ついに緊急避妊薬(アフターピル)がOTC化されそうです!薬局で買えるようになりますよ

稲葉可奈子稲葉可奈子🐾産婦人科医『シン・働き方』

産婦人科専門医

緊急避妊薬(アフターピル)のイメージ画像

意図しない妊娠を防ぐ「緊急避妊薬」(アフターピル)が、医師の処方箋なしで薬局などで購入できるようになる見込みです。

 

前回、緊急避妊薬や低用量ピルが女性のSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ=性と生殖に関する健康と権利)にとって大切で、その選択肢が広がってきているというお話をしましたが、さらに前向きな変化です。

 

今回は緊急避妊薬のOTC化について看護師のみなさんも知っておきたいポイントをお伝えします

 

緊急避妊薬はどうやって買える?

緊急避妊薬(アフターピル)のOTC化のイメージ画像

日本では現状、緊急避妊薬は原則医師の診察が必要、ごく一部の薬局でのみ試験販売が行われていますが、8月末、厚生労働省の専門家会議で、緊急避妊薬を薬局などで購入できるようにする(OTC化)方針が了承されました。

 

このあと、パブリックコメントなどを経てから正式に承認されます。

 

購入の際の主な条件として、

 

  • 店舗での対面販売のみ
  • 研修を受けた薬剤師からの説明を受ける
  • 薬剤師の面前で服用する
  • 年齢制限なし

 

が設けられる見込みです。

面前服用は「合理的」

「面前服用」は、安易な販売などへの懸念から盛り込まれました。「プライバシーや心理的負担になるのでは」という反対意見もありますが、実際には他のお客さんの前ではなく、プライバシーの確保された場所で服用する仕組みです。

 

 また、緊急避妊薬は早く飲むほど効果が高いため、その場で服用する方が医学的にも合理的です。効果を最大限にするためにその場で服用を推奨しているものであり、女性を疑っているからではありません。 むしろ、「早く飲みたい」と思う女性にとって合理的な選択肢です。

 

私自身も、処方する際は、説明後に「今すぐ飲んでもいいですよ」とおすすめしており、患者さんもみなさんすぐ飲まれます。

 

もちろん、「義務」とされると反発したくなる方もいると思いますので、「推奨」程度でもよいのではという考えもありますが、その場で服用できない合理的な理由はほとんどなく、医学的にも理にかなった対応です。

 

緊急避妊薬と経口中絶薬の違い

緊急避妊薬を経口中絶薬と混同されることが散見され、今回もSNS上では、経口中絶薬が薬局で買えるようになったと勘違いしていると思われるズレた批判も見受けられました。

 

たしかに若干ややこしいのですが、まったく別モノですので、分かりやすくまとめておきます。

 

表1緊急避妊薬(アフターピル)と経口中絶薬の比較

  緊急避妊薬(アフターピル) 経口中絶薬
目的 妊娠を防ぐ(避妊の最後の手段) すでに始まった妊娠を中断する(人工妊娠中絶)
使う時期 性行為後72時間以内 妊娠初期(9週まで)
作用 排卵を抑えて受精・着床を防ぐ
→妊娠「前」に作用
ホルモン作用を止めて子宮収縮を起こす
→妊娠「後」に作用
入手方法 受診もしくは、OTC化により薬局で対面購入できる 医師の診察・管理のもとでのみ処方される(自費)
副作用 吐き気・頭痛・不正出血(軽度) 強い腹痛・出血、吐き気、発熱など

 

大きな違いは「妊娠が始まる前に(妊娠しないために)使うのか/妊娠が成立した後に使うのか」という点です。

 

長い年月をかけたOTC化の実現

緊急避妊薬(アフターピル)のOTC化をめぐる議論のイメージ画像

緊急避妊薬のOTC化の議論は2017年に始まりました。

 

当時、パブリックコメントでは9割以上が賛成でしたが、

 

  • 自己判断の難しさ
  • 性教育・リテラシー不足
  • 薬剤師の専門知識や販売体制の未整備
  • 悪用や乱用への懸念

 

といった慎重な意見が関連学会から出され、見送られました。

 

しかし、国民の関心の高まりなどを受けて流れが変わり、2023年からは全国のごく一部の薬局で、OTC化に向けた調査事業として「試験販売」が行われました。

 

試験販売では16歳以上が対象で、未成年は保護者同伴などの制限があり、「親に言えない」「買える薬局が近くにない」といった声も多くありました。今回、ようやくOTC化の了承に至り、年齢制限・保護者同伴が不要となったことは、とても大きな前進です。

 

妊娠を望んでいないときは、普段から避妊薬などで予防するのが理想です。しかし現実には、薬が合わずに飲めない方、コンドームが破れてしまった場合、性被害に遭ってしまった場合など、「いざというとき」に備える緊急避妊薬の存在は、女性のからだの自己決定権にとってとても重要です。 

 

女性が「望まない妊娠」を防ぐために、より早く・確実に薬へアクセスできる体制が整うことはSRHRの観点から非常に大きな一歩です。

 

 ご尽力くださったすべての関係者のみなさまに、心から敬意と感謝をお伝えしたいと思います。

 

 

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執筆

Inaba Clinic 院長稲葉可奈子

産婦人科専門医・医学博士。京都大学医学部卒業、東京大学大学院にて医学博士号を取得、双子含む四児の母。産婦人科診療の傍ら、病気の予防や性教育、女性のヘルスケアなど生きていく上で必要な知識や正確な医療情報を発信している。

 

 

編集:北井寛人(看護roo!編集部)

 

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