小児の口鼻腔吸引の目的と手順
『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』(インターメディカ)より転載。一部改変。
今回は口鼻腔吸引の目的と手順について解説します。
山元恵子
富山福祉短期大学看護学科長
小児は上気道が狭く、また、自分の力で鼻汁や分泌物を排出することができないため、閉塞を起こしやすい。
呼吸困難の予防、呼吸の安楽を図るため、口鼻腔吸引を実施する。
口鼻腔吸引の目的
気道分泌物などを吸引し、呼吸困難の予防、呼吸の安楽を図る。
目次に戻る
口鼻腔吸引の種類
吸引カテーテル法、鼻腔管法
目次に戻る
吸引時の留意点
小児の鼻腔粘膜・気道粘膜は傷つきやすいので慎重に!
吸引は、小児に苦痛や恐怖を与える処置である。事前に小児と家族に説明し、同意を得る必要がある。
一時的に、必要最小限の身体の抑制を行う場合があることも説明し、理解を得る。
口鼻腔吸引は、清潔操作で行う。気管内吸引は、無菌操作で行う。
吸引時は以下の点に留意する。
1.小児の鼻腔粘膜・気道粘膜は柔らかく傷つきやすいため、慎重な吸引操作が必要である。
2.カテーテル挿入は吸気に合わせて行う。
3.苦しくなったときは手を握るなどの合図を決めておく。
4.聴診により分泌物の有無や呼吸音・呼吸状態を確認しておく。
小児の口鼻腔吸引は、吸引圧40kPa以下で行う。ただし、吸引圧は分泌物の固さ、カテーテルの太さによって大きく異なる(図1)。
図1 口鼻腔吸引のカテーテル

吸引圧の単位はmmHgとPaに表示が混在している(表1)。
安全な吸引圧は80~120mmHgとされているが、分泌物の状態や手技によって変化する。
表1 口鼻腔吸引のカテーテルサイズと吸引圧の目安(1mmHg=133.32Pa)

目次に戻る
口鼻腔吸引の手順
1 必要物品の準備と説明
必要物品を準備し(図2)、患児と家族に説明を行う。
吸引カテーテルは患児に合ったサイズを用意する。
実施者は、手洗いを行い、手袋を装着する。
図2 必要物品

①吸引カテーテル(8Fr・10Fr・12Fr)/鼻腔管
②水
③紙コップ
④アルコール綿
⑤手袋
⑥聴診器
⑦プラスチックエプロン
POINT
■鼻汁を吸引する場合は、鼻腔管を用いる。
2 吸引カテーテル法の実施
❶吸引器をONにし、チューブを折り曲げて指定の圧力(20~40kPa)があることを確認する(図3)。
図3 吸引器をONにして指定の圧力を確認する

POINT
■指定の圧力を確認する。
❷吸引カテーテルを接続部側から開封する(図4)。
図4 吸引カテーテルを開封する

POINT
■開封は接続部側から行う。接続部以外には、触れないようにする。
■手袋・プラスチックエプロンを装着し、感染を予防する。
❸吸引器のチューブと吸引カテーテルをしっかりと接続する(図5)。
図5 吸引器のチューブと吸引カテーテルを接続する

POINT
■脱落しないよう、しっかりと接続!
❹介助者は、患児の頭部・顔を両手で固定する。実施者は、患児に声をかけ、吸引カテーテルを指で折り曲げて圧をかけずに、鼻腔に挿入する(図6)。
図6 吸引カテーテルに圧をかけずに鼻腔に挿入する

POINT
■半坐位や抱っこで、動かないよう固定。
■泣いているとき、体動が激しいときは無理に挿入せず、しばらく待つ。
■粘膜を傷つけないよう注意。
❺分泌物の手ごたえがある場合は、そこにとどまり、圧をかけて吸引する(図7)。吸引の持続時間は、10秒以内とする。
口腔内吸引も同様に行う。口腔内吸引時は、口蓋垂を刺激しないよう注意する。
図7 分泌物の手ごたえがある場合は圧をかけて吸引する

スムーズに吸引を実施するには
手短かに実施する
必要物品を漏れなく準備し、手短かに実施するよう配慮する。
吸引音をこわがらせないために
吸引器をスイッチONにした後は、「ジェット機の音かな?」などと声をかけ、患児がこわがることがないよう、一緒に吸引音を聞いてみる。
動かないよう固定
半坐位、抱っこなどで、吸引時に患児が動かないよう固定する。患児が暴れるような場合は、バスタオルでくるんで抑制する。
泣いているときは…
泣いているときは、落ち着くのを待つ。無理に施行すると、カテーテルで粘膜を傷つける場合がある。
3 カテーテルの後始末(乾燥法の場合)
❶❷アルコール綿でカテーテル表面を拭き、水を吸引して内腔を洗浄する(図9、図10)。
図9 アルコール綿でカテーテル表面を拭く

図10 水を吸引して内腔を洗浄する

POINT
■カテーテル表面は、アルコール綿で清拭。
■カテーテル内腔は、通水して洗浄。 内腔の水滴がなくなることを確認。
■洗浄用には、使い捨てできる紙コップを使用するとよい。
【注意】
■吸引用の水を病室に置きざりにしたら、患児が飲んでしまった!
→ 吸引実施後は、必ず持ち帰る。
❸吸引器の圧力調整をOFFにする(図11)。吸引カテーテルを吸引器のチューブから外す。
図11 吸引器の圧力調整をOFFにする

❹カテーテルを空の紙コップに入れ、乾燥させておく(図12)。
図12 カテーテルを乾燥させておく

POINT
■吸引カテーテルを再使用する場合は、空の容器に入れて乾燥させておくことがポイント。
鼻腔管吸引の場合
鼻水を吸引する
鼻腔管は、鼻水を吸引するために使用する。あらかじめ水を通して吸引圧を確認。介助者は、患児の頭部・両腕を固定する(図13)。
図13 介助者は患児の頭部・両腕を固定する(抑制法)

実施者は、チューブを折り曲げて圧をかけずに、鼻腔管を鼻腔に挿入する(図14)。鼻水の手ごたえのある所でとどまり、吸引を実施する。
図14 鼻腔管を鼻腔に挿入する

POINT
■挿入時はチューブを折って、圧をかけない。
■吸引の持続時間は、10~15秒以内。
目次に戻る
本連載は株式会社インターメディカの提供により掲載しています。
単行本に収録されているWeb動画は掲載していません。視聴されたい場合は、単行本をお買い求めください。
[出典] 『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』 監修 山元恵子/編著 佐々木祥子/2022年7月刊行/ インターメディカ



