HIV感染で就労制限を受けた元看護師 病院側に60万円の賠償命令
【ナース知っ得ニュース 2015/2/3号】
福岡県の20代の元看護師が、エイズウイルス(HIV)検査で陽性と判断され、退職を余儀なくされたとして損害賠償を求めた件で、2015年1月29日に2審判決が出ました。その内容は、病院に約61万円の支払いを命ずるものでした。
HIV検査:「結果の労務管理利用は目的外」2審も認める(毎日新聞)
HIV感染が勤務先病院に知られた元看護師の訴訟事件
1審判決によると、この元看護師は、2011年8月に勤務先病院の紹介で大学病院を受診。検査結果が本人の知らないうちに勤務先病院に伝わり、病院幹部から休職するよう言われ、11月には退職。
感染を理由に退職を余儀なくされたとして、元看護師が勤務先病院に約1000万円の損害賠償を求めていました。
1審判決では元看護師の主張が認められ、病院側に約115万円の支払いが命じられましたが、病院が控訴。2審の判決でも、病院に61万円の支払い命令が出されました。
判決の内容は「プライバシーの侵害」と「本人の意向を考慮しない就労制限」
判決では、「診療目的の検査結果を労務管理目的に使用したのは、個人情報の目的外利用にあたる」とし、元看護師のプライバシー侵害を指摘。
また、「元看護師の意向や今後の業務の検討をせずに就労を制限した」ことに違法性があると認定されました。
HIVに感染した看護師の人権を守る動き
このような看護師のHIV感染による就労問題は、他にも起きています。2010年4月には、看護師が無断でHIV感染検査をされ、陽性だったことを理由に退職勧奨を受けて退職したことを訴えた事件がありました。また、2012年1月には別の看護師が、HIV感染を理由に休職を強要され、休職期間満了に伴って退職しています。
日本看護協会はこれらの事件を受け、HIV感染の看護師の人権を守る動きを見せています。
感染者の就業制限はないこと、感染を理由とする解雇や退職勧奨は違法行為であること、そしてサポート体制を整えるようにと呼びかけています。
1.保健・医療の現場での感染防止は、スタンダードプリコーション(標準予防策)で対応できます。
標準予防策は「患者⇔医療従事者」はもちろん、「医療従事者⇔医療従事者」の感染防止に有効です。
2.感染者の就業制限はありません。引き続き看護職としての就業が可能です。
感染を理由とする解雇・退職勧奨は違法行為です。
3.感染者へのサポート体制を整えてください。
プライバシー保護に配慮しながら、健康管理と治療の継続を支援し、健康状態や本人の希望に対応した勤務上の配慮ができるよう、相談・支援の体制を整えてください。
(出典)日本看護協会
(参考)
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