小児への除細動(AEDを用いる場合)
『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』(インターメディカ)より転載。一部改変。
今回はAEDを用いる場合の除細動について解説します。
佐々木祥子
東京都看護協会/小児看護専門看護師
小沼貴子
練馬光が丘病院/小児救急看護認定看護師
AEDが到着し、準備ができるまでの間は、絶え間なく胸骨圧迫を続ける。
自動解析中は全員が患児から離れ、音声ガイドに従い電気的除細動(ショックを与えて洞調律に戻す)を実施する。
除細動の目的
致死的不整脈に対し、電気的刺激を加え、洞調律に戻す。
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除細動の適応
- 1心室細動(VF)、無脈性心室頻拍(pulseless VT)
- 2反応、呼吸、脈拍がない場合
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AEDの適応
絶対的適応は、VFとVT
自動体外式除細動器(Automated External Defibrillator:AED、図1)は、心原性心停止の心室細動(VF)、無脈性心室頻拍(pulseless VT)といわれる致死的不整脈の場合のみ、電気的除細動の必要があると機械が判断し、自動的に充電を行う。
図1 自動体外式除細動器(AED)

正常な心電図や完全に動きが止まっている心静止の場合には、充電を行わない仕組みになっている。
突然の心停止のうち、最も一般的なきっかけはVFであるとされている。
●VFは、心臓が震えるだけで、血液を送りだすことができない状態である。
●VFをそのままにしておくと、心静止に至るため、速やかにショックを行い、洞調律に戻す必要がある。
●除細動の成功率は、時間経過とともに急速に低下する。
1歳未満の乳児でもAEDが適応
「AHAガイドライン2010」より、乳児の除細動にはAEDよりも手動式除細動器の使用が望ましいとされている。手動式除細動器が使用できない場合は、AEDに未就学児用の電極パッドがあれば接続し、除細動を行う。未就学児用パッドがない場合は、小学生~大人用パッドを代用することができる。
小児・乳児の場合、呼吸原性の心停止が多い。乳児では、低酸素などの気道トラブルによる虚脱が多く、気道確保と人工呼吸のみで回復する可能性がある。万一、心肺停止(CPA)であれば、一刻も早い良質の心肺蘇生法(CPR)が必要となる。
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AEDの手順
1 電源を入れ、電極パッドを装着
❶AEDの携帯用ケースまたは蓋をあける(図2)。
図2 AEDをあける

ボタンを押し、電源を入れる(図3)。同時に音声による手順のガイドが始まる。
*ケースや蓋を開けると自動的に電源が入る製品もある。
図3 ボタンを押して電源を入れる

❷患児の胸を開き、電極パッドの貼付部が汗などで濡れている場合は素早く拭く。
電極パッドを取り出し、 ① 胸骨の右上部、②左腋窩の下・乳頭の左に貼付する(図4)。
電極パッドの貼付位置は、①前胸部(心尖部)、②背部でもよい(図5)。
自動解析が始まるまで、胸骨圧迫を継続する。
図4 小学生〜大人用パッド

図5 未就学児用パッド


POINT
パッドの選択
■未就学児用パッドは、就学前(およそ6歳)までの小児に使用。
■就学児以上の小児に対しては、小学生〜大人用パッドを使用する。
■電極パッドの電気量は、小学生〜大人用が150J、未就学児用が50Jに設定されている。
■未就学児用パッドがない場合には、小学生〜大人用パッドを使用してもよい。その際、パッド同士を接触させないよう注意。
2 心電図の解析と除細動の実施
❶AED本体と電極パッドの接続ケーブルを接続する。製品によっては、あらかじめ接続されている場合もある。
AEDによる自動解析が始まる。音声ガイドに従い、全員が患児から離れる(図6)。同時に大声で指示し、だれも患児に触れていないことを目視確認する。
図6 音声ガイドに従い患児から離れる

EVIDENCE
■解析中、患児に触れていると正しく解析できない。
■ショック時に患児に触れると感電の危険がある。
❷「ショックを実行します」の音声ガイドに従い、ショックボタンを押す(図7)。ショックを与えたら、速やかに心肺蘇生法を開始する。
図7 ショックボタンを押す

約2分後、再度解析が始まり「患者に触れないでください」という音声ガイドが流れる。再び全員が患児から離れ、大声による指示とともに、だれも触れていないことを目視確認する。
ショック実施後のフローは図8のとおり。
図8 ショック実施後のフロー

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本連載は株式会社インターメディカの提供により掲載しています。
単行本に収録されているWeb動画は掲載していません。視聴されたい場合は、単行本をお買い求めください。
[出典] 『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』 監修 山元恵子/編著 佐々木祥子/2022年7月刊行/ インターメディカ


