小児の胸骨圧迫
『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』(インターメディカ)より転載。一部改変。
今回は小児の胸骨圧迫について解説します。
佐々木祥子
東京都看護協会/小児看護専門看護師
小沼貴子
練馬光が丘病院/小児救急看護認定看護師
10秒以内に呼吸を観察する。熟練した救助者は、呼吸と同時に脈拍を確認する。
呼吸と脈拍が確認できない、または判断に迷う場合は、心停止と判断。ただちに、胸骨圧迫を行う。
胸骨圧迫の目的
心肺停止、あるいはその疑いのある小児に対し、心臓を外部より圧迫して循環を補助する。
目次に戻る
胸骨圧迫の適応
- 110秒以内に呼吸と脈拍が確認できない、または判断に迷う場合。
- 2心拍数60回/分未満の場合。
目次に戻る
胸骨圧迫の手順
循環状態の確認
脈拍の触知は、小児では頸動脈か大腿動脈、乳児では上腕動脈に、示指・中指・薬指を当てて行う。
乳児の場合は、頸部が短く、動脈が触れにくいため、上腕動脈で脈拍を確認する(図1)。
図1 上腕動脈の場合

図2 大腿動脈の場合
胸骨圧迫(乳児の場合)
胸部中央の乳頭間線のすぐ下に指を置き、圧迫部位(図3)とする。
図3 乳児の圧迫部位

1人で行う場合
胸部中央の乳頭間線のすぐ下に2本の指を置き(図4)、胸の厚さの約1/3の深さ(約4cm)まで、1分間に100~120回のテンポで圧迫する。
胸骨圧迫30回ごとに、人工呼吸2回を実施する。
図4 1人で行う場合

POINT
■圧迫を行うたびに胸壁が元に戻るまで待つ。
■圧迫を解除したとき、指先を圧迫部位から離さないよう注意!
■2本の指もしくは2本の親指で胸骨の1/3の深さ(約4cm)を圧迫する。困難な場合は、片手の手根を使用してもよい。
2人で行う場合
両手の母指を胸部中央の乳頭間線のすぐ下に置き、他の4指は体側に当てる(図5)。両母指で同時に胸骨を圧迫。胸の厚さの約1/3の深さ(約4cm)まで、1分間に100~120回のテンポで圧迫する。
胸骨圧迫15回ごとに、人工呼吸2回を実施する。
図5 2人で行う場合

POINT
■2本指法より、適切な強さ、深さが安定して得られる。
■母指は圧迫部から離さない。
胸骨圧迫(小児の場合)
❶胸部中央の胸骨下半分の胸骨上に実施者の片手または両手を置く(図6)。片手で行う場合は、もう片方の手を患児の前額部に置く。頭部を後屈し、気道確保を維持する。
❷胸の厚さの約1/3の深さ(約5cm)まで、1分間に100~120回のテンポで垂直に圧迫する。片手では十分な圧迫ができない場合は、両手を重ねて行う。
胸骨圧迫30回ごとに、人工呼吸2回を行う。
図6 小児の圧迫部位

実施者が2人の場合は、胸骨圧迫15回ごとに、人工呼吸2回を行う(図7)。
図7 2人で行う場合

POINT
バッグバルブマスク法
■人工呼吸は、バッグバルブマスク法で行う。
■母指・示指で「C」の字をつくるようにマスクを固定し、残り3 指で「E」の字をつくり、下顎挙上を維持する(図8)。
図8 バッグバルブマスク法

蘇生バッグの選択
■蘇生バッグには、バッグバルブマスクとジャクソンリースがある(図9)。バッグバルブマスクは操作が簡単であるが、ジャクソンリースの操作には技術の習熟を要する。
図9 バッグバルブマスクとジャクソンリース

■バッグバルブマスクには250mL、500mL、1500mLの容量があり、患児に適した容量のバッグを使用する。
■バッグバルブマスクの使用前には、圧レリーフ弁が作動しているか、バッグやリザーバーバッグに亀裂・破損がないかを確認する。
目次に戻る
本連載は株式会社インターメディカの提供により掲載しています。
単行本に収録されているWeb動画は掲載していません。視聴されたい場合は、単行本をお買い求めください。
[出典] 『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』 監修 山元恵子/編著 佐々木祥子/2022年7月刊行/ インターメディカ


