 「排泄援助」:自然排尿・排便援助
- 「活動・休息援助」:歩行介助や移送、体位変換
- 「清潔・衣生活援助」:清拭、口腔ケアなど
- 「呼吸・循環を整える」:酸素吸入療法、吸引、ネブライザー
- 「創傷管理」:褥瘡予防
- 「与薬」:経口・外用薬の与薬、直腸内与薬
- 「救命救急処置」:意識レベルの把握
- 「症状・生体機能管理」:バイタルサインの観察、静脈血採血
- 「感染予防」:スタンダードプリコーション(標準予防策)の実施、無菌操作の実施、職業感染防止策と事故後対応
- 「安全確保」:誤薬、患者誤認、転倒・転落防止
死亡時のケアがあらたに追加
ガイドラインをみていくと、環境調整や清潔、症状・生体機能、感染予防などの分野では、多くの項目が1年以内に「できる」ようになることが目標となっています。一方で、与薬や救命救急、苦痛の緩和・安楽確保の技術については、1年目の新人では「指導の下でできる」などを目標としています。
なお、今年に入って行われたガイドラインの見直しで、あらたに「死亡時のケア」の項目が追加されました。
「転職につながる」懸念から、進まぬ共同研修
看護師1年目と3年目、5年目と経験が増えていくにつれて、できることは段階的に増えていくはずです。ガイドラインではそのなかで、1年目にはここまでできるようになってほしいという指針が示されているため、新人看護師も、指導する先輩看護師も目安として活用することができると思います。
努力義務となっている新人研修ですが、病院の規模が小さいほど行われていないこともわかっています。規模が小さくて自分の病院だけで行えない場合は、他施設といっしょになって研修することをガイドラインでは提案していますが、病院側の「転職につながってしまうのでは」との心配から、共同の研修は進んでいないという実情もあるようです。
いずれにしても、新人をきちんと育てて質の高い看護を提供することが、国民からの信頼につながることは間違いありません。新人をきちんと育て、さらには看護職員として定着させていくために、病院ごとの利害を超えた、広い視野での看護師育成が必要なのかもしれません。
(参考)
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