術前に発熱がある場合、 手術は行えない?

『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』より転載。

 

今回は「術前の発熱」に関するQ&Aです。

 

栄 政之
大阪市立総合医療センター肝胆膵外科(消化器外科兼務)
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長

 

術前に発熱がある場合、手術は行えない?

 

はい。発熱がある際は原則として手術を延期したほうが安全です。しかし、原因や病態によっては手術を施行する場合もあります。

 

〈目次〉

 

なぜ発熱があると手術を延期するの?

日本手術医学会が定める「手術医療の実践ガイドライン」(1)には、「37.5℃を超えるような発熱時は、代謝が異常に亢進しているため、さらに麻酔・手術侵襲を加えることは避けたほうが望ましい。ただし、緊急手術や原因が手術対象疾患である場合は、そのかぎりではない。」とあります。

 

1.発熱時は全身に負担がかかる

体温が1℃上昇すると、基礎代謝は約13%亢進するため、発熱時は通常時に比べて多くのエネルギーを消費します。加えて食欲も低下することが多いため、エネルギー不足はさらに助長され、体内のタンパク質分解も促進されます。重症時には脱水電解質異常も伴い、頻脈不整脈呼吸数増加など循環や呼吸にも影響が出てきます。

 

2.術中・術後の合併症リスクが増加する

このような、全身に負担がかかり、体力が低下しているときに手術という高侵襲な治療を行うと、免疫応答が正常に機能せず、術中・術後の合併症のリスクが増加します。また、相対的な栄養不足の状態でもあるため、術後の創治癒遅延や、吻合不全などの危険性も上昇すると考えられます。

 

3.上気道炎では術後肺炎のリスクが増加

微熱であってもや痰、鼻水といった風邪症状を伴っている場合は、注意が必要です。このような上気道炎発症時には気道過敏性が亢進しており、全身麻酔の際の気管挿管中に痰の分泌が増加し、術後肺炎のリスクが増加します。Nandwaniらは成人の上気道炎患者では、発症9日目までは気道過敏性の亢進が持続するとしています。

 

予定手術の際に上気道炎症状が見られたときには2週間程度手術を延期するのが一般的なようです。

 

発熱があっても手術するケース

発熱の原因が手術をしないと治らない疾患(例:虫垂炎や胆囊炎など)の場合や、手術をしなければ命にかかわる緊急手術(例:消化管穿孔や絞扼性イレウスなど)では発熱があっても手術を施行することがあります。

 


 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社

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