看護研究ってどうやるの?看護研究の進め方|看護研究「攻略」マニュアル(1) 

「看護研究の担当になっちゃった!」という若手ナースのみなさんに向けて、看護研究の進め方や無理なくできるポイントを連載で解説していきます。

タイトルイラスト。第1回「看護研究の進め方」

第1回は「看護研究の進め方」です。まずは看護研究のプロセス全体を確認しましょう。

 

「看護研究は何から手を付けて、どう進めていけばいいの?」

「看護研究って難しそうで、できる気がしない…」

 

こんな疑問や不安に答えます!

 

監修

東京有明医療大学看護学部教授前田 樹海(まえだ・じゅかい)

「看護研究が嫌いになる看護師」を救いたい! 看護研究の目的は「将来の看護の発展に役立てること」ではありますが、看護研究に取り組めば、現場の課題を深く考える力や客観的にとらえる力がきっと身につきます。みなさんができるだけ肩の力を抜いて看護研究に取り組めるお手伝いをしていきます。著書『この1冊でできる!はじめての看護研究』(ナツメ社)。

 

看護研究は6つのステップで進めよう!

看護研究はある程度、共通の「型」が決まっています。基本の進め方は、次の6つのステップです。

看護研究6つのステップ図表。①研究テーマを探す②先行研究・文献を確認する③「研究計画書」を作成する④インタビューやアンケートなどでデータを集める⑤データを分析する⑥研究の成果を発表する

 

さっそくステップごとに詳しく見ていきましょう。

 


①研究テーマを探す

看護研究でまず初めにやらなければいけないのが、研究テーマを探すことです。

 

多くのナースにとっては「研究したいテーマなんて特にない」のが普通。いきなりの難関に頭を悩ませるかもしれませんが、研究テーマのヒントは常に身近なところに転がっています。

 

そのヒントとは、日頃の臨床現場で感じた「なんでだろう?」や「困ったな」を深堀りしてみることです。

 

たとえば、次のような例が考えられるでしょう。

 

  • リハビリに消極的な患者さんが意欲を持てない理由はなんだろう?
  • 点滴漏れのときって、どうしてこのケアをするんだろう?
  • 紙カルテから電子カルテになったら、記録時間はどのくらい短縮できるのかな?

 

研究テーマを探すときは、こうした現場での疑問を紙に書き出してみましょう。

 

さらに、次の「PICO(ピコ)」という形に当てはめてみると、研究テーマとして整理しやすくなります

 

PICOとはの解説図。P:patient/problem、どんな患者さん・問題に。I:intervention、どんな介入をしたら。C:comparison、何かと比較して。O:outcome、どうなるか

 

すべての疑問がこの形にピッタリ当てはめられるわけではありませんが、研究テーマを検討するとき、PICOは便利な考え方です。

 

グループで看護研究を担当する場合は、メンバーそれぞれの疑問を“ネタ出し”し合ったり、PICOでまとめてみたりすると良いでしょう

 

 


 

②先行研究・文献を確認する

「こんなテーマで進めてみたいな」というアイデアがまとまったら、次は先行研究・文献を確認します。このステップは、文献検索・文献検討とも言います。

 

先行研究を確認する目的は大きく次の2つです。

文献検索・文献検討の目的の図表。目的1:すでに同じようなテーマで研究された文献がないか調べる。目的2:自分たちの研究に活かせそうな先行文献・データがないか探す。

 

考えていたテーマ・疑問の答えが先行研究でもう明らかにされているのであれば、まったく同じ研究をしても意味がありません。違うテーマを探す必要があります。

 

その一方で、テーマが似ていても条件などが異なる文献が見つかることがあります。

 

「先行文献では高齢の患者さん全般について調べているけど、自分たちは認知症の患者さんに絞ってみたい」「入院5日以内の患者さんを対象にした調査データが見つかった。10日以内に広げたら、どうなるかな?」といったケースです。

 

また、「先行研究でここまでは明らかになっているから、自分たちはその先を調べよう」というケースもあり得ます。

 

こうした場合は、「先行研究を踏まえた上で、違いを調べる」といった視点で看護研究を進めることができます

 

 

また、実は、先行研究と同じ研究をしても「意味がある」場合があります。

 

先行研究の理論や仮説が本当かどうか確かめるという研究です。先行研究で「◯◯の患者さんには、こうしたケアが効果的だ」という理論が示されていた場合、「他の病院の患者さんにも当てはまるのか」「先行研究では高齢者だが、成人でも同じか」を現場で検証し、報告するというものです。

 

このタイプの研究は「実証研究」と言われます

 

>詳しくは第3回:看護研究の文献検索・文献検討の方法(2021年6月公開予定)

 

 

文献検索の方法は?

文献は、次のようなWebサービスを使って探すのがおすすめです。

 

文献検索に便利なサービス(代表的な例)

 

医中誌Web

医学中央雑誌刊行会が運営する国内の医学系論文の検索サービス。法人向けと個人向けのサービスがあり、いずれも有料。勤務先の病院が契約しているかを要確認。

 

最新看護索引Web

日本看護協会によるデータベース。国内の看護雑誌等に掲載された看護の実践・研究・教育に関する文献情報が検索できる。日看協の会員は会員ページから無料で利用可能。

 

Google Scholar(グーグル・スカラー)

Googleの検索サービスの1つで、Web上にある多分野の学術論文・資料を検索できる。誰でも無料で利用可能。

 

CiNii(サイニー)

国立情報科学研究所の学術情報データベース。学協会の刊行物や論文、全国の大学図書館などが所蔵する本の情報を検索できる。誰でも無料で利用可能。

 

「高齢者 QOL」など幅の広いキーワードだけで検索すると、膨大な量の文献がヒットしてしまうので、PICOで用いたワードなどで効果的に絞り込みましょう。

 

 

文献を読むときは、書かれた内容をうのみにせず、「批判的に文献を検討する」と言われる読み方をするのがポイントです。

 

「患者さんの条件に気になるところはないかな?」「この結論、本当にそう言えるのかな?」「他の見方はできないかな?」といったところを気にしながら読んでみましょう。

 

>詳しくは第3回:看護研究の文献検索・文献検討の方法(2021年6月公開予定)

 


③研究計画書を作成する

先行研究の文献を探して、文献の中身もチェックして、ついに研究テーマが最終決定したら「研究計画書」を作成します

 

研究計画書とは「こんな考え、こんな方法でこの研究を進めます」という説明書のようなもので、だいたい次のような項目についてまとめます。
研究計画書に記載する項目一覧。1.タイトル、2.緒言・序論、2-1.背景、2-2.意義、2-3.目的、3.研究の方法(研究の対象、データの集め方、分析方法、倫理的配慮など)、4.文献

 

2.緒言・序論」には、次のような内容を書きます。

 

1)背景

:この研究テーマをめぐる社会的な状況や医療現場での課題など。

 

2)意義

:なぜこの研究をするのか。この研究をすることで、どんな効果が期待できるか。

 

3)目的

:この研究では何を明らかにしようとしているか。

 

また、この段階で3.研究の方法」も決める必要があります。研究計画書に書くのは次のような内容です。

 

●研究の対象

:どんな条件の患者さん・看護師を対象にするのかなど。

 

●データの集め方

:インタビューやアンケートなど必要なデータをどう集めるか、期間はいつからいつまでかなど。

 

●分析方法

:集めたデータをどんな方法や視点で分析するかなど。

 

●倫理的配慮

:研究対象者の権利や個人情報の保護などに配慮するための方法など。

 

データの集め方や分析方法については、それぞれ④アンケートやインタビューでデータを集める⑤データを分析するを参考にしてみてください。

 

「研究計画書って、なんだかすごく難しそう…」と感じるかもしれませんが、研究計画書の書き方は、実は上のようにお決まりの「型」があります

 

指導担当者に相談したり、先輩たちが担当したときの計画書を見本にしたりしながら、自分の内容を当てはめていけば大丈夫です。

 

病院によっては書式が決まっていたり、テンプレートが用意されていたりすることもあります。

 

看護研究の「実行」に移る前に、この研究計画書を院内の「研究倫理審査委員会」に提出し、「研究計画の目的や方法、安全性に問題がない」と承認をもらう必要があります。提出から承認までは約3~4週間かかる場合が多いようです。

 

計画書に不備や不足がある場合は承認がおりず、修正して再提出・再審査ということもあるので注意しましょう。

 

>詳しくは第4回:看護研究の計画の立て方・研究計画書の書き方(2021年7月公開予定)

 

④インタビューやアンケートなどでデータを集める

ここからは研究の「実行」に入ります。研究計画書に記載した方法に沿って、データを収集していきましょう

 

データの収集方法は研究デザインとも言われ、大きく分けて「質的研究」「量的研究」の2つの方法があります。どちらがいいかは、研究のテーマによって変わります。また、両方の方法を使うこともあります。

質的研究と量的研究の違いのイメージイラスト

 

1.質的研究

質的研究とは、面接(インタビュー・聞き取り)などの調査方法で、対象者によって語られた言葉を分析する研究です。言葉、文字、文章を扱う研究と言えます。

 

たとえば「夜勤中の仮眠」について、満足度や業務への影響などを病棟の看護師10人にインタビューする…などが質的研究です。

 

「仮眠時間が1時間以下のときの疲労度は、年齢に比例して強くなるかもしれない」のように、仮説を得るための研究とも言えます。

 

 

2.量的研究

量的研究とは、質問紙(アンケート用紙)などを配布して回答を集める調査方法で、数値データを分析する研究です。質的研究に比べて対象者の数を多く設定できます。

 

たとえば「夜勤中の仮眠」について、「この1カ月の仮眠時間(睡眠できた時間)はどのくらいでしたか?」「仮眠後の疲労感について当てはまるものはどれですか?」などを尋ねるアンケート用紙を全病棟の看護師に配る…などが量的研究です。

 

年齢や病棟などによって回答の結果に傾向があるか、なども分析することが可能です。質的研究で立てた仮説が正しいか、データを増やして検証する研究とも言えます。

 

>詳しくは第5回:看護研究でインタビューやアンケートをするときのコツや例文(2021年8月公開予定)

 


⑤データを分析する

インタビューやアンケートでデータを集めたら、次は分析です

 

データ分析のイメージイラスト

 

まずは、データを整理します。エクセルやGoogleスプレッドシートなどを使ってまとめるのが一般的です。アンケートで集めた回答を表に入力・集計して、分析に必要な「データの下ごしらえ」をしておきます。

 

次に、集計したデータを基に分析を行います。それぞれの分布を見たり、平均値や中央値を算出したり、「このデータを年齢別にみると、どんな傾向があるかな」と関係性を検討してみたりする作業です。

 

「この看護研究で明らかにしたいこと(研究の目的)」に対して、どのような結果が得られたのかを丁寧に見ていきましょう。

 

「こういう結果になるはず!」という思い込みがあると、データを正しく読み取れません。「◯◯という仮説を立てたけれど、今回、調べてみたら必ずしもそうとは限らないことがわかった」という結果も、立派な看護研究の成果です。

 

>詳しくは第6回:データを分析する方法(2021年9月公開予定)

 

 

⑥研究の成果を発表する

看護研究の仕上げは発表です。研究で得られた結果をパワーポイント(スライド)や論文にまとめて発表します。

 

若手ナースのみなさんの場合は、「院内の看護研究発表会で、パワーポイントを使って発表する」という形が多いでしょう。

 

看護研究発表会のイメージイラスト

 

職場によっては、学会でのポスター発表(1枚の大きなポスターに研究内容をまとめて会場に掲示する発表)や論文作成などを勧められる機会もあるかもしれません。

 

パワーポイントで発表する場合でも論文を書く場合でも、研究成果をまとめるときは、次のような項目を押さえましょう

 

  • タイトル
  • 緒言・序論・はじめに(研究の背景、意義、目的)
  • 研究方法(研究の対象、データの収集方法・分析方法、倫理的配慮)
  • 結果(得られたデータ)
  • 考察(得られたデータから何が考えられるか、どう解釈するか)
  • 結論(この研究の目的に対するまとめ、わかったこと)
  • 引用文献

 

パワーポイントで発表する際は、スライド1枚の文字量が多くなりすぎないように気をつけたり、グラフや図表を使ったりなど、わかりやすい工夫をするのがポイントです。

 

>詳しくは第7回:研究成果を発表する~パワポや論文のまとめ方(2021年10月公開予定)



悩める看護研究担当ナースへ

ほとんどの看護師にとって、看護研究は「院内で順番に担当が回ってきたから、仕方なくやるもの」かもしれません。

 

「何のためにやらなきゃいけないの?」「面倒くさい…」と思っている人も少なくないでしょう。そんなみなさんへ、監修の前田先生からメッセージです。

 

「看護研究なんてやりたくないな」と思っているみなさん、大丈夫。それが普通です。

 

ですが、みなさんの看護研究の中にも必ず「より良い看護のために役立つ発見」があります。「私たちが取り組むような看護研究の発見に意味なんてあるの?」と思うかもしれませんが、今の看護も小さな発見の積み重ねでできているのです。

 

看護研究のプロセスを経験することで、みなさんには臨床現場で直面する問題を論理的・客観的に分析する力、解決への道筋をつける力が身につきます。そのチカラは、次の研究をする・後輩の研究指導をするときにも、とても役に立つはずです。

 

せっかくやるなら、ぜひ楽しんで、たくさんの人に成果を共有してください! できるだけ肩の力を抜いて、まずは1つ1つのステップを進めていきましょう!

 

この連載ではこれから、看護研究担当者のみなさんに向けて「ここを押さえておけば何とかなる」「シンプルに進められる」という看護研究のポイントをお伝えしていきます。

 

次の第2回では「研究テーマの決め方」を詳しく解説します

 

 

看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko

 

 

(引用・参考文献)

1)前田樹海. この1冊でできる!はじめての看護研究. ナツメ社, 2015, p159.

2)大口祐矢. 看護の現場ですぐに役立つ看護研究のポイント. 秀和システム, 2017, p121.

3)柴山大賀. 看護研究のイロハを学ぼう. 循環器ナーシング, 2016年12月号, 48-54.

4)井上知美ら. 看護研究における臨床看護師が抱える困難. UH CNAS, RINCPC Bulletin, Vol21, 2014, 23-35.

 

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