あなたの病棟で、守られていないルールや取り組み、ありませんか?「看護の質評価」で業務を見直してみよう

「決められた取り組みが、いつの間にか形骸化している」「気付くと誰も守っていないルールがある」…なんてこと、皆さんの職場でも、1つや2つあるのではないだろうか?
「第44回日本集中治療医学会学術集会 教育講演 集中治療室における看護の質評価」において、卯野木健氏(筑波大学附属病院)が、形骸化しがちな取り決めやルールをどのように定着化させ、「ケア」として評価し、現場で活かしていくか、自身の施設での取り組みを交えて解説した。そのポイントをレポートする。

 

ケアの評価方法はダイエットと同じ?!

申し送りを定型化することで「漏れ」を防ぎ、時間も短縮できる

行うと決めたことをやらないのは、「決めたことをやらなくてもいい」風潮を生み出す

スタッフ全員が少しずつ行うことで、一人にかかる「負担感」を軽減する

 

 

ケアの評価方法はダイエットと同じ?!

取り決めやルールなど、自分たちが行っている「ケア」をどのように評価するか、卯野木氏は会場の参加者が想像しやすいよう、ダイエットに例えてその方法を説明した。卯野木氏が提示したその方法は、以下の5段階である。

 

【ダイエットの手順とケアの評価方法】

  1. 現在の体重の確認【現状把握】
  2. 食事制限や運動などの計画の立案【対策】
  3. 計画の実行【実施】
  4. 実施した計画についての振り返り・反省【モニタリング】
  5. 体重を再度測定し、結果がどうだったかの判断【評価】

 

施設や部門での取り決めやルールの評価もこれと同じであると卯野木氏は話す。その例として、自施設の申し送りの定型化について紹介した。

 

 

申し送りを定型化することで「漏れ」を防ぎ、時間も短縮できる

疼痛管理は患者さんへの重要なケアの一つだが、自施設における疼痛管理についてのデータが少ないことを、卯野木氏はさまざまなデータを確認しているうちに気がついたという(現状把握)。

 

その理由として、各スタッフがベッドサイドで集める患者情報がバラバラであったり、抜けがあったことが考えられたため、申し送りを定形化し、ベッドサイドで集める患者情報を統一することにしたという(対策)。卯野木氏が提示した、申し送り時に報告する情報は以下の7つである。

 

【申し送り時に報告する情報】

  1. 患者の氏名
  2. 疼痛や不穏、せん妄の評価
  3. これから行われる検査
  4. 2時間以内に処方される注射薬の準備状況
  5. 内服薬を服用したか、次の勤務帯の内服薬の確認
  6. キーパーソンとなるのは誰か
  7. 転倒のリスクや自己抜去などの危険性はないか、患者の安全について

 

さらに、これらの情報を集めるためのチェックシートも作成し、各スタッフはこのチェックシートに沿って情報を集めていく。これにより、申し送りにかかる時間は短くなったと卯野木氏は言う。

 

なお、このような申し送りの定型化や取ってくる情報の内容は、卯野木氏が以前所属していた、アメリカのメイヨー・クリニックのものを元にしたのだとか。

 

 

 

行うと決めたことをやらないのは、「決めたことをやらなくてもいい」風潮を生み出す

新しくルールを定めたり、取り決めを作った時など、「『やりましょう』という掛け声だけではダメ」だと卯野木氏は話す。そして、「行うと決めたことが行われないのは、決められたことをやらなくてもいいという風潮につながる」と指摘し、「行わなくてもいいならすっぱりと(その取り決めを)やめた方がいい」と付け加えた。

 

卯野木氏の施設では、申し送り時の情報を、申し送られた方がきちんとチェックしているかどうかの確認(モニタリング)は、管理者が行っているという。「やると決めたら、それができているか、きちんと確認することが重要」と卯野木氏は言う。

 

また、集めたデータ類から問題点などが出てくると、毎月1度行われる病棟会で共有する(評価)。ちなみに、病棟会は日勤終了後に行われるが、日勤帯の人は参加しなくてもいいのだという。その代わり、病棟会の資料には後日目を通し、きちんと「読んだ」という確認印を押すよう、決められているのだそう。

 

 

スタッフ全員が少しずつ行うことで、一人にかかる「負担感」を軽減する

さらに、卯野木氏の施設でも、スタッフを小グループに分けた係活動が行われている。係活動や看護研究などでは、さまざまなデータ収集を行わなければならないが、その際のポイントは、「一人が努力をしてデータを集めるのではなく、各スタッフがちょっとずつデータを集めることで、相対的に全員の負担感を減らす」ことだと卯野木氏は話す。

 

例えば、患者さんの身体拘束のデータを集める際、ちょっとした短時間の拘束の場合だと記録されていないケースが見られた。しかし、より正確なデータを収集するため、一瞬でも拘束を行った場合は記録として残すよう、ICUのチェックシートに組み込むことで、各スタッフがより記録しやすくし、漏れがないようにしたという。そして、そのデータは、記録したスタッフ自身がまとめ用のシートに記入する。そうすることで、身体拘束についての分析を行うスタッフは、データ分析がしやすくなる。

 

もし、その際、データが取れていないことがあれば、「皆が(データを)取っていないというデータ」を集め、それを元に「どうやったらやってくれるかを皆で考える」のだと卯野木氏は説明する。
ちなみに、卯野木氏によると、集めるデータは、「自分たちの業務に反映されるものだと、各スタッフの負担感は少ない」ようで、さらに、集めたデータは、できるだけ短いスパンでまとめて皆で共有するのがポイントなのだと言う。

 

 

最後に、卯野木氏は、最初に示したような手順で評価を行うことによるメリットを3つ挙げた。

 

【看護の質評価を行うことのメリット】

  • 先輩が学習し、自然と後輩に教える仕組みができる。
  • データを収集したり、そのデータをまとめる中で、論理的な思考を身につけることができる。
  • 集めたデータを元に評価を行うことで、どのように組織的な行動変容を行っていくかを身につけることができる。

 

今回の講演のタイトルは「集中治療室における」となっているが、卯野木氏の話は、集中治療室に限らず、どの部署、どの施設においても通じるものである。もし、皆さんの職場に、誰も守っていないルールや取り決めなどがあれば、一度、卯野木氏が提示した方法で見直してみてはどうだろうか。

【看護roo!編集部】

 

 

2017年3月9日(木)~11日(土)
第44回 日本集中治療医学会学術集会

【会場】

ロイトン札幌

さっぽろ芸文館

札幌市教育文化会館

札幌プリンスホテル(国際感パミール)

【会長】

丸藤 哲(北海道大学) 
 

【学会HP】

一般社団法人 日本集中治療医学会

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