産業看護師の仕事【後編】 | 病院外の看護現場探訪【4】

仙台の電機メーカーに勤務する看護師の西島瑞江さん(仮名)。

 

前編では社員の健康に関わる業務についてお話しいただきましたが、後編では産業看護師になって苦労した点や、企業全体に関わるお仕事についてお聞きします。

 

(前編はこちらから)

 

「医務室」ではなく、「産業保健センター事務室」が西島さんの職場です

 

看護師である前に一社員

病院勤務の場合、世間一般のビジネスマナーはさほど意識されませんが、会社勤めともなればそうはいきません。西島さんも、企業に就職した直後は苦労されたそうです。

 

「病院勤めをしていたとき、小児外科病棟で子どもが相手だったので、ほぼ敬語を使わなかったんですよ。レベルの低い話で恐縮なんですけど、敬語をちゃんと使わなきゃいけないというのが、まず最初のハードルでしたね。ですますが崩れちゃったときに、相手にぎょっとされて『しまった!』と思ったり(笑)」

 

敬語や電話対応など、自信を持てない部分は、先輩スタッフを真似することで覚えていったそうです。そのほかにも、メールの出し方や企画書の書き方については、社内の研修でも継続的に学んでいきました。

 

「入社直後に新人用オリエンテーションを受け、その後は、勤続年数に応じた研修にも出席していました。ほかには、ロジカルシンキングの勉強だとか、社内のルールやモラル向上のイーラーニングだとか。年に数回ぐらいあります」

 

必要に応じて社外の研修にも参加していたそうです。

 

「参加するのはやっぱり目の前の業務に即したものですね。ビジネスマナーだったり、産業保健、メンタルヘルスのことだったり。中央労働災害防止協会が主催している安全衛生などの研修だとか。必要な知識に集中するようになります」

 

看護師といっても、勉強する内容は病院勤務とはかなり異なるようです。また、職場での看護師としての立場も、企業ならでは。

 

「入社のとき、当時の上司から『看護師さんである前に一社員になりますからね』と言われたのが衝撃的でした。看護師で相手が患者さんである以上、その関係を持てれば十分だと思ってたんですけどね。『それ以前に一社員としての自覚と責任をもってください』と言われて。ああ、そういう考えはなかったなと思いました(笑)」

 

「組織の健康管理」も仕事のうち

西島さんは、就労する上で何らかの健康問題を持つ社員に対してのフォローが主な業務ですが、他方で会社全体への取り組みも行っています。

 

「個人の健康について対策を練る一方で、『組織全体が私たちのカスタマー(顧客)』であるという視点もあり、『組織の健康』も考えなければなりません」

 

看護師の立場から会社全体を支援するため、西島さんはさまざまな施策を行ったり、会議に参加したりしています。

 

「例えば、事業所全体の管理職の方々へのメンタルヘルス研修がそのひとつですね。ほかには、安全衛生委員会への参加もそうです。月1で産業医と一緒に参加するんですが、その際に委員会から依頼されて健康講話をするんです。

 

テーマは季節もののインフルエンザや花粉症、熱中症などのほか、現場で実際に発生したラテックスゴムアレルギーへの対策なんかもやりますね。安全衛生委員会のトップは事業所の長なので、その方とお会いしてご意見を伺ったり、人事担当と連携したり、特殊健康診断について安全衛生担当と相談したりすることもあります」

 

いろいろな部分で他部署と接するため、人間関係はかなり幅広くなるといいます。

 

「震災後、業務の縮小や事務室の引越しを余儀なくされて建屋を移りましたが、その分、社員みんなの顔が見えるようになりました。お互いに声をかけやすくなったと思います」

 

防災用のヘルメットをかぶってガッツポーズ! 笑顔で社員を迎えます

 

「ありがとう」に救われる

これまで産業看護師として働いてきた中では、うまくいったケースよりも、うまくいかなかったケースのほうが印象に残っているそうです。

 

「1回休職をされて戻ってきた社員がいたんです。私より10歳ぐらい下だったかな。その方が順調に回復してきていると思っていたら、『実はあんまり会社に来ていない』と人事から相談があって。ご本人とはそれなりの信頼関係をつくれていたと思っていたので、うまくいっているような嘘をつかれたのがすごいショックでした。

 

その後、面談をして、ちゃんと主治医のところへ行って相談するなり、休養が必要ならもう1回休むなり、何とかしないとね、と話し合いました。そしたら面談が終わったときに、その人が『ごめんなさい』と言って。

 

不覚にも思わず泣いてしまいました。『なんでそんな嘘をついたの』ってお母さんみたいに泣いて。看護師としてはよくなかったと思います。でも、自分が力になれなかったことがそれぐらい悔しかったし、悲しかった」

 

どうしても力が及ばないケースがあるからこそ、「次の機会には何とか仕事を続けられるよう支援していきたい」と思うそうです。

 

「100%私が何とかしてあげるというのは無理なので、ご本人が何とかしないといけない状態のとき、それを支援してあげたいです。そうした気持ちが伝わるというのが大事だと思います。

 

さっきの例とは逆に、『大丈夫?』とか『元気?』とか、声をかけるだけでも、『いつもありがとう』って言われることもあって。ああ、すべて解決するわけじゃないけど、心配しているという気持ちを伝えるだけで、相手にとってプラスになっていることもあるんだな、ってこちらが『ありがとう』に救われますね」

 

産業看護の仕事は病院での看護とは大きく異なりますが、多くの職場で悩める人たちの助けになっていることでしょう。企業で働く社員にとっては、心強い存在です。

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