2017/05/22 のクイズ

Aさんは末梢静脈カテーテルより持続点滴中です（輸液セットのアクセスポートは閉鎖式）。今日のAさんの予定は、9時に本体輸液ボトルの交換、12時に抗菌薬の投与、15時に脂肪乳剤の投与、その後にシャワー浴実施となっています。末梢静脈カテーテル留置中のAさんの管理で適切なものはどれでしょうか？

1. 輸液ボトルはキャップを開けてそのまま輸液セットに接続する。
2. 閉鎖式のアクセスポートから抗菌薬を投与するときは、適切な消毒薬でアクセスポートを軽く拭く。
3. 脂肪乳剤を投与したあとは、注入開始から24時間以内に輸液ラインを交換する。
4. シャワー浴の際は、ヘパリンロックを実施する。

挑戦者4804人　正解率19%

1.　輸液ボトルはキャップを開けてそのまま輸液セットに接続する。: 不正解
輸液ボトルの交換時は、手指衛生と手袋を着用して実施します。ゴム栓部分は滅菌が保証されているわけではないので、交換するボトルのゴム栓部分はアルコール綿で消毒が必要です。消毒後はゴム栓部分に触れないよう、輸液ボトルを交換しましょう^1）。
2.　閉鎖式のアクセスポートから抗菌薬を投与するときは、適切な消毒薬でアクセスポートを軽く拭く。: 不正解
アクセスポートの消毒については、wiping（拭く）からscrubbing（よく拭く）に「血管内留置カテーテル由来感染の予防のためのCDCガイドライン 2011」では記載が変更されています^2）。さらに、3～5秒、70％アルコールでアクセスポートの膜の中隔ポートを拭いただけでは十分に消毒できないともいわれており^2）、それ以上の時間をかけて拭く必要があります。
3.　脂肪乳剤を投与したあとは、注入開始から24時間以内に輸液ラインを交換する。: 正解
血液、血液製剤、脂肪乳剤の投与に使用した輸液ラインは、微生物増殖を促進し、感染のリスクを高めます。そのため、注入開始から24時間以内に交換します。プロポフォールを使用したチューブは、6時間ごと、およびバイアルが変わったときに交換することが推奨されています。血液、血液製剤、脂肪乳剤の投与を行っていない場合の輸液セットの交換は、96時間以上の間隔をあけ、少なくとも7日以内に交換します^2）。
4.　シャワー浴の際は、ヘパリンロックを実施する。: 不正解
原則としてシャワー浴時にへパリンロックは行いません。ヘパリンはカテーテルにコアグラーゼ陰性ブドウ球菌（CNS）の付着を促進するとの報告があり、同時にヘパリンの常用は1日当たり250~500単位の低用量でも血小板減少症や血栓塞栓症や出血の合併症を引き起こす可能性があることが指摘されています^3）。どうしてもロックが必要な場合は、生食ロックを用いましょう^3）。

引用参考文献など

1）平松玉江．末梢静脈カテーテルの挿入・固定・抜去.感染対策必須テクニック．洪愛子編．INFECTION CONTROL 秋季増刊．大阪，メディカ出版，2010，81-3． 2）O`Grady,NP et al．Guidelines for the Prevention of Intravascular Catheter-Related Infections，2011．Am J Infect Control．39（4），2011，S1-34．
3）国公立大学附属病院感染対策協議会．病院感染対策ガイドライン．改訂第2版．東京，じほう，2015，135-8．
4）多湖ゆかり．末梢静脈カテーテルの指導用解説一式セット．INFECTION CONTROL．25（25），2016，29-36．