Dr.コトーのモデル医師、後任おらず74歳で続投―へき地医療の現実

へき地医療をテーマにした人気漫画、「Dr.コトー診療所」。

その主人公のモデルになった医師が、鹿児島県薩摩川内市・下甑(しもこしき)島の手打(てうち)診療所長、瀬戸上(せとうえ)健二郎医師(74)です。瀬戸上医師は、来年3月に任期満了で退任が決まっていましたが、後任が決まらず、住民の強い希望を受け来春以降も続投することになりました。

 

 

瀬戸上医師は、人口2400人の下甑島で37年間、へき地医療に貢献してきました。75歳を前に一区切りしたいという思いがあったため、任期満了に伴って退職する意思を固めていました。

 

任期満了を控えた昨年、川内市は瀬戸上医師が推薦する別の医師のもとを訪ね、診療所に来ることに前向きな返事をもらっていたそうです。ところが今年に入り、この医師が家庭の事情により来島ができなくなったそうです。市は後任医師を募ったり、病院を回って常駐医師の派遣を要望したりしましたが後任は見つからず、瀬戸上医師の続投が決定しました。

市は瀬戸上医師の退職後、島内にある3つの診療所を来春一つにまとめる再編計画を立てていましたが、これも白紙に戻りました。

 

へき地医療に携わる医療従事者の必要性に反して、実際に出向く人は少なく、一部の医療従事者に頼り続けている厳しい現状が浮き彫りになっています。

 

新研修医制度がハードル?若手医師がへき地に行かない理由

では、へき地医療はなぜなかなか進まないのでしょうか。

 

大きな要因に2004年に導入された医師の「新研修医制度」があります。これにより医局に所属する研修医が減り、自由に就職病院を探せるようになった反面、医局の権限によってへき地に若手医師を送ることが困難になりました。

フリーで動く若手医師のなかに、へき地を希望する人はなかなかいないのが現状です。へき地は遠く不便というだけでなく最新の医療から離れてしまうことも原因と考えられます。

 

さらに、厳しい労働条件もあります。交代人員がいないため、365日24時間呼び出されれば、すぐ駆けつけなくてはなりません。専門外の診療もするため、医師・看護師ともに責任が大きく、精神的な負荷もかかります。

 

また、予算の問題もあります。人口が少なく採算の取れない地域には十分な予算が配分されづらいのが現実です。

閉鎖的な土地柄、医療の発展のためにきた医療従事者を排除しようとする住民も一部にはいるそうで、赴任には高いハードルがいくつもあります。

家族がいる医療従事者の場合は特に、生活が不便なへき地勤務に理解を得にくいのは容易に想像がつきます。

 

へき地・無医地区は600地域以上

2013年のへき地医療現況調査によると、全国のへき地診療所1038施設のうち、常勤医師がいる施設は約半数の572施設で、606施設は他病院から派遣される非常勤医師が診療しています。また、どちらの医師もいない施設も10施設あります。

 

地方の中でもさらに山奥や離島などのへき地には無医地区も多く存在します。

無医地区とは「医療機関のない地域で、当該地域の中心的な場所を起点として概ね半径四キロメートルの区域内に人口50人以上が居住している地域であって、かつ、容易に医療機関を利用できない地区」を指します。

無医地区は2014年の統計で633地域あり、2010年(705地域)に比べ約10%減ったもののまだ充実にはまだ遠い現状です。

 

山間部の病院に6年ぶりの新卒看護師 奨学金返還免除で

一方、明るいニュースもありました。

6年間新卒看護師の入職がなかった山梨県の山間部の病院に、この春看護学校を卒業した看護師1名が入職しました。

 

この病院では看護師不足解消を目的として3年前に奨学金制度をスタート。当病院に就職すればその返還を免除にするというキャンペーンで、山間地の医療現場を就職先としてアピールしようと取り組んできました。今春就職したこの女性は制度スタートから初の就職者で、地域医療を支えるため看護師の道を選んだと話しています。来春にはさらに3人が勤務する予定です。

 

この地域には1人暮らしのお年寄り世帯が多く、訪問診療も行っており、若手看護師の成長に期待がかかっています。

 

広島、愛媛…地方各地で奨学金制度

その他にも、地方自治体では人材確保のためにさまざまな取り組みをしています。

広島県神石高原町は、町立病院に就職する看護師に対し、今年度から5年間、就職支度金として250万円を上限に貸与します。5年間勤務すれば返還は免除され、使い道は問わないとのことです。

愛媛県の久万高原町では、町内勤務を希望する看護学生を対象に、月額7万円を無利子貸与し、貸与期間の1.5倍の期間を町内で勤務した場合は返済を免除する条例案を提出予定で、高額な金額が話題を集めています。

 

看護師数 東京6万人に対し鳥取6千人

では実際、看護師の皆さんは就職先をどのように選んでいるのでしょうか。2014年の厚生労働省の看護師の統計によると、人口10万人に対する看護師の就業者数は、トップの東京が約9万人、2位の大阪が約6万4千人に対し、最下位の鳥取は約6千人でした。地方が趣向を凝らしたな取り組みをしても、まだなお大都市に集中し、地域によって大きな格差があることがわかります。

 

地方で働く看護師のメリット・デメリット

地方、とくにへき地の病院に来る患者さんは、「その病院にしか頼れない」人です。へき地で働く看護師からは、それがやりがいだという声が多く聞かれます。また、短期の募集で行くこともできるため、柔軟な働き方ができるのもメリットといえるでしょう。

へき地で働くデメリットは、不便な土地であり、最新の医療から距離ができてしまうことなどがあります。

 

 

(参照)

「Dr.コトー」の後任見つからず…住民「不安」(読売新聞)

看護生支援結実、山間地に新卒者 浜松・佐久間病院(静岡新聞)

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