脈拍測定時、首を曲げたり回したりしてはいけないのはなぜ?

 

『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は脈拍測定に関するQ&Aです。

 

江口正信
公立福生病院診療部部長

 

脈拍測定時、首を曲げたり回したりしてはいけないのはなぜ?

 

鎖骨によって鎖骨下動脈が押さえられ、橈骨動脈まで脈波が伝わらなくなることがあるためです。

 

〈目次〉

 

脈波が伝わりにくくなるのは

橈骨動脈での脈拍の触診時は、被検者は首を曲げたり回したりしてはいけません。これは、首を曲げることによって鎖骨が後下方へ引っ張られ、鎖骨下動脈が圧迫されてしまいます。

 

そのため首を曲げた側の末梢部にある橈骨動脈まで脈波が伝わらなくなることがあるからです。また前斜角筋による鎖骨下動脈の圧迫が生ずることもあります。

 

橈骨動脈で脈拍が触れない場合は

橈骨動脈での触診で脈拍が触れない場合は、①大動脈炎症候群などの血管の炎症や血栓、塞栓形成によって動脈の内腔が極端に閉塞した場合、②橈骨動脈の走行異常があり、通常の場所で脈拍が触れない場合などがあげられます。

 

前者では、一方の橈骨動脈で脈拍が触れなくても、反対側の橈骨動脈では脈拍が触れることがあります。すなわち脈拍の左右差が生じます。

 

さらに急性心不全(左心不全)や僧帽弁狭窄症、低血圧や高度の貧血(大量の出血)などでは、脈拍の緊張度が低下し、脈拍が触れにくいことがあります。

 

以上の原因以外にも橈骨動脈の脈拍が触れにくいことがありますが、そういう場合は、被検者に手掌を握ったり拡げたりする動作を10~15回程度くり返させ、その後触診すると、脈拍の測定がより容易に行なえることがあります。

 

⇒この〔連載記事一覧〕を見る

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版

SNSシェア

看護知識トップへ