インスリン皮下注射を静脈注射し、患者さんの意識が混濁した!

『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、患者さんにインスリン皮下注射を静脈注射をしたら、意識が混濁してしまった場合について解説します。

山﨑 優介

広島市立北部医療センター安佐市民病院 看護部
糖尿病看護認定看護師

 

 

患者にインスリン皮下注射を静脈注射したら意識が混濁してしまい、その様子に焦っている看護師のイラスト

 

ピンチを切り抜ける鉄則

インスリン注射の基本は皮下注射です。
インスリンの中で速効型インスリンだけは筋肉注射や静脈注射が可能ですが、作用発現時間が短く低血糖には十分注意しなければいけません。
普段からインスリン製剤の種類や作用時間を理解しておくと投与経路の間違い防止につながります。

 

POINT
  • 薬剤投与する際は6Rを確認することが基本です(正しい患者、正しい薬剤、正しい用量、正しい方法、正しい時間、正しい目的)。
    注射薬の場合、投与経路を間違えることで患者さんに大きな影響を及ぼすこともあるので要注意です。

 

 

起こった状況

症例

患者Aさん。急性心筋梗塞に対して経皮的冠動脈形成術を行い、入院中は毎食前にヒューマリンR皮下注射するように指示が出ました。
その日担当となった新人看護師が、ヒューマリンRを静脈注射と勘違いし、食事の30分前に点滴の側管から投与しました。


30分後に新人看護師が配膳に行ったところ、Aさんの意識が混濁しているところを発見しました。
どうすればいいかわからずオロオロしているところをリーダー看護師が発見しました。

 

 

どうしてそうなった?

ヒューマリンRを静脈注射したことで、インスリンの作用が早く出てしまい低血糖を起こしたものだと思われます。
ヒューマリンRを皮下注射する場合、通常作用発現までは30分程度あるため、食事の30分前に投与することになります。
しかし、静脈注射を行った場合は作用発現時間が短くなり、5分以内に作用が発現します。
この場合、早急に低血糖対応を行う必要があります。

 

 

どう切り抜ける?

1 迅速評価・一次評価を行う

意識障害など急変の場面においては、例え低血糖を強く疑っていたとしても、迅速評価・一次評価を行うことが重要です。
まずは、患者さんが危険な状態になっていないか判断しましょう。

 

2 血糖測定を行う

インスリン静脈注射を行った後の意識障害であるため、静脈注射の影響で低血糖を起こしていることが強く疑われます。
意識障害の場合は、まず血糖測定を行い、低血糖を除外することが重要です。
血糖測定で低血糖を起こしていることを確認したら、速やかに低血糖対応を行います。

 

3 速やかに低血糖対応をする

低血糖とは一般的に70mg/dL未満のことを言い、低血糖を起こしている場合は、速やかに低血糖対応を行う必要があります。
意識がある(経口摂取が可能な)場合と、意識がない(経口摂取が不可能な)場合では対応が異なります。


Aさんの場合は、意識が混濁しているため経口でブドウ糖を投与することは避け、末梢静脈路から20%グルコース注射液40mLもしくは50%グルコース注射液20mLを静脈内投与します。
投与15分後に血糖再検し、血糖が上がっていることを確認するとともに、意識レベルが回復したことを確認します。

 

4 再度低血糖になることを予防する

一時的に低血糖が改善しても、インスリンの作用が続いている間は再度低血糖を起こす可能性があります。
ヒューマリンRは速効型インスリンで、作用持続時間は5〜8時間となるため、その間は低血糖に注意していく必要があります。


この症例のAさんの場合では、ブドウ糖投与後に意識が完全に回復し、食事が食べられれば低血糖を再び起こす可能性は低くなります。
しかし、よく臨床の場面で見かける「インスリンを注射したもののご飯が食べられなかった」という場面では、インスリンの作用が続いている間はブドウ糖液を持続点滴するか補食をすることが必要になります。
インスリン製剤の種類と作用時間を参考にしてください(表1)。

 

表1インスリン製剤の種類と作用時間

インスリン製剤の種類と作用時間をあらわす表

※製剤によって効果が異なるため、詳細については製剤添付文書の確認が必要である。

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社

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