「病床11万床を削減」って本当…!? 看護師への影響は|看護roo!ニュース

病床のイメージ画像

2027年4月までに「病床11万床を削減する」―

 

医療費を削減するため、国がこんな方針を打ち出しました。

 

もし、この大幅な病床削減が実現すれば、医療現場はどのように変わるのでしょうか?

 

看護師のみなさんが知っておきたいポイントをまとめました。

 

なぜ病床を11万床削減するのか

そもそも、なぜ病床を11万床も減らす案が出てきたのでしょうか。

 

背景にあるのは、自民、公明、日本維新の会の3党が打ち出した医療費削減案です。

 

案では現役世代の保険料負担を軽減するため、「医療費を年間、最低4兆円減らす」という目標を掲げています。

 

このうち1兆円分については、「人口減少などで不要になる11万床を削減する」ことで実現できると試算されました。

 

削減の対象になる病床は?

削減の対象とされている病床は、「必要病床数を超えている」とされた一般・療養病床5万6000床精神病床5万3000床です。

 

厚労省の最新の調査によると、2023年10月時点で、一般・療養病床の合計(有床診療所の病床を含む)は約123万2000床、精神病床は約31万9000床となっています。

 

削減の詳細な内訳はまだ明らかになっていませんが、もし11万床削減が実現すると、一般・療養病床は計117万6000床精神病床は26万6000床ほどになります。

2025年版 削減される病床の推移。一般・療養病床は2023年の合計約123万2000床(内訳:一般病床88万2862床、療養病床27万3745床、有床診療所7万5780床)から、2027年には約117万6000床に減少、5万6000床削減予定。精神病床は2023年の約31万9000床から、2027年には約26万6000床に減少、5万3000床削減予定。出典:厚生労働省「2023年医療施設調査」、自民党、公明党、日本維新の会「社会保障改革に関する実務者協議」(2025年6月6日開催)

11万床削減の期限は2027年4月とされ、「新たな地域医療構想」の開始までに達成を目指す方針です。

 

現行の地域医療構想では「2025年の必要病床数(一般・療養)は119万1000床」としてきました。しかし、人口減少が続くことなどから、2040年を見据えた「新たな地域医療構想」の必要病床数はさらに減少すると見込まれます。

 

そこで「新たな地域医療構想」が始まる2027年4月までに、2025年の目標病床数をクリアしておきたいという狙いがあるとみられます。

 

看護師にはどんな影響があるの?

訪問看護師のイメージ画像

では、病床が11万床減ると、看護師にはどのような影響があるのでしょうか。

 

1つ目に、病院における看護師の需要が減少することが見込まれます。

 

病院の規模が縮小して必要とされる看護師の数が単純に減少するだけでなく、病棟の機能転換も進むことが予想されます。

 

7体1から10対1や13対1などに変わる病棟が増えれば、「病棟看護師」の全体数がさらに減っていく可能性があります。

 

2つ目は、在宅医療のニーズがより高まり、看護師の需要が医療機関から地域や在宅へと移っていくことが挙げられます。

 

訪問看護の増加など、在宅医療の体制づくりがさらに強化されていくでしょう。

 

特に精神病床は削減の割合が大きいため、「入院から地域生活へ」という流れがさらに加速する可能性が高く、精神科看護師の活躍する場が変化しそうです。

 

3つ目に病院の再編・統合が加速して、地域の病院数が減るかもしれません。

 

病床数の削減によって再編・統合を余儀なくされた病院が増えれば、統合先の病院へ異動となる看護師も増えます。

 

病院勤務を望む看護師にとっては、就職先の選択肢が狭まることにもつながります。

 

病床削減には懸念の声も…

11万床の削減案は2025年中に決定されるとみられますが、次のような懸念の声もあります。

 

  • 数値目標にこだわりすぎず、今後のニーズを踏まえて検討するべきでは
  • 医療費を1兆円削減できるという試算は妥当なのか
  • 新型コロナ流行時に起きた病床逼迫の経験を踏まえているのか

 

日本医師会は、「11万床削減という数字が独り歩きすることにより、患者や医療現場に不安、混乱が起きるのでは」「病床削減ありきではなく、地域で必要な入院医療がなくならないよう検討するべき」としています。

 

まだ詳細は明らかになっていませんが、看護師の働き方にも大きく関わる政策です。今後の行方に注目です。

 

看護roo!編集部 北井寛人

 

 

(参考)

自民党、公明党、日本維新の会「社会保障改革に関する実務者協議」(2025年6月6日開催)
厚生労働省「地域医療構想について
厚生労働省「新たな地域医療構想等に関するとりまとめ
厚生労働省「新たな病床機能の再編支援について
厚生労働省「2023年医療施設調査

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