カテコラミンを交換したら、血圧が低下した!

『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、三方活栓の向きが異なり、カテコラミンが投与されなかった場合について解説します。

山川 貴史

沖縄県立南部医療センター・こども医療センター看護部
クリティカルケア認定看護師

 

 

 

三方活栓の向きが異なり、患者にカテコラミンが投与されなかったため看護師が焦っているイラスト

 

ピンチを切り抜ける鉄則

患者さんの血圧が低下した場合、まずはバイタルサイン、意識レベルなど全身状態を確認することが重要です。
カテコラミン製剤を使用している場合は、薬剤が確実に投与されているか、三方活栓の向きや刺入部の確認を定期的に行うことが必要です。

 

POINT
  • 輸液ラインに三方活栓をつけることで、1つの輸液投与ルートから複数の薬剤を同時に投与したり、輸液ラインの気泡の除去が簡単に行えるメリットがあります。
    その一方で、三方活栓の不適切な使用による事例報告も多く、取り扱いには注意すべきポイントを知っておく必要があります。

 

 

起こった状況

症例

心不全のためICUに入院した患者Aさん。
ICU入院3日目、循環動態が安定したため一般病棟へ転床となりました。
強心剤としてドブタミン塩酸塩(カテコラミン製剤)5ガンマを持続投与中で、血圧は110/60mmHg、心拍数は70回/分と安定しています。
看護師Aは、ドブタミンの交換のため、新しい薬剤をシリンジポンプにセットして、プライミング後、流量が安定したところで、三方活栓に接続し、コックを用いて切り替え交換を行いました。


30分後、ベッドサイドアラームが鳴り、病室に向かうと、Aさんの顔色が悪く血圧は70/50mmHgに低下、心拍数は100回/分に上昇していました。
先輩看護師が三方活栓のコックの向きが閉塞になっているのに気づき、カテコラミンが投与されていないことが判明しました。

 

 

どうしてそうなった?

カテコラミン製剤は循環作動薬の一種であり、主に心不全やショックの患者さんに使用される薬剤です。
その作用機序は、心臓の収縮力を増強する強心作用と、末梢血管を収縮させることにより血圧を上昇させる作用に分かれます。


カテコラミン製剤の交換には、三方活栓を使用して投与流量を一定に保つ必要があります(図1)。
このように、三方活栓の不適切な使用は患者さんの生命に危険を及ぼす可能性があります。

 

図1カテコラミン交換における三方活栓の使用方法

カテコラミン交換における三方活栓の使用方法を表した図

 

 

どう切り抜ける?

1 まず患者さんの状態を確認する

患者さんの血圧が低下した場合、パッと見たときに、「ショックかもしれない」と気づくことがとても重要です。
バイタルサインの著しい異常や、ショックの症状を認める場合は患者さんのそばを離れずにナースコールなどを使用し、応援を呼びましょう。
ショックの特徴的な症状に「ショックの5P」があります(図2)。

 

図2ショックの5P

ショックの5Pを表した図

 

バイタルサインの中で最も早く急変を予測するのは「呼吸数」の上昇です。
①呼吸数が22回/分以上、②意識状態がおかしい、③収縮期血圧が100mmHg以下または平常時の20%程度の低下の2つ以上が見られた場合は特に注意が必要です

 

2 血圧低下の原因を検索する

血圧を規定する因子は、前負荷(循環血液量)、心収縮力、後負荷(末梢血管抵抗)の3つです。
これら3つの異常から、ショックは4つに分類されます(図3)。

 

図3ショックの分類

ショックの分類を表した図

 

ショックの分類は低血圧の原因を検索する場合に役立ちます。
患者さんの個別の要因、薬剤の影響、医療機器の影響などを包括的に観察することが重要です。

 

3 三方活栓の取り扱い方法を知る

三方活栓の種類は、1バータイプと3バータイプがあり、コックの位置により流路の閉鎖と開放が逆になります(図4)。

 

図4三方活栓の種類(文献2より引用)

三方活栓の種類を表した図

 

PMDA医療安全情報によると、三方活栓の向きが不適切で薬剤が投与されなかった事例、接続部が外れ患者さんの血液が漏出した事例、接続部の破損の事例など、三方活栓の不適正な取り扱いによる医療事故が多く報告されています。
三方活栓の構造を理解し、向きと流路を定期的に確認することが重要です

 

三方活栓のコックの向きが閉塞になっていたこのケースでは、三方活栓を本来の向きに直すのではなく、三方活栓を一度外してから再接続することが鉄則です。
三方活栓を外さずに元に戻してしまうと、閉鎖されていた時間分の薬剤量が溜まっていた圧力とともに体内に投与され、急激な血圧の上昇や心負荷を招くことになりかねません。

 

 

目次に戻る

引用・参考文献 閉じる

1) Singer M, Deutschman CS, Seymour CW, et al. The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock(Sepsis-3). JAMA. 2016;315:801–810.

2) 医薬品医療機器総合機構:三方活栓の取り扱い時の注意について.PMDA医療安全情報 No.48 2016年1月.(2024/3/18アクセス)

 


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

> Amazonで見る   > 楽天で見る

 

[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社

SNSシェア