おうちで死にたい~訪問看護の現場から~【1-3】

『マンガ・ブランク16年の私が看護師に復帰した話』でお馴染みの広田奈都美さんが描く、現代の看取り。

月刊誌『フォアミセス』より特別転載でお届けします!

 

【前回の話】

新人訪問看護師の花が担当している丸岡さん。
介護をしているお嫁さんは、丸岡さんの意思を尊重して自宅での看取りを考えています。

でも、義姉は「病院に入れるべき」と主張するし、夫は頼りない反応…
そんな中、先輩看護師の馬淵がある提案をします。

 

「おじいちゃん…喋れるとよかったねぇ…。」とつぶやくお嫁さん。

 

 

 

 

 

「考えたんですが…介護全て 一度お義姉さんに任せてみましょう。」とお嫁さんに言い出した馬渕さんに、驚き大きな声を出してしまった花。「入院先の手配や介護もこの際、泊まりでやってもらいましょう。お嫁さんは手出ししないよう、旅行でも行ってください。」とさらに続ける馬渕さんに、お嫁さんも「義姉…ですか?倒れますよ…。」と戸惑うと馬渕さんは、「その時はその時です。かわいそうとか言う人は言葉に責任を取って行動に移してもらいましょう。行動のみ人を救えるんです。」ときっぱりと言いました。

 

 

 

馬渕先輩がこの間言ってたことだ…と花は感じながら、お嫁さんも馬渕さんがいうならと納得したようでした。そうして本当にお義姉さんが交代することになり、家に泊まり込み、夜中のオムツ交換、うんちの始末、入院先との面談に資金の準備など…行いましたが、結局2日でギブアップ。自分の体が持たないから帰って来て欲しいと連絡をうけた旦那さんは、「姉さん。親父のことはもう口出ししないでくれないか。こいつは何だかんだで5年もみてくれてたんだ…。」とはっきり伝えました。

 

 

 

お嫁さんは、旅行中のその義姉との出来事を馬渕さんと花に伝えながら「でも…正直旅行中もおじいちゃんのこと心配で、なんだか気が休まらなくって。」と正直な気持ちを明かします。丸岡さん宅から帰る途中、「お嫁さん、どうしてあんなに尽くすんですかね。」と話す花に馬渕さんは、「よくある話で、嫁姑が大変だったんだけど、おじいちゃんはよくかばってくれたそうよ。でもそれだけじゃなくて、介護している日々の中で対話をしてるのよ、喋らなくても。」と運転しながら言いました。

 

 

 

それを聞いて花は、お嫁さんがおじいちゃんに、着替えの時、食事の時等声をかけ、たとえものを言わなくても、だんだん愛情が湧いてくることってある…。返事がなくても話しかけて話しかけて毎日、お世話をしているうちにそういう気持ちが湧いてきたんだなあと感じ、「私も看護師なので、その気持ち…わかります。」と言うと、馬渕さんは、「人としての絆ができたんだと思う。」と答えました。

 

 

 

『ああ…絆か…。』と理解した花は、「丸岡さんもうすぐ、亡くなってしまうんですよ…お嫁さんの気持ちを考えると…。」といつのまにか涙を流していました。涙を流す花を見た馬渕さんは、「だから日常だって言ってるでしょ…こういうひとつひとつが自然な流れの中のひとつなのよ。」と声をかけました。そうして丸岡さんは本当に食べられなくなり、その日がやってきました。

 

 

 

 

先輩が「血圧が落ちてますね。そろそろ他のご家族の方も呼ばれたようがいいでしょう。」とお嫁さんに告げました。後ろで見守る花は、『お嫁さん…どんな気持ちかな…さぞ…』と心配します。するとお嫁さんは、「私ね…おじいちゃんのお世話できて幸せでしたよ。私、子供産めなかったんですよねぇ…さんざんそれでおばあちゃんにいじめられたんですけど…こんな私でも誰かのお世話できるんだなぁって。

 

 

 

大変は大変でしたけど…ほんとに良かったですよ。」とおじいちゃんに語りかけました。その時、丸岡さんが口を開けて何かを言おうとしているのがわかりました。花は、『ありがとう』と言おうとしたんだと感じました。

 

 

 

そしてそのことを言おうとしたけれど…皆わかっているような気がして言うのをやめました。そうして、その日がきました。

 

 

 

親戚が集まり、おじいちゃんの体を拭いてあげます。孫達もおじいちゃんの体を拭きながら、おじいちゃんが着る服や、おじいちゃんの思い出を話します。その風景をみて、花は『日常だ。生活そのものなんだ。』と思います。

 

 

 

『死とは、日常のひとコマで私たちの生活とつながっているんだ…』と、おじいちゃんに声をかけるみんなを見て思いました。職場にもどって退所手続書を作成しながら花は、「今思うとあの時、お義姉さんに介護かわってもらってよかったですね。すごいです先輩!」と馬渕さんに言いました。すると「…あれは、丸岡さんが行かせたかったのよ。お嫁さんを旅行に。」と静かに答える馬渕さん。

 

 

 

「私が丸岡さんならそうしたいなって思ったの。正しいかとうかわからないけど。」と続けました。花は、お嫁さんたちだけでなく、先輩と喋れない丸岡さんが関わってきた4年で絆ができてたんだ…と感激する花なのでした。(完)

 

(完)

 

 

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【著者プロフィール】

広田奈都美(ひろた・なつみ) HP

漫画家・看護師。某地方総合病院にて勤務後、漫画家としてデビュー。著書は「僕達のアンナ」(集英社)、「お兄ちゃんがコンプレックス」、「ママの味・芝田里枝の魔法のおかわりレシピ」(秋田書店)他。

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