術後の発熱には解熱薬を投与したほうがいい?

『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』より転載。

 

今回は「術後発熱に対する解熱薬の投与」に関するQ&Aです。

 

久保健太郎
大阪市立総合医療センター看護部
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長

 

術後の発熱には解熱薬を投与したほうがいい?

 

ルーチンに解熱薬を投与することは推奨されません。ただし心臓、呼吸器、神経などに基礎疾患がある場合は早めに解熱するのが無難でしょう。

 

〈目次〉

 

術後の発熱のメカニズム

術後は、手術侵襲によって炎症性サイトカインが産生・分泌されます。サイトカインは情報伝達物質であり、全身に侵襲の発生を伝え、適切な生体反応を起こさせる役割を担います。生体反応の1つとして視床下部の体温調節中枢にサイトカインが作用することで発熱が起こります(図1/文献1)。

 

図1侵襲時の生体反応

侵襲時の生体反応

 

樽井武彦,山口芳裕,門田守人:生体反応の発動機序.外科2007;69:751-756.より引用

 

術後の体温管理に関する指針は存在しない

周術期の体温管理については、術中の低体温予防の分野は研究が進みガイドラインがありますが、術後の発熱を解熱すべきかどうかについては一定した見解はありません(memo)。解熱によるメリット・デメリット(表1)を考えたうえで、その必要性を判断する必要があるでしょう。

 

表1解熱のメリット・デメリット

 

メリット
  • 患者の不快感を軽減
  • 呼吸需要および心筋酸素需要を減少
  • 脳神経障害リスクの減少
  • 死亡リスクの減少
デメリット
  • 解熱薬による副作用(腸障害、肝障害、腎障害など)
  • 免疫反応の抑制
memo解熱したほうがよいのか?

術後だけでなく、発熱全般に関して、患者アウトカムに関連した研究が少なく、解熱をしたほうがよいのか悪いのかの結論はいまだ出ていない。

 

いずれにしても体温38度以上などの理由でルーチンに解熱薬を投与することは控え、基礎疾患がなく全身状態が安定している場合は経過観察でもよさそうです。

 

ただし心臓、呼吸器、脳神経障害などの基礎疾患がある場合は、早めに解熱するのが無難でしょう。さらに、感染症が疑われる場合には、解熱薬によって発熱を不顕性化することが診断の妨げになる可能性があり、免疫反応の抑制を避けるためにも解熱薬は慎重に投与すべきです。敗血症の場合、解熱薬の投与が死亡率を悪化させるという報告もあります(文献3)。

 

「体温38 度以上で解熱薬」という指示をよく見ます。
38 度以上になったら必ず解熱薬を投与しなければいけないのですか?

 

そんなことはありません。
「体温38 度以上で患者の希望時・不快時に解熱薬」と指示すべきですね。

 


[文献]

  • (1)樽井武彦,山口芳裕,門田守人:生体反応の発動機序.特集 外科的侵襲に対する生体反応の最新情報, 外科 2007;69:751-756.
  • (2)江木盛時:その“クーリング”見直してみよう 発熱&解熱の「いまわかっていること」.エキスパートナース 2013;29(3):64-72.
  • (3)Lee BH, Inui D,Suh GY, et al. Association of body temperature and antipyretic treatments with mortality of critically ill patients with and without sepsis;multi-centered prospective observational study.Crit Care 2012;16:R33.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社

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