こんなに違う! 海外と日本のお薬事情|患者さまは外国人【6】

「インターナショナルクリニック」の看護師で「エスコートナース」でもある山本ルミが、患者さまとのドタバタな日常をお届けします!


 

インターナショナルクリニックで働いていたときに、外国人と日本人との違いを感じたことの一つは「体格」。平均的に男性も女性も、身長体重ともに日本人より大きいのですが、赤ちゃんを見てもそう感じます。骨太なのでしょうか?

 

薬の量も当然違います。クリニックで海外から輸入していたA型肝炎のワクチンは、子どもの分でさえも1回量が日本の規定の倍もあります。日本では3回接種、外国では2回接種という違いはありますが、それにしても多い!

 

内服薬にしても、例えば日本は50mgか100mgしかない薬でも、海外はさらに200mgがあることも。基本的に、私が今までに見た外国の薬のほとんどで、日本の倍量がありました。クリニックでは外国製の薬も扱っていましたが、使用する9割以上は日本製です。

 

だから、「朝に1錠血圧の薬を飲んでいた」という人が日本製の同じ薬を飲むとなると、2錠飲まなくてはいけなくなります。1種類ならいいのですが、5~6種類になるとかなりの量。「ご飯を減らさないと薬が入らない!(笑)」という人もいました。

 

クリニックの薬局。ほとんどは日本の薬です

クリニックの薬局。ほとんどは日本の薬です

 

薬品名は同じなのに…

旅行者にありがちな「家に薬を入れた袋を丸ごと忘れた」とか「スーツケースが届かなくて今朝から飲む予定の薬がない」などといったトラブル。そんな旅行者が来院した場合、私は日本の薬の本と海外の薬の本を見比べながら、患者さんの内服薬のリストを調べなければなりません。薬の商品名が違うことがあるからです。

 

日本でカロナールという薬は、アメリカでは「タイラノール」、ヨーロッパでは「パラセタモール」です。しかし、薬品名はいずれも「Acetaminophen(アセトアミノフェン)」。薬品名は同じなので、それを調べればなんとか薬が探すことができます。

 

どーしても!探せない場合には、薬剤師さんに電話して調べてもらい、同じ効果がある薬を探して内服するように勧めます。それが胃薬などなら大きな問題にはなりませんが、心臓などの薬である場合は、主治医に確認してから飲んでいただくようにしていました。

 

渡すときには、薬を入れる袋に商品名と薬品名の両方を書いて、さらに間違わないように飲み方を書きます。

 

「Tylenol (Acetaminophen)  Take 2 Tablets 3 times a day after each Meal」

「タイラノール(アセトアミノフェン)1日3回、毎食後に2錠ずつ」

 

といった感じです。

 

実際に患者さんに薬を渡すときの袋。印刷ではなく、時間のあるときに私がスタンプしてました!

実際に患者さんに薬を渡すときの袋。印刷ではなく、時間のあるときに私がスタンプしてました!

 

日本では処方できない危ない薬?

患者さんが必要でも、簡単には処方できなかったのが「痛み止め」です。それぞれ国の薬事法が違います。日本は麻薬の取り締まりがとても厳しい国ですが、ときには日本よりもゆるい国もあります。

 

あるとき、患者さんが「膝が痛くてこの薬を飲んでるんだけど、仕事で日本の滞在がのびたので同じ量を処方して下さい」と、100錠入りのボトルをポンと目の前に置きました。そのボトルをよく見ると“Codeine”の文字が…。

 

「痛みにもよるけど、大体、一日3~4錠飲んでます」と患者さん。

 

ドクターは「僕はこの薬は処方できません、これは麻薬だからね! 歩くのに膝が痛いぐらいじゃ、日本ではコデインの入った薬は処方できないんだよ」と言って、効果が薄いとは思われますが、別の痛み止めを処方します。

 

このとき、即効性があるからと坐薬を勧めると、なぜかアメリカ人は絶対に拒絶!

 

「え~とんでもない! おしりに入れるなんて!!」

 

日本人にとっては不思議な反応ですが、よくアメリカ映画で人をバカにするときに中指を立てたりしますよね、そういうイメージがあるみたいです。それに比べるとヨーロッパの人は、坐薬に対してそこまで拒否反応はないみたい。

 

20年の付き合いがあるインド人の患者さん。なかなか薬の飲み方を理解してくれず、もう少しで座薬を食べるところでした(笑)

20年の付き合いがあるインド人の患者さん。なかなか薬の飲み方を理解してくれず、もう少しで座薬を食べるところでした(笑)

 

あんな薬まで薬局で買えちゃう!

薬局で買える薬も外国は日本に比べて多いようです。例えば、モーニングアフターピル(緊急避妊薬)。これは避妊に失敗してしまったとき、ハプニングが起きてからその後できるだけ早くに飲んで妊娠しないようにする薬です。海外では薬局で簡単に手に入るようで、クリニック来院時に「どうして日本は薬局で購入できないのですか?」とよく聞かれました。

 

最近は日本でも聞かれるようになりましたが、以前はこのモーニングアフターピルを日本で処方する医師(もしかすると知っている医師)はとても少なかったと思います。これも、基本は文化、習慣、宗教、風習、そして考え方の違いでしょうか?

 

同じ人間なのにそれぞれの国の治療法や薬の内容、量が違ったりするって興味深い! これもインターナショナルクリニックで働いてこそ学べたことでした。

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