海の救護所で働く「海ナース」に会いに行ってみた。

夏といえば、海！

 

照りつける太陽！輝く波しぶき！潮の香り！

 

自然とテンションが上がる、まさに夏のパワースポット！

 

そんな海の救護所で、自然を満喫しながら働く「海ナース」がいるのを知ってますか？

 

「どんな仕事なんだろう？」
「水着で仕事するのかな？？」
「開放感あるし、なんか出会いがありそう」

 

と、いろいろ妄想が止まらなくなったので、海の救護所で働くナースに会いに行ってきました！

 

 

 
かんごるーとそのお友だちも一緒に、海へGO！

 

ということで、やって来ました、片瀬江の島東浜海水浴場！

 

ピーカンとまではいかないけど、まずまずのお天気

 

思わずはしゃぐ、かんごるーたち

 

あ、海の家の救護所を発見！
 

「みんなが裸足で安心して砂浜を歩けるように」との思いで、釘を使わずに組み立てられた海の家

 

中から出てきたのは、笑顔がとても素敵なナースの佐藤美智代さん。

 

27歳のときに知り合いに誘われてから、夏の間、来られる日はずっとここで働いているとか。

 

ふだんは都内のクリニックで働かれているそうです。

 

こんにちは。看護師の佐藤です。

毎年、7月と8月はダブルワークで、無休状態です。

まわりから、「本当に海が好きなんだね」ってよく言われます（笑）。

 

片瀬江の島東浜海水浴場はファミリー向けのとても素敵なビーチなんですよ。

 

いろいろ聞かせてください！

 

木のぬくもりが感じられる救護所の中。看護師はTシャツなどのラフなスタイル（水着じゃなかった…）

 

 

エイにトンビに、海ならではのハプニング

早速ですが、救護所でどんなお仕事をしてるんですか？

 

浜に遊びに来て、具合が悪くなったり、けがをしたりした人の応急処置がメインです。

症状によっては、近隣の病院を案内したり、救急要請をしたりします。その判断が悩みどころですね。

 

多いのは切り傷や擦り傷で、エイの棘を踏んづけてケガをしたとか。

 

えっ！？エイの棘を踏んづけた…？

 

エイは砂の中に潜んでいて、気づかず踏んでしまうので、防ぎようがないんです。

棘を抜いて毒を絞り出し、患部を45℃くらいのお湯に漬けるなどの適切な処置をした後は、すぐ病院に行くようおすすめしています。

ものすごく痛むんですよね。

 

あとは、かりんとうや梅干しを食べててトンビに突撃されたなんてこともあります。

トンビが食べ物をかっさらおうとした時に、くちばしが指などに当たってけがをすることがあるんですよ。

 

擦過傷程度ですが、びっくりされてここへ来られます。

 

けがやハプニングが怖い思い出になって、海離れが進んでしまうと悲しいから、安心してもらえる対応を心がけています。

 

トンビは食いしん坊なんですね。

海で何か食べる時は、気をつけなきゃ！
 

海だからこそ感じられる自然がいっぱい

 

波に巻かれて肩を脱臼される人も、結構いますね。

 

夏の終りになると、クラゲに刺されたお客さんが列を作ることもあります。

 

あとは、まれですが、脳梗塞、自然気胸、てんかん発作、低血糖発作などがありました。

長くここで働いていますが、わたしが心臓マッサージを経験したのは1度きりです。

 

ただ、数は少なくてもゼロではないので、いつ、何が起こるかわからない、そういう心構えで働いています。

 

海を見ながら遊べる「ちびっこBEACH SAVERパーク」では、子どもたちの有り余ったエネルギーが炸裂！

 

 

どんなナースが働いているの？無償ボランティア？

ライフセーバーと楽しそうに話す佐藤さん（右）

 

何人くらいのナースが働いてるんですか？

 

今年は、看護師は6人です。医師6人と合わせて12人の医療者が働いています。

海水浴場が営業している間は、毎日、朝9時から夕方5時まで、必ず医療者1人はいるようにシフトを組んでいます。

 

年齢は20代から60代まで、いろいろですね。

人の紹介を通して、来てくださった方ばかりです。

 

 
AEDや救急箱の置き場所が書いてある「引き継ぎノート」は、一人勤務の強い味方！

 

 
やっぱり、サーファーとか、めちゃくちゃ海が好きな人ばかり…とか？

 

サーファーはいませんが、「海が好き」っていうのは確かに共通項ですね。

 

ふだんは救急で働いている人が多いんですか？

 

それが、そうでもないんですよ。

 

1人だけ救命で働いていますが、わたしを含めてクリニックが2人、老健施設が2人、病棟勤務が1人です。

 

救急に特化した領域ではない人がほとんどで、救急関連の認定や専門の資格を持っているわけでもありません。

 

だから不安もありますが、なんとかやっています。ここでの勤務が経験にもなりますし。
 

ちなみに、無償ボランティア…？？

いえいえ、違いますよ。

ちゃんと海水浴場組合から日当という形でお給料をいただいています。

 

海水浴場によって、契約形態は違うようですね。

自治体と直接契約したり、派遣会社を通したりするところもあるって聞いています。

 

 

ライフセーバーとのチームワークが求められる仕事

海の救護所での仕事は、ライフセーバーとの連携が大切

 

ライフセーバーさんとの距離感が近い仕事ですね。
 

ここでの看護師の仕事は、ライフセーバーのみなさんが監視業務に専念できるよう、ライフセーバーを裏で支えるお仕事なんですよ。

 

ちなみに、元々ライフセーバーで、看護師になったメンバーが2人います。いま、卒後2年目と卒後4年目。

ライフセーバーと看護師の両方のシフトに入れるので、とっても重宝がられています。

 

彼女たちも、ここでの仕事がいい気分転換になっているみたい。

看護師の仕事は屋内で過ごしてばかりですからね。

ここの雰囲気が好きと言ってくれています。

 

確かに、開放感のある場所だし、みなさん明るくて楽しそう！

 

命にかかわる活動なので、ひと夏の無事故達成という一つの目標に向かって、学生さんも社会人も、夏の暑さに負けない熱量があります。

ライフセーバーさん同士で結婚する人も多いんですよ。

 

なるほど―。同じ目標に向かって活動しているから、一体感が生まれるんですね！

 

 
監視台から海の安全を見守るライフセーバー

 

 

海の救護所で働くやりがいは？

救護所の仕事でのやりがいって、どんなところですか？

 

遊泳時間の終了をお知らせする17時のチャイムを聞いて、「きょうも大きな事故なく、お客さんに安全に海を楽しんでもらえたかな」と思う瞬間に、やりがいを感じますね。

 

あと、パトロールを終えたライフセーバーのみなさんが、良い顔で詰所へ帰ってくる瞬間にも。

 

この仕事をやってい嬉しいのは、「去年はお世話になりました」と、応急処置をした人があいさつに来てくれることがあるんですよ。

そういう時は、「あぁ、やっててよかったなぁ」ってしみじみ思います。

 

あと、ライフセーバーに交じって救護訓練を受けたり、一緒に勤務に入った医師にいろいろ教えてもらったり、勉強になることもたくさんありますよ。

 

救護所にあるのは、AED、バックボード、ネックカラー、SPO2測定器、手動吸引器、血圧計、ペンライトなど、最低限のもの

 

わたしの夏は、ここで仕事をして、帰りに潮風を感じながら乾杯して帰宅するのが定番です。

 

そして、9月に入ると、「あぁ、今年も終わったぁ」と、夏が終わる寂しさを味わいます。

 

いろいろな人に支えられて、なんとかこれまでやってきましたが、これからも、提携できる医療機関を探したり、後に続いてくれるスタッフを見つけたり、できることを精いっぱいやっていきたいと思っています！

 

とってもやりがいのある仕事だということが、よくわかりました。

ありがとうございました！

 

「海を見ながらできる仕事っていいな」

 

看護roo!編集部 坂本朝子（@st_kangoroo）

 

 

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（参考）

江の島海水浴場片瀬東浜