看護師が臨床心理士になるには?年収、仕事内容、公認心理師との違いなどを解説

臨床心理士(看護師が取りたい資格図鑑)のページのMV

 

臨床心理士は、心理系資格の中でもっとも有名な資格の1つです。うつ病や発達障害など、心理的な問題を抱える人々に寄り添い、サポートする存在として医療現場でも欠かせない存在です。

 

この記事では、臨床心理士の仕事内容や年収看護師が臨床心理士になる方法のほか、似た資格の「公認心理師」との違いについて紹介します。

 

 

臨床心理士とは

「臨床心理士」とは、臨床心理学に基づく知識や技術を用いて、心理的な問題を抱える患者さんを支援する専門家です。「日本臨床心理士資格認定協会」が実施する試験に合格すると取得できる民間資格になります。

 

1988年の認定スタートから、これまでに4万人以上の臨床心理士が誕生しており、心理系では公認心理師と並ぶ代表的な資格の1つです。

 

臨床心理士は人の心の仕組みについて専門的に学べるため、精神科領域などで患者さんの心のケアについてのスキルアップを目指している看護師さんにおすすめの資格です。

 

臨床心理士のカウンセラーがクライエント(患者)に対してカウンセリングをしているイラスト

 

臨床心理士の仕事内容は?

臨床心理士は、うつ病などの精神疾患やADHDなどの発達障害のある人はもちろん、「ストレスで寝付けない」「新しい環境に慣れずに不安」といった人の心の悩みにも寄り添い、自分らしい日常生活を送れるようサポートするのが仕事です。

 

具体的には、悩みを抱える人に対し、面談やカウンセリングを行います。そこで「心理検査」などの査定(アセスメントを行って、患者さんの心の問題の全体像や原因を探ります。

 

その査定の結果に基づき、認知行動療法などの心理療法を行って患者さんの回復を支援していきます。

 

また、臨床心理士が精神科や心療内科に所属している場合、医師の診察の補助となる外来予診や、多職種カンファレンスなども行います

 

 

臨床心理士はどこで働く?

臨床心理士が働く場所で最も多いのは、精神科や心療内科のある病院・クリニックです。最近では小児科や緩和ケアなどに所属する人もいます。

 

その他、学校で「スクールカウンセラー」として発達障害児や不登校児童の心のケアを行ったり、民間企業で「産業カウンセラー」として職場のメンタルヘルスの支援を行ったりなど、さまざまな分野で活躍しています。

 

 

臨床心理士になるには

臨床心理士は、日本臨床心理士資格認定協会の実施する試験に合格することで取得できます。試験を受けるためには、以下の3つのルートのどれかを選択して受験資格を得る必要があります

 

臨床心理士の資格取得ルート図。大学卒業後3つのルートがある。1つ目:第1種指定校(大学院)卒業後に受験、2つ目:第2種指定校(大学院)卒業後実務経験を1年積んで受験、3つ目:専門職大学院卒業後受験(試験の一部免除)

出典:日本臨床心理士資格認定協会「受験資格

 

臨床心理士の受験資格

臨床心理士試験の受験資格を得るには、必ず指定の大学院に2年間通わなければなりません

 

指定の大学院は第1種指定校、第2種指定校、専門職大学院の3種類があります。それぞれの特徴・校数は以下の通りです。

 

臨床心理士の受験資格を得られる大学院

大学院
の種類
特徴 校数
第1種
指定校
・修了後、受験資格を得られる 148校
第2種
指定校
・修了後1年以上の実務経験で受験資格を得られる
・第1種と比べて実習施設や学生に対する講師の数が少ない
8校
専門職
大学院
・修了後、受験資格を得られる
・試験の一部(論文記述試験)が免除される
5校

※2023年10月現在、参考:日本臨床心理士資格認定協会「臨床心理士資格認定事業

 

代表的なルートは第1種指定校に通うルートになります。

 

第2種指定校や専門職大学院に通うルートもありますが、修了後に実務経験が必要になったり、学校数が少なかったりするという特徴があります。

 

 

臨床心理士試験のスケジュール・内容

臨床心理士の試験(資格審査)は、毎年10月~11月に東京で行われます。試験の申し込みから合格までの具体的なスケジュールは以下の通りです。

 

臨床心理士試験のスケジュールを示した図版。7~8月に申請書類の請求や試験の申し込み、10月に一次試験(筆記)、11月に二次試験(面接)、12月下旬に合格発表

参考:日本臨床心理士資格認定協会「資格審査スケジュール

 

臨床心理士試験は一次試験の筆記を行い、マークシートで一定の成績を得ると二次試験の面接に進みます。面接の試験時間は非公開ですが、10分程度が一般的です。

 

臨床心理士試験の内容

  試験の形式 試験時間
筆記試験 マークシート(多肢選択方式):100問 2時間30分
論文記述試験(専門職大学院は免除):1001~1200文字 1時間30分
面接試験 2名の面接委員による面接

参考:日本臨床心理士資格認定協会「資格審査の実施

 

なお、臨床心理士は5年に1回、更新が必要です。日本臨床心理士資格認定協会が指定する研修会などへの参加・発表など、一定の要件を満たすことで更新できます。

 

 

臨床心理士になるのは難しい?合格率や難易度

看護師にとって臨床心理士になるのは難しいのでしょうか? 合格率と難易度について見てみましょう。

 

臨床心理士にはここ数年、毎年1000~1200人ほどが受験しており、そのうち650名前後が合格しています。試験自体の合格率は65%前後です。

 

しかし、受験資格を得るためには2年間大学院に通わなければならず、看護師として働きながら取得するのは簡単ではありません。その意味で、資格取得の難易度は高めといえるでしょう。

 

 

臨床心理士と公認心理師との違い

臨床心理士と似ている資格に「公認心理師」があります。公認心理師は、臨床心理士より30年ほど後の2017年に創設された資格です。

 

どちらも心理系資格として信頼性の高い資格ですが、臨床心理士が民間資格なのに対し、公認心理師は「国家資格」で、受験資格などに違いがあります。

 

臨床心理士と公認心理師の違い

  臨床心理士 公認心理師
位置付け 民間資格 国家資格
受験資格 心理系大学院の修了 心理系大学及び大学院の修了
資格取得まで 最低2年 6年
更新 5年ごと 更新なし
資格の役割 ・心理査定(アセスメント)
・心理面接(カウンセリング)
・地域援助
・調査、研究
・心理査定(アセスメント)
・心理面接(カウンセリング)
・関係者への面接
・教育・情報提供活動

出典:日本臨床心理士資格認定協会「臨床心理士資格認定事業」、厚生労働省「公認心理師試験の受験を検討されている皆さまへ

 

2つの資格の業務内容には明確な違いはありません。実際に、公認心理師の7割が臨床心理士の資格も保有しており、医療や教育などの現場でカウンセラーとして働いています。

 

なお、公認心理師は看護師として5年の実務経験があると受験資格を得られる特別ルートがありましたが、2022年度の試験で廃止されています。

 

 

公認心理師と臨床心理士どちらを取るべき?

公認心理師、臨床心理士どちらも似ていて、「結局どっちを取ったほうがいいの?」と迷ってしまうかもしれません。

 

現状では心理学についての知見や専門性はどちらの資格も非常に高く、社会的な役割や業務内容はほぼ同じです。

 

ただ、公認心理師が国家資格であることから、今後、有資格者の数は、臨床心理士より公認心理師の方が増えていく可能性はあるでしょう。しかし、取得までには6年かかるため、資格の取りやすさで言えば、臨床心理士の方が挑戦しやすいという側面もあります。

 

以上のような点を踏まえて、どちらの資格を取るか、自身の状況に合わせて検討してみるとよいでしょう。

 

 

臨床心理士の年収は?

臨床心理士の年収は、どのくらいでしょうか?

 

臨床心理士の公的な年収データはありませんが、7割が臨床心理士の資格も取得している公認心理師のデータを参考に見ていきましょう。

 

公認心理師の平均年収を表した図版。常勤職員は300~500万円、非常勤職員は200~300万円

 

これをみると、公認心理師の平均年収は常勤でも300万~500万円が相場です。看護師の平均年収は約500万円なので、看護師よりはやや低いことがわかります。

 

 

 

看護師と臨床心理士のダブルライセンスのメリット

看護師として働きながら、臨床心理士の資格を取得するメリットにはどのようなものがあるでしょうか。

 

臨床心理士と看護師のダブルライセンスのメリットを表した図版。1)「データに基づく対応方法」が学べる、2)キャリアの幅が広がる

 

 

1データに基づく臨床心理学のアプローチが身につく    

「臨床心理学」は、カリキュラムのうち統計学に膨大な時間が割かれているほど「データ」を重視しています

 

例えば、患者さんの症状に対して効果のあった介入方法のデータを蓄積し、次の患者さんへの対応に生かしています。

 

そのため、臨床心理士の学習の過程では、そうした、精神疾患・症状に対する「データに基づく対応方法」を学ぶことができます。

 

看護師としてのアプローチやケア実践に加えて、臨床心理士としての知識や実践方法も身につけられれば、患者さんへより質の高い支援を自信をもって提供できるようになるでしょう。

 

臨床心理士の資格を持つ精神科看護師が心の悩みを吐露する患者さんに寄り添って話を聞いていること

 

2心理職やリエゾンなど、キャリアの幅が広がる    

臨床心理士は、心のケアを必要とするさまざまな職場で働けます。そのため、臨床心理士の資格を取ることは、キャリアの幅を広げることにつながります。

 

例えば、カウンセラーなどの心理職に転職しやすくなるのはもちろん、看護師として働き続ける場合でも、精神科、緩和ケア、小児のリエゾンなど、心理的な関わりをより必要とされる分野で活躍できるでしょう。

 

また、ナースの仕事は「感情労働」とも言われ、バーンアウトの予防が課題となっています。臨床心理士は、一緒に働く同僚の心のケアなども行えるため、高く評価される可能性があります。

 

 

まとめ

看護師が臨床心理士の資格を取得すれば、心の専門家として、さまざまな心の問題に自信をもって対処することができるようになるでしょう。

 

精神科などの領域でスキルアップを目指す看護師さんにとっては要チェックな資格ですね。

 

執筆:看護roo!編集部 鈴木涼太

 

 

 

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