威圧的な医師に電話するのが怖い|バク先生のナースお悩み相談室【28】

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精神科専門医
今回のお悩み
(大学病院・2年目)威圧的な態度をとる医師への報告や相談が、心理的に大きな負担になっています。
何か報告しようとしても、「こんなことで電話するなと怒られるかも」「今は忙しいかな」と、電話をかける前に1人で何分も葛藤してしまいます。
結局、「でも電話しないと仕事が進まないし、患者さんの安全に関わるし…」と自分を奮い立たせて連絡しますが、緊張と恐怖で心がすごく疲れてしまいます。
どういう考え方をしたら怖がることなく、スムーズに連絡できるようになるでしょうか。

やるべき仕事をしているだけなのに…!!
ただでさえ業務が忙しいのに、本来悩まなくていいことで悩むのは本当につらい時間ですよね。
なるべく心の消耗を減らせる方法を考えてみましょう。
しんどさの正体は通話前の「脳内会議」
こんにちは、バクです。最近忙しくて休みの日は寝続けてしまっております。寝られるうちに寝ましょう。
さて、今回のご相談は端的に言えば、「チーム医療を何も分かっていない医者が悪い!」の一言なのですが、そんな中ちゃんと連絡できているあなたは、ものすごく責任感の強い人だと思いました。
しかし見方を変えると、電話の「前」で消耗しすぎているだけ、とも言えるかもしれません。「どういうこと!?」と思われそうですが、今日はその消耗を減らす方法を一緒に考えましょう。
まず注目してほしいのが、相談者さんが消耗しているタイミングです。
威圧的な医師との実際の通話は、おそらく長くても1〜2分。でも、その前に「怒られるかな」「今かけていいのかな」と1人で何分も葛藤している時間のほうが長そうですよね。
つまり、しんどさの正体は通話そのものではなく、通話前の「脳内会議」なんではないでしょうか。
しかもこの脳内会議、毎回かならず「どんだけ悩んでも電話はかける」が結論です。相談者さんも理解しているように仕事ですから当然なんですよね。
ただ毎回、自分の中で相手を一番怖いバージョンで想像し、脳内予行演習で疲れ果てて、結果電話し、さらに疲弊しているのでは?と見えます。

医師への電話は単なる「事実を渡すだけの作業」
ここは強調しておきたいのですが、怖くて緊張しながらも、ちゃんと連絡できているというのは、看護師としてめちゃくちゃ価値が高いことです。
威圧的な相手を前にすると、人は「怒られたくない」が先に立って、報告を後回しにしたり、最悪なかったことにしたりしがちです。
でも相談者さんは、怖いと感じながらも「患者さんの安全に関わるから」と自分を奮い立たせて連絡している。怖さより患者さんを優先できているんです。
これはもう、性格や根性の話ではなく、看護師としての軸がしっかりある証拠です。
だからまず、「怖がらずに連絡したい」というより、「もうできているんだから、その前の消耗だけ減らそう」が目標だと思います。
電話の前の消耗を減らすために、電話をかけるという行為を「自分が評価される場」ではなく、「事実を渡すだけの作業」と考えてみましょう。
威圧的な人に連絡するとき、つい「この報告で自分がどう思われるか」を気にしてしまいます。
でも本来この電話は、相談者さんという「人」を評価する場ではなく、患者さんの情報という「事実」を、必要な人に届けるだけの作業です。
極端に言えば、宅配便の受け渡しと同じ。荷物(情報)を渡すのが目的であって、配達員(相談者さん)の人柄を採点される時間ではありません。
「SBAR」で台本をつくってみよう
報告の前に「SBAR」のような型で用件だけメモしておくのもおすすめです。
- S(状況):何が起きているか
- B(背景):関連する経過
- A(評価):自分が気になっている点
- R(依頼):どうしてほしいか
紙に1行ずつ書いてから電話すると、「うまく話さなきゃ」ではなく「このメモを読み上げるだけ」に変わります。
相手の機嫌ではなく、手元の紙に集中できるので、思考が真っ白になりにくいです。用件が整理されているぶん、相手も威圧的になるタイミングが生まれにくくなるはずです。
「こんなことで電話するなと怒られるかも」という不安、よく分かります。
でもこの「怒られるかも」は、まだ起きていない未来を、自分の頭の中で一番きついパターンで上映しているだけ、という側面があります。
そして仮に本当に不機嫌な対応をされたとしても、それは「あなたがダメだから」ではなく、その医師の機嫌やキャラクターの問題であることは、はじめに書いた通りです。
同じ報告を別の医師にすれば、ふつうに「ありがとう」で終わることも多いはず。つまり、相手の反応はあなたの仕事の評価そのものではない、ということです。
「報告すること」自体は100%普通の業務ですから、相手が不機嫌でも、あなたの行動の正しさは1ミリも揺らぎません。
チームに相談すれば、きっと解決の糸口が
ここまで「考え方のコツ」を書いてきましたが、1つだけ大事なこと。
特定の医師への連絡で毎回ここまで消耗するなら、それは相談者さん一人で何とかする問題ではなく、チームで共有していい問題なんじゃないでしょうか?
「あの先生への報告がどうしても緊張してしまう」とプリセプターや先輩に相談すれば、最初のうちは一緒に電話してもらう、報告の型を教えてもらう、といったサポートを受けられることもあります。一人で抱え込む必要はまったくありません。
もしかしたら「私あの先生に何言われても『はは、またイライラしてるな〜』しか思わないしやろっか?」という神が現れるかもしれませんし。
いろいろ書きましたが、怖さをゼロにする!を目標にしなくても大丈夫です。「前ほど消耗しなくなったな」が積み重なれば、それで十分だと思います。
ではでは今月はこのへんで〜。
バク@精神科医
ADHDをはじめとした発達障害持ちの元文系。理転した後、無事に医学部に合格。国家試験も何とかクリアしたものの、専攻した内科で適応障害になり休職し、精神科医として無事?復活。精神科でジェンダー外来を通じ自分の性自認が完全に無いことに気付く鈍感さ。そんなアセクシャルながらもご縁があって結婚できた、いろいろぼんやりしている精神科医。
雑誌連載や書籍を出したり、依頼があれば講演会をしたりしながら「生きてみるもんだなぁ」と日々感謝しながら今日も日本のどこかで働いている、はずです。
編集:北井 寛人(看護roo!編集部)
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