仕事のストレスによるうつ発症、医療業が第2位。看護師のストレス原因は「仕事量」
仕事による強いストレスが原因で精神障害を発症し、労災請求をした業種のトップは、「社会福祉・介護事業」、第2位が「医療業」であることがわかりました。職業別の労災請求でも「介護サービス事業者」が第5位、「保健師、助産師、看護師」が第9位と上位になるなど、医療・介護職が日常的に強いストレスにさらされている状況が改めて浮き彫りになりました。
2015年度に労災の支給請求(精神障害)をした人は1515人、支給決定した人は472人(うち自殺93人)。厚生労働省が発表した「平成27年度 過労死等の労災補償状況」で明らかになりました。
職種別では介護が5位、看護職は9位に
業種別にみた請求件数は、第1位が「社会保険・社会福祉・介護事業」(157件)、第2位が「医療業」(96件)、第3位が「道路貨物運送業」(69件)と続いています。
支給決定件数ではやや順位が入れ替わり、第1位が「道路貨物運送業」、第2位「社会保険・社会福祉・介護事業」、第3位「医療業」となりますが、他の職種と比べて医療・福祉職の労災が突出して多いことがわかります。
ちなみに細かい職種別の請求件数でも、「介護サービス事業者」は第5位、「保健師、助産師、看護師」は第9位と上位に位置します。
看護師の体調不良、全職種より18ポイントも高い
このように、日常的に強いストレスにさらされている看護職の実態は、日本医療労働組合連合会の「看護職員の労働実態調査」からも浮かび上がります。
医労連が看護職の実態を調査し、その結果を全産業の労働者(女性)と比較したところ(厚生労働省「労働者健康状況調査」2007年)、健康に対して不調を感じる程度が、看護職の方が18ポイントも高いことがわかりました。
「仕事量」「医療事故の不安」がストレスに
看護師が感じる強いストレス(2つ選択)の要因は、「仕事の量の問題」が46.6%と最多で、次いで「仕事の質の問題」30.3%、「職場の人間関係」28.4%、「仕事への適性の問題」19.8%、「事故の不安」11.9%と続きます。
これを全産業の労働者が感じているストレスと比べると、看護職員が「仕事の量」で20ポイント高く、全産業の「事故や災害」と比べても看護職の「医療事故の不安」が10ポイント上回っていました。
6割が薬を服用、向精神薬も1割に
このように看護職が日常的に人手不足による業務量の過多、医療事故への不安など強いストレスとして抱えていることがわかりました。
このほか看護職の6割が何らかの薬を常用していて、最も多いのは「鎮痛剤」で約3割。「睡眠剤」や「安定剤」「抗うつ剤」などの向精神薬を使用している人も1割を占めていて、精神疾患を抱えつつ勤務をしている人が一定数以上いることがわかりました。
メンタルヘルスの労災申請で医療職が上位を占める傾向は長年続いていて、依然として改善する様子がみえません。2015年12月から事業主によるストレスチェック制度が義務化された今、何よりもまず医療現場におけるメンタルヘルス対策が急務といえそうです。
【ライター:横井 かずえ】
(参考)
平成27年度「過労死等の労災補償状況」(厚労省)より抜粋
「看護職員の労働実態調査」(日本医療労働組合連合会)
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