夜勤「72時間ルール」って、なんで72時間なの?

「看護師1人当たりの月平均夜勤時間を72時間以内にすること」と定めた、いわゆる「72時間ルール」。看護師なら一度はにしたことがありますよね。

 

でも、そもそもどうして「72時間」なのでしょうか?

1カ月の夜勤時間が72時間を超えると、看護師の健康にどんな影響があるのでしょうか?

 

「夜勤を月72時間以内に抑えるべき理由」について、日本看護協会の調査結果が報告されました(2018年5月23日開催「都道府県看護協会 看護労働担当者会議」)。

 

 

実はなかった「72時間ルール」のエビデンス

看護師の夜勤72時間ルールの概念図、72時間は3交代(8時間)で9回分、2交代(16時間)で4.5階分に相当する

 

「72時間ルール」は、夜勤による看護師の負担を軽くするため、2006年度の診療報酬改定で設けられました。平均夜勤時間が月72時間を超えた場合は、病院に支払われる報酬(入院基本料)が減らされるというペナルティー付きのルールです。

 

これを守るには多くの夜勤人員が必要なので、看護師採用に苦労している病院にとっては厳しいルール。もともと日本看護協会は「64時間にすべきだ」と主張していたものの、病院団体の反発が強く「72時間」で決着した-という経緯があります。

 

実は「72時間」に科学的な根拠があったわけではないんですね。

 

ルール導入後も、2年に1度の診療報酬改定のたびに

「72時間ルールを緩和してほしい、撤廃してほしい」と求める病院団体と、

「絶対に譲れない!」と主張する日本看護協会が攻防を展開。

 

2016年度の診療報酬改定では、平均夜勤時間の計算方法が一部変更され、1カ月の夜勤時間が長くなった看護師が増えるなど、事実上のルール緩和だと指摘されています=34%が基準時間超。一部のナースに夜勤が集中するワケ=。

 

そこで、さらなるルール緩和を求める声を牽制するために、日看協が「72時間以内に抑えるべきエビデンス」の調査研究に乗り出したというわけです。

 

 

72時間を超えると「間違いが増える」「考えがまとまらない」

今回の調査では、全国24病院の看護師に2週間の生活スケジュールを記録してもらい、「夜勤が月72時間以下」と「72時間超」で、どんな違いがあるかが分析されました。

 

それによると、1カ月の夜勤時間が72時間を超えると、「考えがまとまらない」「イライラする」「することに間違いが多くなる」など、疲労自覚症状Ⅱ群といわれるストレス症状が強まることがわかりました。さらに、自覚症状Ⅲ群(疲労感)を起床時に感じやすい傾向も夜勤72時間超で強くみられました。

 

疲労の自覚症状の種別

疲労自覚症状の項目、1群(眠気とだるさ)は頭が重い、全身がだるい、頭がぼんやりするなど、2群(情動ストレス)は考えがまとまらない、話をするのが嫌になる、イライラするなど、3群(疲労感)は頭が痛い、肩がこる、腰が痛いなど

 

日看協は「月72時間を超える長時間の夜勤は、健康面だけでなく、医療安全の面でも悪影響が出ることが明らかになった」としています。

 

 

72時間を超えると「休日が眠い…」

調査では、眠気を感じた回数も尋ねています。

眠気を感じた回数を調べた結果表、「休日の眠気」に有意差が生じた

 

「72時間以下」よりも「72時間超」のグループが全体に眠気を多く感じてはいますが、有意差が見られたのは「休日の眠気」でした。「72時間以下」のグループが休日に眠気を感じた回数は平均2.2回なのに対し、「72時間超」のグループは3.5回となっています。

 

「疲れてヘトヘト、休みの日はとにかく寝ている」「仕事中は気を張っている分、休日にドッと疲れが…」といったことは、多くの看護師が経験のあるところ。夜勤時間が長いほど疲労が残り、せっかくの休日も眠気に襲われて有意義に使えていないことがわかります。

 

 

看護師の夜勤に法的な上限規制を

現在の労働法では、看護師の夜勤時間の上限に関する規制はなく、止めをかける決まりは唯一、診療報酬に組み込まれた「72時間ルール」だけとなっています。

 

その「72時間ルール」もあくまで病棟の看護師全体の平均時間であって、一人一人の夜勤の上限を定めているわけではありません。一部の看護師に夜勤が集中してしまうのを防ぐためのルールにはなっていないのが現状です。

 

今回の調査結果を受けて、日看協は「1カ月の夜勤時間は72時間以内とするべきだ。夜勤を行う看護職員すべてが対象となるような法規制が必要だ」とし、医療者の働き方改革に関する議論の場などで訴えを強めていく考えです。

 

看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko

 

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(参考)

「平成30年度 都道府県看護協会 看護労働担当者会議」資料(日本看護協会

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