看護師ががん患者の立場になって気づいたこと。医療者と患者をつなぐ「ぴあナース」

これまで看護師として患者さんに接してきた自分が、突然がん患者という立場になったら?

 

上原弘美さんは、自分ががん患者になった時、看護師であるがゆえに駆られた自責の念や葛藤、疑問がきっかけとなり、がんを経験した看護師による患者支援の会「ぴあナース」を沖縄で設立。徐々に活動の規模を広げてきました。

 

ぴあナースの会を設立・上原弘美さん【1】

 

 

患者であり看護師である狭間でのつらさ…

上原さんは沖縄県の病院で、整形外科病棟の看護師として勤務していた37歳の時、乳がんと診断されました。その後、看護師として仕事と治療を続ける中で、乳がん患者同士の交流会に参加するようになります。初めは「看護師としての経験も活かせないか」という思いもありましたが、患者と看護師両方の立場であるつらさを感じるようになったと振り返ります。

 

「患者同士の会話の中で、先生にこんな言い方をされた、看護師さんが声もかけてくれなかったといった、病院への不満が出てくるんですね。それに対して“そうではなくて、病院の現状はこうなんですよ”と理解してもらおうとするものの、完全にアウェイの状態になってしまったり、正当化しようとしている自分に気づいたり。また、患者同士だけど看護師でもあるという立場が壁になり、同等に悩みやつらさを吐き出せずに、患者さんの相談を受ける立場になってしまいます」

 

一方、治療のために病院に行くと、今度は患者として医師や看護師に接する立場になります。診察室では緊張して医師へ質問もできず、患者は弱い立場だと感じました。

 

「忘れられないのは、3度目のがんを告知された時のことです。告知の衝撃で混乱しているのに、どんどん手術や治療の説明が続けられて、私の気持ちは置き去りでした。さらに待合室でうなだれていた自分のそばを、告知に立ち合った看護師が素通りしていったんですね。あの時は悲しかったし、とても寂しく孤独を感じました。一言声をかけてほしかった。でも、後になって冷静に考えたら、看護師としての自分もそうやって患者さんに接していたなと反省しました。どちらの立場も分かるだけに悩みます」

 

医療者のホンネを患者さんにも伝えたい

他にも患者になってみて感じたことがたくさんあったという上原さん。例えば看護師向けの会議などで「患者さんと共に行動する」と掲げていながら、会議に患者の声が反映されていないことも疑問を感じたことの1つでした。また、乳がんのイベントで「患者さんと同じ目線で」とうたっているにもかかわらず、患者側が医療者側の声を聞く機会はないというように、医療者と患者が交流できていない現実にも気付きました。

 

「本当は声をかけたいけれど、どうやって声をかけたらいいか分からない。忙しくて思うように一人ひとりに接することができないといった、医療者側の本音を伝えてもいいのではないか。それによって患者と医療者の距離が縮まるのではないかと思ったんです」

 

また、あくまでもスタッフ同士とはいえ、自分たち看護師が患者さんの病状や死に関する話題を気軽に話していたことを思い出し「絶対にしてはいけない」と思ったそうです。

 

悩みを分かち合える仲間がいる幸せ

 

患者さんのためのケアが本当にできていたか?

上原さんはその後、がんの手術を受け、病院に復帰。その1年後に以前からの夢だったマッサージの仕事を始めるために退職します。病院を辞めてからも患者として看護師として、もやもやした気持ちをずっと抱えていましたが、ある時がん患者交流会に参加して、がんを経験した看護師と出会います。

 

「すごく共感できるところがあったんです。今まで患者さんのためにやってきたことが、患者の立場になってみてそうでなかったという罪悪感や、忙しい中で業務をこなし安全管理が求められる現場で仕事を続ける不安。病院という職場ゆえにがん患者さんに接することも多く、自分自身の再発や死への恐怖と向き合わざるをえない厳しさなど、いろいろな話ができました。そういうことを話せる相手がいることだけで、孤独感が和らぎます。患者の会があるように、看護師であり患者であるもの同士の会もあったらいいんじゃないかと思い立ったんです」

 

初めは4名だったぴあナースの会も今や50名を越える大所帯

 

思いを共有できる仲間との出会いから

患者会などでお世話になっている医師にも背中を押され、まず、知り合いを通じて声をかけたところ、県内の30〜40代のがん経験のある看護師3名が集まりました。

 

「最初はとにかく同じ立場の人で集まって話したいという思いばかりでしたが、集まったらやりたいことがどんどん出てきたんです」

 

そして2010年10月、4名でサバイバーナースの会「ぴあナース」を設立。病気が分かってから6年近くが過ぎていました。

 

次回は「ぴあナース」の活動についてお話を伺います。

 

【次の記事】 看護師からもがん患者からも相談を受けられる存在「ぴあナース」の活動

 


【上原弘美】

沖縄県出身。2004年に左乳がんと診断され、手術。その後、右乳がん、境界型悪性卵巣腫瘍の手術も受ける。2010年「ぴあナース」設立。2011年より沖縄県地域統括相談支援センター勤務。


【ナースによる患者さん支援の会『ぴあナース』特集】

【前編】看護師ががん患者の立場になって気づいたこと。医療者と患者をつなぐ「ぴあナース」

【後編】看護師からもがん患者からも相談を受けられる存在「ぴあナース」の活動

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