緊急度判断と前ぶれサインの察知

『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載。一部改変。
今回は緊急度判断と前ぶれサインの見抜き方について解説します。

 

道又元裕
Critical Care Research Institute(CCRI)代表

 

 

急変アセスメントは、「緊急度の判断」と「前ぶれサインを見抜くこと」の2種類に分けられます。

 

患者にとって最良なのは「前ぶれサインの段階で見抜いて対応し、急変を未然に防ぐ」ことです。そのことを常に念頭に置くことが大切です。

 

緊急度判断のコツ

BLS(一次救命処置)を必要とする超緊急事態、すなわち、心停止・呼吸停止・意識消失・けいれんなどは、夜間など観察しづらい場合を除き、「明らかに患者の状態がおかしい」と気づくことは、比較的容易です。

 

一方、緊急度は高いものの、アセスメントしづらいのは、心停止につづく重大事象であるショックです。ショックの見きわめで重要なのは「バイタルサインの異常を見落とさないこと」「特徴的な症状を見落とさないこと」の2つです(図1)。

 

図1 「病棟だからこそ」おさえておきたいショックの関連性

「病棟だからこそ」おさえておきたいショックの関連性

 

1 ショック時のバイタルサイン

ショックと聞いて、真っ先に思い浮かぶのは血圧低下だと思います。

 

確かに、収縮期血圧90mmHg以下でショックを疑うのは鉄則です。しかし、血圧が90mmHg以上でも「普段の血圧より40mmHg低い」場合には、ショックを疑って対応したほうがよいでしょう。

 

なお「血圧が低下していないからショックではない」と早合点するのはやめましょう。患者状態やショックの種類によっては、血圧低下がみられないこともあるためです。

 

その他、ショックを示唆するバイタルサイン変化としては、心拍数増加(200回/分以上)、意識障害(JCS2桁以上、GCS10点以下、不穏・興奮)、発熱(39℃以上)などがあります。

 

「患者の様子が、何だかおかしい」と感じたら、血圧だけでなく、これらを意識しながらアセスメントしてみてください(表1)。

 

表1 アセスメントの流れ

アセスメントの流れ

 

2 ショックと臨床症状

ショックの5Pという言葉を聞いたことがある方も多いことでしょう。蒼白虚脱冷汗脈拍不触呼吸不全の5つは、ショックを示唆する徴候です。このうち呼吸不全は、急激に進行するアナフィラキシーショックを除いては、比較的ゆっくり出現することを知っておくとよいでしょう。

 

上記の他に、尿量低下(0.5mL/kg/時以下)、CRTの遷延などもショックを示唆する徴候です。

 

 

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前ぶれサインを見抜くコツ

先輩看護師が「あの患者さん、急変するかも」と言った数時間後、本当に患者が急変して驚いたという経験はありませんか?

 

この先輩看護師の一言は、急変の前ぶれサインを察知した結果、発せられています。前ぶれサインを知っておくと、ショックに至る前に治療が開始できるため、患者を急変させずに済む可能性も高まります。

 

前ぶれサインの多くは、見る聴く触れることでわかります。顔面蒼白、不安、めまい、冷汗、起座呼吸、著明な、末梢の温感、シバリング、腹部膨満などが、前ぶれサインと考えられます。

 

また、患者や家族の訴えからわかることも、多くあります。

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社

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